目覚めたばかりだからだろうか。どうにも断片的にしか思い出せない。
狂ったように笑うカイン、ヤンの怒鳴り声、胸を焼き焦がす槍の痛み、不気味な足音、
甲冑に包まれた男、倒れ込んだローザ。
(・・そうだ、ローザが!!)
急に頭の中が鮮明になった。
思い出した。クリスタルが奪われ、さらにローザまでもさらわれてしまったのだ。
こんなところで寝ている場合じゃ・・!
「つっ!」
慌てておき上がろうとしたセシルの胸に激痛が走った。思わずうめき声がこぼれる。
それをききつけて、リディアが目を開けた。
「・・セシル?」
彼女はぽかんとして彼を見つめている。セシルは胸を抑えながら笑いかけた。
「やぁ、リディア・・君が看病してくれ・・」
セシルが言い終わらないうちに、リディアは彼の胸に抱きついていた。
よほど心配したのだろうか、彼女は泣いていた。彼女の重みがかかり、胸がキリキリと
痛んだが、それが同時に、高ぶりかけていた彼の感情を和ませてくれた。
胸の中で泣きじゃくる少女の頭を撫でながら、セシルは何度も何度も、大丈夫だよ、
ありがとう、と繰り返し語りかけた。
しばらくの間、そうして二人支え合ったまま、穏やかな時間が流れていった。
最終更新:2007年12月12日 04:19