三節 不和の旋葎7


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「失礼します」
ノックの音と共に、病室の外からかけられた声が、セシルの言葉をさえぎる。
扉が開き、医師が姿を現した。彼女の後から、薬と包帯の盆を持った看護夫が続く。
「薬を替える時間です。
 申し訳ありませんが、そろそろお引取りを」
雰囲気を察しているのかいないのか、腰を浮かせたセシルに医師は淡々と話しかけ、一方でギルバートの額の包帯を手早く解き始めた。かがみこんだ小柄な背中が、『邪魔だ』と語っている。
小卓に盆を載せた看護夫が、取り成すような笑顔をセシルに向けた。
「ギルバート、それじゃあ……」
「セシル、これを持っていってくれ……」
退出しようとしたセシルに、ギルバートが手を伸ばした。咎めるように医師が体を広げたが、ギルバートはそれをやんわりと押しのけ、手の平に乗せた奇妙な品物をセシルの前に差し出す。
「これは?」
「ヒソヒ草。
 僕の代わりさ……
聞いたことのない名前だった。そもそも、全体が緑がかっている以外、植物らしい特徴もない。
両端を切り落とした魚の骨に細い柄をつけたような形で、柄には黒い紐が絡みつき、その先に小さな角笛のようなものがぶら下がっていた。
どういう代物か、まるで見当もつかなかい。
「持っていってくれ」
ギルバートが更に腕を伸ばす。戸惑いながら、セシルはヒソヒ草とやらを受け取った。見た目から予想していたよりも重い。植物とも金属とも違う、奇妙な手触りだった。
「……ありがとう。また来る」
「待ってるよ」
まるで今の心境を表しているような、どうにもおさまりの悪い外観の土産を手に、セシルは医務室を出た。
──近いうちに、もっときちんと話がしたい。
ヒソヒ草を受け取ったとき、ギルバートは安堵したような笑みを浮かべた。彼もまた、同じ気持ちである証拠だ。
セシルはそう考えることにした。
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