序章3


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「兄さん!」
 マリアはレオンハルトにすがった。つぶらな瞳から涙があふれ出た。昨日まで仲のよかった兄妹、
仲間が、なぜこうも突然に引き離されなければならないのか。受け入れるにはあまりにも過酷な現実だった。
「兄さんまで死んでしまったら私…」
「フリオニール、ガイ」
 レオンハルトは言いながらマリアの腕をほどき、背を向けた。
「マリアを頼むぞ。」
 フリオニールには、レオンハルトを止めることはできなかった。
 レオンハルトとマリアの両親に育てられてきた彼にとって、レオンハルトは兄であり、マリアは妹である。
レオンハルトの気持ちは、フリオニールにもよくわかっていた。また、帝国兵をうまくおびきよせて
くい止めるという役割も、レオンハルト以外にはできないことに思われた。
「俺たちは絶対にまた会える。だから生きろ!生きるために、逃げろ!」
 フリオニールはうなずくと、ガイとともに、マリアを抱え、レオンハルトとは逆の方向に走り出した。
こうしなければ、レオンハルトは妹を救うことができないのだ。自分はレオンハルトの代わりに
マリアを連れていくことしかできない。フリオニールは唇を噛み締めた。唇が裂け、血が流れ出た。
後ろの方でレオンハルトの叫ぶ声が聴こえた。そしてそれに寄ってくる、馬のひづめが
落ち葉を巻き上げる音。黒騎士だ。
 「レオンハルト…」
 振り返る余裕もなく、フリオニールとガイは走り続けた。マリアは彼らの腕の中で力なくうなだれている。
彼女にとって、兄を失うことは最後の肉親を失うことであった。両親が目の前で凶刃に倒れるさまが、今ふたたび頭のなかを巡っていた。
(兄さんもこれから同じような目に合うのだ…)
 一日にして家族をすべて失った衝撃が、彼女の気力を根こそぎ奪ってしまった。
 どれくらい走り続けただろうか。レオンハルトが刃を合わせる音を背後に置き去ってからからは何の音も耳に入らず、
いつの間にか彼らは森を抜け出ていた。
 しかし、彼らの耳に音が戻ってきたときには、すぐ背後までひづめの音が迫っていた。
「フィンからここまでよく逃げてきた。だがもう逃げられんぞ。」

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