一節 航海6


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「・・というわけさ。それで何度か、開発段階の飛空艇に乗せてもらったことがあるんだが、
これがその度に墜落してね。何度も海に放り出されて死にかけたよ」
「よく何度も乗る気になったね・・」
「そのうち逆に、墜落する方を期待するようになっていたんだ」

 これからの考えなどを話し合っていた二人だが、やがて会話は他愛も無いものに移り、そして
いつしかセシルは記憶をさかのぼるように、自分の過去を楽しそうに語っていた。
 セシルはあまり他人に自分を語らない。久しく蓋を開けられることのなかった思い出の箱から
とめどなく言葉が溢れ出し、彼を珍しく饒舌にしていた。
「君は案外と無茶をするんだね」
「はは、どうかな。僕にはローザを連れて駆け落ちする勇気はないよ」
「あぁ・・」
 ギルバートは淋しそうに目を伏せた。すぐに失言をしたことに気づき、セシルは詫びた。
「・・すまないギルバート、アンナさんのことを悪くいったつもりじゃ・・」
「い、いや! 違うよセシル、別にそんなことを気にしてるわけじゃないんだ」
 慌てて首を振りながら苦笑するギルバートに安堵しつつも、セシルはふと違和感を覚えた。
 話に夢中で気づかなかったが、彼にしては珍しく口数が少ない。普段なら、こういった親しげな
会話を交わすときには、彼らしい洒落た冗談などを交えて言葉を返してくれるものだが。
 それにか細い気弱そうな顔が、今日はいっそう弱々しく見える。
「どうかしたのか? ギルバート」
「はは・・、その、情けないんだけど、どうやら少し船酔いしたみたいだ」
「そういえば君は砂漠の人間だったからな。もしかして船は初めてなんじゃないか?」
「あぁ、その・・少しブリッジで風にでもあたってくるよ」
「大丈夫か? 誰かに薬でも・・」
「い、いいんだ。気にしないでくれ」
 そういうと、力なく笑いながら彼は甲板の方へ出て行ってしまった。
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