去りゆくもの 残されるもの18


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「ところで――」
シドが口を開く。何が聞きたいのかは考えなくても分かる。
「ヤンはどうした?」
ある程度セシル達と行動を共にした者なら誰もが疑問に思うであろう。
「そういえば奪還部隊として派遣されたのは五人だったはず……」
シドの一言で若者も、セシル達の違和感に気づいたようだ。
「まさか――!」
無配慮とも言える様子で事実を口にしようとする若者。最も詳しい事情を知らない彼を責める事は出来ないだろう。
爆煙に消え行くヤンを見た誰もが続く言葉を待った――つもりだった
「え…ぐっ…ぐすっ……うわぁあああーーーん!!!」
突如としてリディアが今まで殺していた感情を爆発させた。
若者の言葉は肉体的に成長したとはいえ、感情まで大人になりきれていないリディアには残酷すぎたのだろう。
「え……えええ……とっ」
予想外の反応に戸惑いどうしていいのか分からず言葉にならない声を捻り出す若者。
「やめろ!」
シドが助け舟を出す。とは言っても叱責という名のものではあるが。
「すいません……」
「謝るのは儂じゃなくてあの子だろ」
小さくなる若者を尻目にリディアの方へ向き直り頭を撫でる。
「すまんかったな穣ちゃん。儂がいらぬ事を尋ねたばかりに辛い思いをさせてしまって……」
「グスッ……」
リディアが泣きやんだのを確認して今度はセシルへと向く。
「セシルも」
「あ、ああ……」
シドの謝罪を聞いてもセシルは若干上の空であった。
何か言葉を返さねばと思った所で再びリディアが口を開いた。
「いいの……おじいちゃん。そんなに謝らなくても。誰も…誰も悪くはないんだから……こんな事になったのも
誰も悪くない、責めれない……」
「もう喋るな、今は何もしゃべらんで良い……」
有り触れた気休めでは効果はないと判断したのであろう。それだけ言って、シドはリディアの小さな体を優しく抱きしめた。
「ありがとおじいちゃん。でも……」
リディアが小さな声で礼を述べる。
「あまり強く抱きしめられちゃうと痛いよ……」
冗談交じりの言葉と共に、大人の姿をした少女の顔に笑顔が戻ってきた。
「おおっ!! すまんかったわ!! すまんのうお穣ちゃん、だから――」
シドも嬉しそうな声でリディアから離れる。
「せめて、おじちゃんと呼べ。お爺ちゃんはよしてくれ!」
強く、あくまで優しさを忘れない声でリディアに指示するシド。
「うんわかった。おじちゃん……」
「ははは……」
「えへへへ……」
小柄の少女に大柄な老技師のやり取りと、二つの対照的な笑いが辺りから重い雰囲気を取り去っていった。

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