序章4


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 馬上から降ってきた声は、フリオニールがこれまで聞いたことのないものだった。
その声色は大きな獣のうなり声のように低く重たい響きを持って、えもいわれぬ戦慄を感じさせた。
 黒騎士に違いなかった。
 きっとレオンハルトがおびき寄せた奴だとフリオニールは思った。
(おそらくこいつは決死の覚悟でかかったレオンハルトをいとも簡単に殺し、俺たちを追ってきたのだ。)
 レオンハルトの死が、実感となってフリオニールの心に湧き上がってきた。それはそのまま、自分たちの死を連想させた。
(俺たちも死を受け入れるしかないのだろうか…。)
 ふと、左腕に抱えていたマリアがずしりと重くなったのを感じた。左に目をやると、ガイがマリアから手をはずし、
かわりに武器として家から持ち出してきた斧を握っていた。彼は、背後の黒騎士に気づかれないように、効き手に斧を持ち替えたのだ。
フリオニールはガイの考えを悟った。
 黒騎士の乗る馬の呼吸音が、じわじわと近づいてくるのがわかる。
 フリオニールは呼吸を整えると、腰にかかった剣を手に取りながら、マリアをゆっくりと降ろした。
「ほう、観念したようだな。」
 黒騎士のくぐもった声がうしろからとんできた。一人では明らかに逃げられないマリアを地面に降ろしたことで、
逃げる意志がないと判断したようだ。フリオニールたちが正面に下げた武器は、もちろん背後からは見えない。
馬を降りる音がし、人間の歩く足音が近づいてくる。
(狙い通りだ。)
 彼らのすぐ背後まで来て、黒騎士が歩みを止めた。
「どうした、怖くて身動きも取れんか…」
 黒騎士の言葉が終わる瞬間、フリオニールとガイはくるりと身をひるがえし、声の出どころめがけて一斉に武器を振り抜いた。
確かな手応えと衝撃音が二人の体を駆け抜けた。
「グオオッ!」
 二人の目に映ったのはやはり黒騎士だった。首から下だけになった甲冑の兵士がそこに立っていた。
「やった……!」
 二人が背後の声を頼りに振り向きざまに放った一撃は、見事に声の主の首をとらえ、跳ね飛ばしていたのだ。

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