カダージュたちと戦ったところへ戻ると、そこにはもう誰もいなかった。
カダージュたちはもちろん、子供たちも、だれもいない。残されているのは、数十人分の小さい足跡と、折れた木や抉れた地面といった戦闘の痕跡だけだった。足跡を目で追ってみたが、途中で地面に大穴が開いており、そこから先は途絶えていた。
「………」
クラウドは無言で辺りを見回す。探していたものはすぐに見つかった。
黒塗りの大型バイク、フェンリルが、道の端で無様にひっくり返っていた。クラウドは灰色の砂で汚れたバイクへ歩み寄り、少々苦労しながら立ち上げると、破損した箇所はないかとバイクの具合を見始めた。
「…どう?」
マリンが横から心配そうに声をかけてきた。
…ヤズーとロッズの銃撃で前面のいたるところに弾痕ができ、派手に地面を転がったせいでカウルから伸びた角のような装飾は片方が折れている。ずいぶんと見てくれが悪くなっているが、ライトにはひびが入っただけで割れてはいなかった。
エンジンもホイールも無傷。走る能力に影響はない。
「大丈夫そうだ。乗ってくれ」
クラウドは答えると、先にバイクに跨り、カウルを開いて中に剣を収納する。
マリンが後ろに乗り、腰に腕を巻きつけるのを待つ間、クラウドは改めて辺りを見回してみた。
携帯電話はどこにも見当たらなかった。
クラウドはマリンに「つかまってろよ」と声をかけ、ため息をついてから、バイクのエンジンを吹かした。
最終更新:2007年12月13日 07:29