三節 不和の旋律1


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飛空挺を移動させるついでに、下見をしておこうと思い立ち、セシルたちは北東へ飛んだ。
トロイア本土から海峡を隔てた帆船のような形の島の中央に、ダークエルフが潜む洞窟が口をあけている。
だが、飛空挺が降りられるような平坦な地面は、いくら探しても見当たらなかった。
「場所はここで間違いないのか?」
「何度同じことを言わせれば気がすむのだ!
 ここであっとるか、さもなくば地図そのものが出鱈目かじゃ」
「むぅ……」
セシルやヤンが目を凝らし、着陸地点を探す一方、テラは遠見の魔法サイトロを使い、あたりの地勢を地図と照らし合わせていた。
シドは操縦に専念している。磁力の影響なのか、船体が下に引っ張られるような気がする、と話していたところからすると、やはり、この場所で間違いないのだろう。
「無理矢理降りられんのか?」
「……帰れなくなるよ」
テラの強引な提案に、セシルは首を横に振った。
荒々しい岩山の裾野にまつわりつくようにして、樹木が這い寄っている。途切れなく続く緑の絨毯を見ていると、飛空挺の船体も支えられそうな錯覚に陥るが──ひとたび枝を突き破り樹冠の下に消えたが最後、二度と飛びたてなくなることは明らかだ。
「セシル~、どうじゃ、見つかったか!?」
「駄目だ!
 いったん街に戻ろう!」
「ええぃ、しかたないのう。出直すぞ!」
シドの首が機関室に引っ込むと、エンジンが出力を上げ、船体が浮き上がった。
「まあ、あらかじめ様子を見に来てよかったというところだな。
 準備万端整えた上でこの有様では、笑い話にしかならん」
「……金庫の人より間抜けだね」
セシルも気が緩んだのか、前向きなヤンの弁に、つい皮肉を返してしまう。
空から近づけないのなら、地道に歩いていくしかない。しかし厄介なことに、ここでは羅針盤が役に立たないのだ。洞窟に近づくにつれて針が振れだし、ついにはぐるぐると回りはじめた。
目印になるような山も周囲にはなく、地上で方角を知る手段は皆無と言っていい。
「やはり、地元の人間を頼るのが一番か」
少なくとも、件の話の主人公は、目的地に着くことはできていたのだ。彼の足取りが、セシルたちをも導いてくれるよう、祈るしかなかった。
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