一節 新たなる旅立ち9


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その後、いくどか道を尋ねながら、ギルバートは目指すテントの前に立った。
7,8人も入ればいっぱいだろう。賑わいを避けるように離れた所に張ってある。入口にかけられた幕は膝上ちかくに巻き上げられ、隙間から光がこぼれていた。
注意を引こうとして、ギルバートは逡巡する。
あの襲撃を逃れた者たちがいると聞き、駆けつけはしたものの──どうすれば力付けてあげられるれるのだろう?
「どちら様かね」
「ああ──その……」
垂れ幕越しに声がする。迷っている間に先をこされ、思わず漏らした声を聞きつけたか、布地を突き破らんばかりの勢いで初老の女性が顔を出した。
「ギルバート様! よくぞご無事で!」
「マトーヤ。その……苦労をかけた」
「ああ、やっぱり!」
「今のお声は!」
目を潤ませた女官長マトーヤを押し退けるようにして、次々と中から人が現れ、ギルバートを取り囲む。
飛空挺が姿を現した時点で、念のためにと王はホバー船による脱出を命じた。間に合ったのがわずか6人、うち5人が女性で、ただ1人の例外は、母親に手を引かれた5歳ぐらいの男の子だった。
「ダムシアンに戻れるんでしょうか?」
「夫は、わたしの夫はどうなりました!?」
「一体、何故こんなことに……」
「ええい、静まりや!」
それぞれ不安を訴える女たちが、マトーヤの一喝で口を閉ざす。全員の視線が一点に集まった。
「城は……落ちた。父も、母も亡くなった。
 何人か生き残った者もいるけど、長く住める状態じゃない」
血の匂いは魔物を呼び寄せる。破壊された城壁でそれを防げるか。隊商の行き来が絶えれば、焼け残った食料はまたたく間に尽きるだろう。水は。薬は。埋葬が遅れれば、夥しい数の骸から疫病が発生する。
他の集落に身を寄せても、受け入れる側に充分な蓄えがなければ遠からず問題が起きる。
砂漠の光を手に入れカイポに向かう段階になって、ようやくギルバートが残された人々の苦労と向き合う時間を持った。
セシルのせいとは思わない。どうせ彼らが来なければ、アンナの側を離れることなく、自棄に任せて首でも括っていただろう。まだギルバートにも誰かを救うことができる、それを教えてくれて感謝している。
これ以上、甘えるわけにはいかなかった。
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