三節 光を求めて25


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気がつけば、テラは両手に握った杖でギルバートに殴りかかっていた。
 殴る。
 殴る。
 殴る。
 アンナを奪ったことへの怒りをわめき散らしながら、テラは殴った。堰を切った流れは止まらない。
 男の弁解など聞けない。弁解しようとする男の態度も気に入らない。この五体満足なままでいる男に、アンナの痛みを――――

 ――――やめてっ!!

 背後から、声がした。聞き間違えるはずのない、愛娘の声。

 テラもギルバートもアンナを振り返り、セシルとリディアもアンナへと駆け寄った。
 アンナの瞳に、自分を覗き込むセシルとリディアの姿が映った。その表情は悲痛。
 他人から見て、自分がどれだけ血を流しているか知らないけれど、目の前で自分のせいでそんな顔をされるのは堪えるものだ。だからせめてふたりを安堵させようとアンナは微笑む。
 その微笑みをみて、リディアは顔を哀しみにゆがめながらアンナの手を握る。アンナを、少しの時間でもこの世につなぎ止めるように。
 その微笑みが、自分たちのためのものだと気づいたから。
 少女の小さな手、アンナはその感触に安らいだ。ふたりを安心させるはずが逆に安心させられてしまった。
 アンナは少女の心へ負担をかけてしまう罪悪感を胸にしまい、「ありがとう」と涙をこらえる少女に甘えることにした。
 まだ声を出すことができるのだと、大きく息をついた。このまま死ぬわけにはいかなかった。父に、伝えなければならないことがあるのだ。
 駆け寄って、生きていてくれたかと安堵する父へと言葉を告げる。
 ギルバートはこの国、ダムシアンの王子であり、吟遊詩人として身分を隠しながら旅をしていたこと。
 カイポを訪れた彼と出会い、恋におちた。そして、心からギルバートを愛していることを。
「……ごめんね、お父さん、勝手に飛び出したりして。でも、カイポに戻ろうとしてたの。……お父さんのことが大好きだからこそ、ギルバートのことを許してほしかったから。でもそのとき……」
 苦しげに言葉を紡ぐアンナを、ギルバートが引き継いで言う。
「ゴルベーザと名のる者が率いる、バロンの赤い翼が……」
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