時間はかかったが、魔導アーマーの性能を発揮するにはこれぐらいが丁度いいのかも
知れない。攻撃の中止機能を追加させる事とあわせて、研究所へ提出する戦闘記録には
そう書こうなどと考えながら、戦闘は幕を閉じた。
***
炭坑の一番奥深くに、目的の物を見出した一行はその前で立ち止まると、岩の上に
祀られるようにして安置されたそれを見つめた。
「これが……氷づけの幻獣?」
その不思議な姿形に見とれながら感無量と言わんばかりにため息を吐いた相棒の横で、
ウェッジが不安を露わに呟いた。
「おい! なにか様子が変だ? ……なにか不気味な……」
言いかけて不意に聞こえた機械音に視線を向ければ、“少女”が幻獣に歩み寄ろうと
前進していた。
誰からの命令でもなく、“少女”自らの意志で動いた。この“少女”はやはり……。
(生きて……いる)
兵器などではなく、我々と同じように生身の人間なのではないか。先程の戦闘でも、
ユミールからの反撃を食らった彼女は確かに疲弊した様子を見せていた。自分たちと同じように。
――もしかすると……。
ウェッジの思考を遮るように、不気味な光が炭鉱内を照らし出す。歩み寄る少女を、
まるで氷づけの幻獣が拒んでいるようにも見える。
「な、なんだこの光は! ……うわわわわっー!!!」
なにも分からぬまま、思考もろとも光に飲み込まれていった。この世界を去る前、
ウェッジの見た真実を誰も知ることはない。
最終更新:2007年12月12日 01:16