ピー。
「おう、バレットだ!
俺はやったぞ!新しい油田だ!ゆ・で・んー!すげえデカイやつだ!
でなあ、帰る目処がついたんで、マリンに会いに行くからな!伝えとけよ!じゃあな!!」
バレットの声はいつ聞いてもうるさい。
が、いつでも力強い声だった。
あいつが荒廃したミッドガルから旅出ったのは、あの戦いが終わってからしばらくのことだったか。
その時も、どこまでも強い声だったな。
バイクに乗りながら携帯から聞こえる声を聞いている時、クラウドはそんなことを呟いた。
もちろん、携帯は簡易留守録モードのままなので、その声にクラウドは応えない。
謎の二人組に襲われてすでに数時間ほどたっていた。時計は見ていないが、おそらく正午ごろだろう。
クラウドはヒーリンに来ていた。
車道の左右には木々が生い茂り、淡い川が静かに流れている。
確かに、ゆっくり暮らすにはこんなところもいいだろうなと、思った。
その時、また電話がかかってきた。ティファからだ。
「レノからまた電話です。とにかく急いでくれだって。
なんだか様子が変だったけど…気をつけてね」
通話が切れる頃には、クラウドは森の中心に一つだけ建てられている建物の前に停車していた。
壁に他でもない神羅カンパニーのロゴがペイントされている。わかりやすい目印だ。
神羅カンパニー。2年前まで世界のほぼ全てを掌握し、
同時に星の生命を削り、世界が荒廃する原因を作った超巨大企業。
現在はその事業を復興支援に絞り、それによって神羅を頼りにしている人間は未だに多いらしい。
ミッドガルを囲むようにして建設されている復興都市エッジは神羅の援助による部分が大半を占めているし、
そのエッジには神羅が建立した記念碑まであるほどだ。
しかし、その神羅が何故今になってこちらと接触しようとするのか解せない。
しかもクラウド達とは2年前には敵対していた関係だったというのに。
だが、なんにせよ、あの謎の襲撃者について、神羅の人間であるレノから聞き出せそうな情報は山ほどありそうだ。
クラウドは頭の中でそう呟き、後腰の皮製の鞘から剣を抜きながら、ドアを開けた。
最終更新:2007年12月13日 06:55