一節 闇と霧の邂逅15


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「……そういうことか」
「馬鹿な!
 あのドラゴンの正体が、この女性だったって?」
そんなことがあるはずない。人間が、竜に変わるなど。
それだけが、セシルに残された逃げ道だった。しかしただひとつの命綱を、沈痛な友の声が断ち切る。
「聞いたことがある。
 魔物を呼び出す力を持った者。確か……
 召喚士!」
「まさか……
 僕たちが、あのドラゴンを倒したから……」
乾ききった唇から、未練がましい言葉が滑り落ちた。
見苦しい真似をしている。この期に及んで、なお目を背けようとするセシルを、頭のどこかで誰かが笑う。
足元に横たわる女性の顔に視線を落とした。まだ若かった。セシルと十も違うかどうか。苦悶に歪んだ表情は、無念を訴えているようだ。
村を守りきれなかった、バロンの魔手を阻めなかった、それが彼女の心残りなのだろうか?
「じゃあ……おにいちゃんたちが、お母さんのドラゴンを!」
「まさか……君の母さんを……殺してしまうことになるとは」
釈明とも謝罪ともつかない、白々しい回答に、少女がその場に膝をついた。放心したように、大きく見開いた深緑の瞳でセシルを見上げる。物々しい闇色の甲冑をまとい、漆黒の仮面で顔を隠した暗黒騎士を。
「指輪のことといい、陛下はご存知だったのだろうな。
 そのつもりで俺たちを来させたんだ。
 この村の召喚士を、全滅させるため……」
「なんて事だ……」
そんな暴挙に、彼らは手を貸してしまった。あろうことか、その『手柄』で元の地位に返り咲こうなどと、愚かな期待を膨らませて。
容赦のないカインの指摘を受けて、今更のように、後悔がセシルの胸を蝕んだ。たまらず、目の前の少女から視線を外す。
だが彼の親友は、どんな残酷な事実であろうと、逃げ出す男ではなかった。
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