二節 試練9


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 大きな外壁越しにも見える神殿のなだらかな円蓋が日光を反射し、セシルの瞼を強く打つ。
正門からまっすぐと続く道は、人々を迷うことなくこの神殿まで導く。その神殿を中心に、
特徴的な造形の家屋が円を描くように整然と建ち並び、魔物を寄せ付けぬよう魔法印が施された
純白の外壁がそれらをぐるりと囲っている。

 厳粛で、かつ美しい魔法国家ミシディアの姿である。

 開けた正門から街並が見渡せる。遠めにも、静かなにぎわいに満ちた空気が見て取れた。
かつてセシルが訪れた時には感じられなかった空気が。
 いや、むしろこれがこの国の本当の姿なのだろう。だが、あの時の僕たちには、そんなことが
わかるはずもなかったのだ。目を細めながら、セシルは巨大な外壁を眺めた。高潔な英知の結晶
である聖なる結界、魔物すら寄せ付けぬそれも、人の心の闇を弾くことはできなかった。
「・・!!!」
 正門の側にいた黒魔導士がセシルの姿に気づき、声を失った様子で走っていった。当然の反応
である。先に国を蹂躙した張本人を、笑って迎える者などあろうはずもない。
 けれど、今のセシルの心は、悲しみよりももっと大きな感情で満たされていた。

 自分がここに来たのはただの偶然だ。気まぐれな海の流れが自分をここまで運んだにすぎない。
 だが、この国こそが僕が訪れなければならない地だったのだ。
 僕の中で、闇が広がった始まりの場所。

 セシルは大きく息を吸い込むと、再びミシディアの土に足を踏み入れた。
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