5スレ>>515


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クチバシティ。
 カントーでは一番の港を持ち、人と物と情報の行き交う交易の町。
 ヨシタカにお使いを頼まれたアキラは、ホウの背に乗ってこの町の中央部に降り立った。

「っと、ついたか。ホウ、お疲れ」
「…ん。寝る」

 到着してすぐにボールに戻るホウ。
 アキラはやれやれとため息をつくと、代わりにデルとメリィを呼び出した。



『We are family』



「なんだかここに来るのも久しぶりだね」
「そうですね、前はカントーに来たばかりなのに即座にジムに挑んでハナダに向かいましたし」
「まぁ、そう言うなって。お使いが終わったら少し3人で見て回ろうか」
「それって、デートのお誘いかな?」
「…ま、そういうことで」
「あ、二人とも、あの建物みたいですよ」

 軽く雑談しながら歩いていくと、大好きクラブはすぐに見つかった。
 ジムの向かいにあるその家は、ジムほどとは言わないがそこそこ大きな建物である。
 三人が正面玄関から中に入ると、受付嬢らしきギャロップの少女が挨拶してきた。

「萌えもん大好きクラブへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか」
「あ、すみません。こちらの会長さんに手紙を預かっているのですけど」
「はい、ではこちらの部屋で少々お待ちください」
「はい…え?」
「さ、どうぞこちらへ」

 手紙を届けてそれで終わりと思っていたアキラは、困惑しつつも部屋に入っていく。

「では、会長をお呼びいたしますのでお掛けになって少々お待ちください」
「はぁ、どうも」

 そう言い残して彼女は部屋を出て行った。
 三人はきょろきょろと部屋を見回した後、言われた通りにソファに腰掛けた。

「…わ、このソファすごいふかふかだよ?」 
「中々良いソファですね…流石と言うべきでしょうか」
「二人とも、人の家の家具を評価するなって」

 そんなこんなで暫くすると、奥の扉が開いて恰幅の良い壮年の男性が現れた。
 後ろに先ほどのギャロップもついてきている。

「やぁ、君かね? わしに手紙を持ってきたというのは」
「は、はい」
「そうかそうか。わしが萌えもん大好きクラブの会長じゃ。早速だが、手紙を見せてもらえるかね?」
「はい、こちらです」

 思わず両手で手紙を差し出すアキラ。
 会長は受け取った手紙の封を開くと、数度頷いて手紙を机に置いた。

「ふむ、ヨシタカ君からの要請か…良いじゃろう、保護した萌えもんたちは家で預かろう」
「あ、ありがとうございます!…ところで、兄をご存知なのですか?」
「兄、ということは君がアキラ君かね?」
「はい、そうです」
「そうか…萌えもん思いの良い弟だと彼は自慢しとったよ」
「そんな、自分はまだまだ…」
「まぁ、何はともあれ用件は承った。という訳で、じゃ」

 会長はソファに深く腰掛け、アキラを見る。

「折角じゃ。わしの自慢話でも、聞いていかんかね?」
「自慢話…ですか?」
「そうじゃ。ここは萌えもん大好きクラブ…自分の嫁、婿の自慢をする場所じゃ。どうかね?」

 目を輝かせて問いかける会長。
 というか、問いかけているが断らせる気は無いというオーラが滲み出ている。
 アキラは一瞬気圧され、諦めて話を聞くことにした。

「わ、わかりました。聞かせていただきます…」
「よしよし。では改めて…わしが萌えもん大好きクラブの会長じゃ!
 共に暮らす嫁は100人を超えとる! 萌えもんに関してはホントうるさいですぞ!」
「「「ひ、ひゃくにん!?!?」」」

 いきなりのトンデモ発言にびっくりの三人。
 それもそうだろう。アキラ自身嫁…というかパートナーは二人居るが、それでも随分と考え込んだのだ。
 そこで軽く100人と言われてしまうと唖然ともする。
 後ろで立っているギャロップはその様子を見て苦笑していた。

「では早速始めるぞ! そうじゃな…ではこのギャロップ、セフィーロの自慢でも聞かせてやるか!」
「わ、私のですか?」
「なんじゃ、何かまずいか?」
「い、いえ…ただ、私の居るところで私のお話は、ちょっと恥ずかしいです…」
「そうか…なら、そうじゃな。お前はアキラ君の嫁たちと別の場所で話をすると良い」
「よ、嫁…///」
「い、意外と甘美な響きです…///」
「…って、俺彼女たちが嫁だなんて一言も言ってない気がするんですけど」
「なに、君たちの雰囲気で何となくわかるよ。それも、想いが通じ合ったばかりのような…そうじゃろう?」

