三節 不和の旋律3


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「そない理由やったらなぁ……」
「はいよ、お待ちどうさん!」
腕組みして考え始めたロドニーの前に、子供の身の丈ほどもある巨大な皿が置かれる。大芭蕉の葉の包みを開けると、たくさんの香草と一緒に焼かれた川魚が盛んに湯気を吹き上げた。
蒸かした芋、魚のすり身と百合根のスープ、薄く切った煮こごりと付け合せのピクルス。貝の身と混ぜて炊いた粥や、海老と茸と根菜の煮込み。
瓜に似た星型の果物にイチジクの蜜漬け、と、続けざまに料理が運ばれ、最後に果実酒の瓶と人数分のジョッキが、皿と皿の隙間にねじ込まれた。
「ま、話は後にしてとりあえず飲め。
 わしらのおごりじゃ」
「おっ、なかなか話がわかるやんけ」
シドは真っ先に酒瓶に手を伸ばし、相好を崩したロドニーがジョッキを差し出す。
「やれやれ……」
「ま、腹が減ってはまとまる話もまとまりませんからな」
苦笑しつつ、セシルたちも運ばれた料理に手をつけた。魚は身が柔らかく、香辛料のおかげで臭みもなく食べやすい。大の男が五人がかり、テラはあまり食欲がないようだが、それでも大量の料理が見る間に減っていった。
日が落ちきると次第に客が入りだし、ロドニーに挨拶がてらセシルたちに好奇の視線を投げていく。早くも出来上がったシドが彼らにも杯を勧め、小規模な宴会の輪が形成されいた。
「それで、磁力の洞窟の件だが」
器に盛られた木の実をつまみながら、ヤンが水を向けると、途端にロドニーは渋い表情を見せた。
「それなんやけどな……
 今はアカン。水が引いてしもうた」
トロイアは低地の国だ。雨季が訪れると、降り注ぐ雨で河があふれ、ごく一部の高地を除いてすっかり水に浸かってしまう。
その季節だけは、柱のように水中から突き立つ幹の合間を船で縫い、どこへでも行くことができる。
ロドニーの説明を受け、テラが尋ねる。
「ては、次の雨季は?」
「七ヶ月先や。ホンマすまんのぅ……」
木の実を口に運ぶセシルの視線の先で、シドが見知らぬ男たちと肩を組み、大声で歌っていた。聞き覚えのある旋律は、場内で巫女たちが奏でていた楽とよく似ている。歌詞はまるで異なるが。
「……ずいぶんかかるね」
申し訳なさそうなロドニーの視線を頬に受け、セシルは炒った木の実を音を立てて噛み砕いた。
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