夢を見た。
色あざやかな宝玉、高い飾り天井。物物しい武具の並ぶ、絢爛豪華な装飾が施された一室。
「魔導の力を持つ娘か…」
道化のような姿の男が真紅の口許を裂くように笑ませている。
「操りの輪で、私の思うが侭…、ひいては、世界すら手中だ」
含み笑いは嵩じて、やがて高笑いが辺りに響き渡る。
瞳孔は虚空の星を映し、鋭角的な白い顎は仰け反る。
風景が変わる。
「すべて焼き尽くしてやる」
そこは赤い光で滲んでいる。
滲んでいるのは、熱のせいだ。
陽炎に、世界は滲んでいるように見えるのだ。
この腕から生まれる炎。炎。炎。
「すべて焼き尽くしてやる!あっはっは…」
世界は赤い。
風景が変わる。
「我がガストラ帝国は魔導の力を復活させた」
重鎮といった風情の軍人が会する場で、最も豪奢な衣装で身を包んだ壮年の男が私の肩を抱き、「fire」と囁く。命の通り念じると、小さな炎が私の指先より放たれ、赤い絨毯を焦がす。
「見よ、選ばれし者のみに許される神聖な力を!」
高らかに声を上げる。
「今こそ、我がガストラ帝国が世界を支配するとき!」
男の声に、一斉に腕が振り翳される。
「万歳!」
「ガストラ皇帝万歳!」
「帝国万歳!」
夢を見た。
それはこんな夢だった。
最終更新:2007年12月11日 23:31