こうして立ち向かってきた相手の屍さえ残らない、あまりにも一方的な戦闘だった。
もはや魔導アーマーの搭乗者に相手の命を奪うという感覚は薄れ、足元のペダルと
手元のレバーやパネルを間違いなく操作するという作業でしかなくなりつつあった。
相変わらず相棒は、ファイアビームばかりを使っている。しかし今さらそんなことを指摘
したところで何も始まらない。彼は黙って二人の後について歩き続けた。
作業をこなしながら進軍を続ける。ここまで来ると建物が間近に迫ってくるほど道幅は
細くなっていた。最後尾を歩いていたウェッジが振り返ると、後ろに控えていたガード達が
武器を構えた。
先に声をあげたのは、彼らの方だった。
「よし! はさみうちだっ!!」
仲間達の敗戦を見てもまだ懲りていないのか、それとも自棄になっているのだろうか。
僅かばかり考えたが、いつも結論が出る前に戦闘は終わってしまう。相棒が言っていた通りの
ザコだ、たしかに構うほどのものではない。
そうやって人知れず自分を納得させながら、手元のパネルを操作する。レバーを引いた次の瞬間、
耳障りな機械音と共に雪の大地がオレンジ色に照らし出された。アーマーの先端から赤黒い閃光が
伸び、目の前の生物を飲み込んだ。
ファイアビームだった。
またしばらく北上を続けると、周囲の景色が変わり始めた。煙を吐き出す煙突や立ち並ぶ
家々ではなく、むき出しの岩場が目立つようになったのを見て、自分たちの目的である炭坑へ
着実に近づいているのだと知る。
最終更新:2007年12月12日 01:04