「止めてよ。ヤン」
「セシル殿……」
それが拒絶の言葉に聞こえたのか、ヤンは落胆の表情をする」
「いやっ! そういう事じゃなくて……今更そんなに改まって言われても困るって言いたかっただけだよ……」
慌てて、セシルも訂正する。
「つまりは!」
「うん。これからも宜しく!」
そう言って手を差し伸べる。
「はい!」
ヤンは喜んでセシルの手をがっしりと握る。
「流石はセシル殿! 嬉しいですぞ!」
「だからそんなに固くならないで。君が生きていただけでも僕は嬉しいよ……それにそんなに特別視
なしないでくれ……」
「分かりました」
お手上げだといわんばかりにヤンは顔を赤める。
「それとヤン……」
「はい」
「ギルバートとリディアはどうなったか知らないか?」
これだけはセシルは今でも責任を感じていた事であった。
「リディア殿なら……」
「知ってるのか!」
「海に沈んだ後、意識が消えかける前に確かに見ました。あの船を襲った怪物に飲み込まれていった……」
「な……!」
そのヤンの言葉はセシルを凍り付かせるには充分すぎる位衝撃的なものであった。
「可哀相な事をした……」
「ではギルバートは!?」
ヤンは首を振る。
「分かった」
せめてギルバートだけは――祈るような気持ちであった。
最終更新:2007年12月14日 04:46