罪の在処7

「いいだろう。この体であっても貴様達を倒す事など造作もないのだからな!」
この体――手負いの傷という意味であろうか? だとしたらどれほどの強大な力を有しているのか想像もつかない。
だが、同時に今がゴルベーザを叩く絶好の機会でもあるということである。
考えていると、ゴルベーザが先程と同じく黒甲冑の腕を振り上げる。今度は台座でなくセシル達の方へ向いている。
「絶対的な力の差を思い知るがいい!」
振り上げた手を真っすぐとこちらへと下ろす。<それ>が何かの攻撃であることは明白であった。
止めなければ――そう判断したののはセシルだけでない。
<それ>が発生する直前の光景にはセシルの他にもヤンとカインがゴルベーザへの攻撃を開始しようとしていたところであった。
「が……ぐっ!」
いつどのようなタイミングで<それ>が発生したのかは分からなかった。しかし、いつの間にかひんやりとしたクリスタルルームの
空気は更に冷たくなった。それもただ寒いとかそのようなものではない。何かどす黒いオーラのようなものが体にまとわりついてくる
ような感じ。いつしか、周囲の景色――クリスタルが中央に安置されそれを中心にして光輝くこの場所を黒き霧が覆っていた。
「体が」
その場所にいた一人――ゴルベーザを除いた人物に急に重みがのしかかった。
(動かない!)
いつしかセシルは床へと、がっくりと膝をつけていた。騎士として王に仕えたもの、自分の体が戦えるのかの判断は出来ているつもりだった。
だが、このような状況は初めてであった。体中を痺れが駆けめぐり、動かす事もままならない。立ち上がる事は当然として手を動かす
事すら困難であった。
何とか、瞳だけを動かして周囲へと視線を走らせてみると、他の三人も同様の様子であった。
「ゴルベーザ……何をした……?」
幸いなのかどうかは分からないが、口だけは普通に動かす事が出来た。
眼前にただ一人平然と立っているゴルベーザへと疑問をぶつける。もっともこの様子からして今の状況が奴によっておこされている
事は疑う余地もない。そしてこれがセシル達を片付ける為のものだという事にもだ。
「呪縛の冷気――動けぬであろう?」
それだけ言うと、再び腕を振り上げる。
「動けぬ体に残された瞳で真の恐怖を味わうが良い」
言い終わらぬ内に辺りの黒き霧が一点に集約していった。

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最終更新:2009年11月19日 02:03
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