イクブリサマ
とある農家の家。
その家は一匹の家畜を飼っていた。
コリブリという名である。
雌の生物だ。
そのコリブリ。家の息子に大層可愛がられており、息子は四六時中コリブリと一緒にいたそうな。
ところで、この息子。
大変な事に、コリブリに恋慕を抱いてしまったのだ。
息子はもう既に、現代で言えば二十歳を越えた年。
嫁を貰ってもおかしくないのである。
だが、この息子。
自分はコリブリを嫁にすると言って聞かぬ。
父母と大層揉めに揉め、とうとう父方の堪忍袋の尾が切れたのだ。
木にコリブリを吊るし、殺してしまったのである
息子は泣いた。
吊るされたコリブリの死骸にしがみつき、声を荒げて、泣き続けた。
ただ、彼のこの行為は父方の神経を逆撫でする結果になってしまった。
父方は更に怒り狂い、斧で以ってコリブリの首を切り飛ばしたのだ!
だが、息子も負けてはいない。
丁度、宙を舞っている所のコリブリの首に飛び乗って、そのまま空へと昇っていったのだ。
コリブリと息子は昇天したのである。
そして、イクブリサマとなったそうな。
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