 と、悪戯っぽくウィンクして言う会長。
 短時間のやり取りや雰囲気の観察だけでここまで見抜いてしまう会長に、アキラは完全に恐れ入っていた。

「それじゃ、私たちは外へ行きましょう。ついてきてください」
「あ、はーい」
「ご主人様、また後ほど」

 デルとメリィはセフィーロに連れられて部屋を出て行く。
 部屋には、会長とアキラの二人が残された。

「では…改めて始めるとするぞ?」
「………(ゴクリ」
「あのな…わしのお気に入りのセフィがな…
 ……でな………が……………可愛くてな……たまらん……くぅ……」
「聞いてる方が恥ずかしい話ばっかりのような…」
「……さらに……もう…すごすぎ………で……」
「聞いちゃ居ないし…でも、自慢したい気持ちもわからなくは…」
「…そう…思うか………どうして……すき……………はー!」


……………
…………
………


 場所は変わって、大好きクラブの裏庭。
 海に面した庭園は、爽やかな日差しと心地よい海風のお陰で過ごしやすい場所であった。
 セフィーロはその庭園の一角に、デルとメリィを案内した。

「さ、楽にしてください」
「はい、ありがとうございます」
「…うわぁ、ステキな場所~♪」

 早速メリィは芝生の上に飛び込んだ。
 その様子に苦笑しながら、デルはゆっくりと腰を下ろす。
 セフィーロはというと、途中で持ってきたらしいバスケットから魔法瓶を出してお茶を淹れていた。

「お二人とも、どうぞ」
「あ、いただきまーす」
「ありがとうございます…おいしい」
「それは良かった。ローリエ姉様の葉っぱは、癖が強いので好みが分かれるんです」
「ローリエさん?」
「えっと、私よりも会長とのお付き合いが長いベイリーフ族の方です。
 私達は、先に居る方々を姉と呼んで慕い、新しく来た娘は妹として世話をしているんです」

 その中では私はどちらかというと古参です、とセフィーロは言う。
 デルはお茶を味わいながら、隣に腰掛けてきた彼女に話を振った。

「ところで、セフィーロ…さん?」
「呼びづらければ、セフィでいいですよ」
「じゃ、セフィさん。さっき、会長さんが100人の嫁って言ってましたけど…本当なんですか?」
「はい、本当ですよ。正確には今のところ118人だった筈です」
「ひゃくじゅ…!?」

 さらっと言うセフィにデルは驚いた。

「そ、そんなにいたら大変では…修羅場とか、起きないんですか?」
「殆ど無いですね…まぁ、全く起きないわけではないですけど」
「……」

 デルは絶句していた。
 一人でそれだけの数の女性を囲っておきながら、トラブルらしいトラブルがあまり無いという。
 自分達でさえ、片方が持ち上げられたら拗ねたり妬いたりしてしまうのに。

「でも、私達がこうして仲良くしていられるのは…やっぱり、会長の努力があってこそなんですよ」

 セフィはカップの水面を見つめながら話し始める。

「会長はお忙しい方なんですけど、それでも私達への気遣いや心配りを忘れない方なんです。
 確かに、これだけの人数を相手に平等に時間を割いていただける訳ではないですけどね。
 それでも会長は、私達全員を…平等に、愛してくれているんです」
「でも、それでも嫉妬したりとか、そういうのは…」
「勿論ありますよ。でも、そういう娘たちをうまく宥めるのが…家族である私達なんですよ」

 柔らかく微笑むセフィ。

「家族…ですか?」
「ええ。会長が連れて来た娘は…私達にとっては、みんな家族です。家族は、お互いに助け合うものでしょう?」
「…ふふっ、それもそうですね」

 釣られてデルも微笑みかえす。
 よくよく考えてみれば、自分達も似たようなものではないか。
 最初から自分達は家族だった。それが、恋人関係を含んだものに変わっただけ。
 デルは「三人一緒」というあまり一般的ではない(と、彼女は考えている)スタイルがいつか崩れてしまうのでは、という不安を抱いていた。
 だが、自分達よりもよほど大きな集団でうまくやっているらしき彼女達の話を聞いて、少し安心したのだった。
 そんな風にデルが話を終えると、今度はメリィが話を振った。

「ねえねえセフィさん、会長さんってどんな人なの?」
「どんな人…と言われましても。優しくて、気さくで、面倒見がとても良くて…そうそう、とてもセンスが良いんですよ」
「すごい人なんですねー…」
「はい、とっても。ところで…メリィさん達の旦那様は、どんなお方なんですか?」
「え、えーと…///」
「その、何て言えば良いんでしょうか…///」

