考えられることはいくつかあった。
切符が高いのか、それとも何かの理由で配布されるのを待っているのか、何年かしたら行く約束でもしているのか。
いずれにせよ、彼女はそれ以上聞き返すことを止めた。
「君はもう行くといい。もし大事な人を失ったら、またこの森にくればいい。
きっと会えるだろう。だが絶対に一緒に行こうとは思うな。もう会えなくなってしまうからな」
最後まで何を言っているのか分からなかったが、彼女は男性の言葉に従いベンチから立ち上がった。
男性はだが、静かに言い放った。
「本当は君も、望んでここに来たのかも知れないな」
彼女はただ聞き返すだけだった。
「じゃあ、どうすれば森から出られますか?」
「帰りたい、そう思えば出られるよ。とりあえず線路沿いに歩くのは止めなさい。ここから離れるように進めば出られる」
彼女は男性の言うとおり歩いて行った。
振り返ると、薄暗い森の中にまるでその駅が闇を放っているかのようにたたずんでいた。
そこにはただ、太陽の光さえ遮っている漆黒の闇があった。
最終更新:2007年12月11日 21:28