去りゆくもの 残されるもの7


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「なんで仲良くできないの? みんなお互いを高める為に集まってるんでしょ?」
その十年を人間という存在はただ一人といえる空間で過ごしてきたリディアは、温室育ちで世間の常識に疎いお嬢様の
ようであった。複雑な空間である学校への疑問はつきない。
「……不安だからよ」
そんなリディアに対し、言っていいのかどうか悩んだような表情でローザは言葉を続けた。
「いくら自分に自信がある人だって、一つの道ならば誰にも負けないと自負してる人だって多くの中に交われば、自分が井の中の蛙
であった事を知る。そこからその人はどういう答えを導き出すか? 私が思うに答えは二つ。自分の才能と相手の才能を冷静に比較し、
それを否定する事なく受け入れる。もう一つは他人を否定する事によって自分を肯定する事」
「…………」
「そのどちらが正しいのかは私には分らない。多分頻度の問題ね。前者を白、後者を黒としましょうか。白だったら自分を認めて
より一層己を高めることができる。でも完全に白に染まった人はただ自分に自信を無くし相手に迎行しているだけ、自分を失った
といえるわ。だったら後者はどうか。相手を認めないで否定すれば、新たな道が見えてくる可能性がある。たとえ遠回りだとしてもね……
でもその考えが行き過ぎると、他人を否定するだけして己を止めてしまう」
「例外があると思うがな」
カインが口を挟む、
「己の道とその場所が合わなかったもの。そいつは別の場所で上手くやるかもしれない。また、学校というものが枠内に収められた空間だとすれば、
当然その枠内に収まりはしないものもいる。ある意味道を示されずとも自らで歩きだせる。天才とでもいえる存在なのかもしれん」
そこまで言ってルゲイエを見た。
「たとえばコリオのようにな……」
「ほう~その者の名には聞き覚えがある~ああ~懐かしいですね~」
「そしてお前もコリオと同類といえるだろう」
「どういうことですかな~」
ルゲイエは答えが分かっているのに態々質問しているかのようであった。
「目の前の事態に絶望し、新たなる道を模索する為にその場所を去ったということでだ」
「ほほう、やはりあの若者もですか。まあ当然ですね。彼も決められた枠内で終わる程の人材ではないと思ってましたからね」
コリオとは地底に行く前に出会ったあの若者の事だ。彼もバロンの学校にいたことがあった。
事実を聞いたルゲイエは妙に納得し得心がいったようであった。
「ルゲイエ……せんせい。教えてください何故あなたはこのような事を……何故此処にいるのかを……」
真実を尋ねるローザの口調は所々たどたどしかった。まだ先生と呼ぶことが自分にとっても相手にとっても許されるのか?
見知った者が人の道に外れた行いとしているという事実を未だに受け入れ切る事が出来ない迷いのせいなのか。
「ああ構わんよ」
かつての教え子に対するルゲイエの言葉はそこだけ聞けば穏やかなものに聞こえた。

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