三節 山間23


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 と、鞘にかけたまま動かないセシルの手を、突然テラの杖がしたたかに打ち据えた。
「セシル! 何を迷っておる!!」
「テラ……!」
「おぬしに出来ることなど一つしかないじゃろうが! ならばそれをやれッ!!」
 テラの杖が一転して弧を描き、中空に陣を描いた。その軌跡が光を発した、と思った次の瞬間、
円陣からいくつもの火球が飛び出し、迫りかけていたアンデッドたちの顔を焼き焦がした。
連中は間の抜けた仕草でしばらく火のついた自分の顔を叩いていたが、やがてその火が消えて
しまうと、またもこちらに迫ってきた。頼みの綱である魔法も、ほとんど効いてはいないようだ。
いよいよなす術がない、セシルが肩を落としかけると、再びアンデッドたちに炎が襲いかかった。
 驚いてセシルは横を見る。テラの横顔には微塵ほどの迷いも無く、既に次なる魔法の詠唱を
行っていた。落ち窪んだ瞳の中に映る炎が、セシルの躊躇を包みこんだ。
 その眼差しが逸れたときには、彼の剣は鞘から解き放たれていた。
「くらえぇ!!」
 デスブリンガーの闇が踊った。獣が喰らいつくような凄まじい暗黒波が、アンデッドの死肉を
駆け抜ける。たちまち死者たちは後方に吹き飛ばされ、力無く辺りに転がった。テラの炎で焦げ
固まっていた部分が弾け飛び、一匹の首が落ちた。
「おぉ、おぉ……!」
 後ろに控えるスカルミリョーネが仰々しく感嘆の声を上げる。そしてひとしきり感慨に耽ると、
彼はパチンと指を打ち鳴らした。それを合図に、またもアンデッドたちは起き上がった。
首を落とされた一匹も自分の頭を拾い上げると、平然と歩きだす。
「無駄、無駄。そんなものでは私の息子たちは殺せんよ」
 ことさら愉快そうに笑う魔道士に、セシルは剣を突き構えて静かに言い放った。
「それはこちらも同じことだ、スカルミリョーネ」


 ────不意にスカルミリョーネの笑みが消えた。
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