「...だ、誰か・・・」
バッツのでもレナのでもない声が何処かから聞こえた。
その声に気付き再びレナはバッツの方を向き歩き始める。
「誰か助け・・・」
再び助けを求める声。
バッツは一瞬嫌な予感がよぎる。まだこの隕石の混乱に乗じてるゴブリンが居るのか、と。
「誰かいる」
「助けを求めてるわ!」
2人はすぐさま声が出てる方へ走る。
「大丈夫ですかっ!」
2人が駆け寄るとそこにはひとりの老人が倒れていた。
バッツの嫌な予感は外れたが、それでもほっとする事は出来なかった。
「ぅう・・・」
老人が目を覚ますとそこには2人の若い男女が立っていた。
「大丈夫ですか?」
「おい、大丈夫か?」
バッツはここでようやくほっとする。今日2度目だ。
老人を心配する2人の目は優しい。
「お、おお、痛たた・・・おぬしらが助けてくれたのか」
「いや、助けたなんてもんではないけどさぁ・・・」
そして老人は次の瞬間、表情が凍りつく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
バッツとレナも心配そうに見つめる。
「何処かお怪我を?」
「・・・・・・・・・・・・・・いや」
「思い出せない!」
老人の声が大きくあたりに響く。
「え?」
2人はその言葉にかなりの意表を突かれたようだ。
「思い出せないって・・・」
「まさか・・・」
「「「記憶喪失っ!!??」」」
3人の声が揃う。静かな森にその入り混じった声は大きく響き渡った。
「この隕石が落ちた衝撃で、か・・・。なんてこった」
バッツは馬鹿でかい岩を見上げながらため息混じりに言う。
「本当に何も思い出せないのですか?」
レナは老人の目を見て丁寧に話す。
「うむ・・・・」
力無い声でそれに答える老人。その表情は苦悩に満ちている。
少しの時間が経った。その間も老人は必死に自分と言うものを思い出そうと考え込んでいた。
「ガラフ!そうじゃ!わしの名前はガラフじゃ!」
老人はやっとの事で自分の名前を思い出した。
『自分の名前を思い出す』なんて非日常な事、バッツとレナは分かるはずも無く、ガラフを見つめる。
「他には?」
レナが続けざまにガラフの記憶を呼び戻そうとする。
「・・・・・・・・・・・・・いや・・・」
しかしその願いも空しく『ガラフ』と言う名詞3文字以外は何も思い出せない。
最終更新:2007年12月17日 02:23