FF7AC ”Help me”7

 シドは黙り込んだ。
 実際はほんの数秒間だったが、クラウドにはその沈黙が異様に長く感じられた。
 風が氷のように冷たかった。電話をかけた時に最初に感じた緊張と緊張がまた首をもたげる。いまさら何を言うんだと拒絶されるかも知れない。そんな懸念がクラウドの頭の中を支配する。
 だがそんな懸念は、シドの強風であっけなく吹き飛ばされた。
 「変わんねえな、おめえは。ウジウジしてて、鈍臭くてよ」

 クラウドは目を見開いた。
 文面だけを見れば、その一言はひどく冷たく、乱暴だ。が、言うシドの声は、どこか嬉しそうで、笑い混じりだった。
 「ったく、クラウドさんよぉ、もっと早く言えってんだよ。あ?どんだけ待ったと思ってんだ」
 クラウドは胸に懐かしい暖かさを感じた。もう寒さなど微塵も感じない。それは思えば、2年前は当然のように感じていた暖かさだった。
 そう。当然のように。いつから忘れていたんだ?
 いつでもいいとクラウドは思った。もう思い出したのだから。
 「…ありがとう」自然に、というよりは無意識に出た言葉だった。
 シドは気にするなとばかり、フンと鼻を鳴らした。

 それからクラウドは、星痕の原因がジェノバであることと、その陰で暗躍するカダージュたちの存在、そして、カダージュたちがエッジに向かっていることを、出来るだけ速く、わかりやすく話した。
 「…なるほどな」
 「それで頼みがあるんだ…あんた2ヶ月くらい前、ハイウィンドの復元に成功したって言ってたよな」
 「おうよ!そんでもって名前は…」
 クラウドは少し笑いながら、シドの声を遮った。
 「”シエラ号”、だろ?奥さんとはうまくいってるのか?」
 少しの間。照れくさそうな「まあな」という声が返ってきた。
 我慢しきれず、クラウドは大声で笑った。怒って声を荒げるシドに、あわてて謝る。

 「わかった。それでみんなを乗せてきてくれ。みんなには俺から連絡しておく」
 「そりゃあいいぜ。じゃ、後でな」
 いろんな意味での「そりゃあいいぜ」だった。シドは電話を切ると、暗い寝室を見渡し、ふかーくため息をついた。
 「やっと目ぇ醒ましやがったか…あの馬鹿は…」

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最終更新:2007年12月13日 07:31
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