負傷した兵士の応急手当を手早く終え、バナンは立ち上がった。
「こっちはどうする?」
一気に慌しさを増した状況においても、
エドガーの態度はあくまで平静を保っている。
「ロックが足止めをかけているうちに、
レテ川を抜けてナルシェに逃げるのがいいでしょう。
炭鉱で見つかった幻獣の事も気にかかります」
「うむ。では裏口にイカダを用意させよう。
少々危険だが、他に手もあるまい」
バナンはすぐ後ろの兵士に指示を出すと、
自身も小走りで裏口へと駆け出した。
未だ状況がよく飲み込めず、呆然と立ち尽くしているティナの背中を、
エドガーは押し出すように軽く叩いた。
「ここは危険だ。一緒にナルシェへ向かおう。
自分の力を知るいいチャンスになるかもしれんぞ」
ティナは頷き、手渡された長剣を決意と共にしっかりと握り締める。
と同時に、バナンの号令が室内に響き渡った。
「皆グズグズするな!すぐナルシェへ向かうぞ!」
最終更新:2008年03月22日 09:01