 そう返されて、二人は顔を赤くする。
 正直な話、結ばれたのはつい先日だったので、二人とも生々しいイメージが浮かんできたのだった。

「うん、その…とっても、優しいんだよね///」
「え、ええ…それに、色々と上手なんです///」
「そうなんですか…器用な方なんですね」
「器用…そう、かもね、二人一緒でも大丈夫だったし///」
「はぅ…それに、とても体力がありました…///」
「あらあら。何か、激しい運動でも?」
「激しっ!?///」
「た、確かに、激しかったですね…アレは///」
「あの…お二人とも、お熱でもあるのですか? お顔が真っ赤ですよ?」
「お熱…私達はますたーにお熱…ぁう///(ぷしゅー」
「いいいいえ何でもないです…ってメリィさん、しっかりー!?」

 …どうやら色々と(規制)を連想するような会話が続いたお陰でメリィは脳味噌が逝ってしまったようであった。





 その後。
 デルとセフィは、落ちているメリィの傍でお互いのマスター自慢に話の花を咲かせていた。
 セフィ曰く「ここは萌えもん大好きクラブ…トレーナーが自分の嫁、婿の自慢をする場所。そして、萌えもんがマスターの自慢をする場所でもあるのですよ」とのこと。
 そして話の種も尽き、メリィの頭のブレーカーが元に戻ったのはもう夕方になろうかという時間であった。

「いつの間にか、結構な時間になってしまいましたね」
「そうですね…ですが、色々と有意義な時間が過ごせて良かったです」
「私は殆ど寝ちゃってたけどね…」
「ふふっ…メリィさんは、また次の機会にでもお話しましょう?」

 そんな話をしながら、三人は応接室へと向かった。

「失礼します…会長、もうそろそろお時間が」
「……抱きしめて………寝る時も……お風呂のときも…」
「ええ、わかります……ですよね………それなら、俺も…」
「……えーと」
「……ま、ますたー?」

 応接室へ入ったデルとメリィは、正に「語り合っている」二人を見て固まった。
 お互いに身を乗り出して自慢話に興じているアキラと会長。
 初めて会う会長はともかく、アキラのこんな一面は二人とも初めてであった。
 そうしている間にも、二人は女性組に気づくことなく話を続けている。

「……じゃろ……………すばらし……!…うつくし……」
「…………ですが……………でしょう?……………」
「…会長、そろそろお時間ですよ?」
「……ん、セフィか?……………ありゃ! もう、こんな時間か!」
「時間ですか?……ってマジだ」

 アキラが時計を確認すると、もう6時を回ろうかという時間になっていた。

「はははっ、ちょっと喋り過ぎたわい! わしの嫁自慢につきあってくれたお礼に…これは気持ちじゃ!」

 そういうと、会長は戸棚から一枚のディスクを取り出してアキラに渡した。

「これは…技マシン?」
「そうじゃ! 中には『目覚めるパワー』が入っておる! 覚えさせる萌えもんによって威力とタイプが変わる、面白い技じゃ!」
「なるほど…」
「今、使ってみるかね?」
「…ええ。メリィ、ちょっと来て」
「あ、はーい」

 アキラはケースにディスクをセットし、メリィの額に端子を当ててスイッチを入れた。
 円盤が回転する音が鳴り、端子から勢い良く流れてくる技の情報にメリィは顔をしかめる。
 そして…

「…よし、これで終わりだな」
「んぅ~…ちょっと熱っぽいぃ…」
「仕方ないですよ、脳に直接技の使い方を刷り込んでるんですから…」
「ほっほ、試し撃ちは後にしたほうが良さそうじゃな」
「会長、ありがとうございました。有意義なお話を聞けて助かりました」
「何、わしはただの嫁自慢をしただけじゃよ!…そうじゃ、実は君に少し頼みたい事があるんじゃ!」

 会長はセフィに言って一抱えほどの荷物を持ってこさせた。

「これは?」
「うむ、わしからの支援物資じゃ。主に快復の薬が入っておる。これをヨシタカ君達の所へ届けてほしいんじゃ」
「兄さんのところへですか?」
「そうじゃ。頼まれてくれんかの」
「わかりました。二人とも、いいかな?」
「うん、いいよ」
「わかりました。では、観光はまた今度ですね」
「すまないの。では、また機会があったら来なさい」
「はい。それでは、失礼します」

 挨拶をして、アキラ達三人は大好きクラブを後にした。

「ふぅ…やれやれ、ヨシタカ君も心配性じゃの。彼ならあんな心配はいらんじゃろうて」
「会長? いかがされましたか?」
「いや何、彼と話をしたら昔の自分と話をしているような感じがしてな…アキラ君なら、彼女ら二人とも幸せにできるじゃろうよ」
「うふふ、そうですね」




 
 クチバシティを後にし、アキラ達は6番道路を北上していた。

「しまったな…もう暗くなってきた」
「クチバを出たときにはもう夕日が沈みかけてましたしね」
「もうそろそろ明かりつける?」

 メリィは尻尾を抱きながらアキラに聞いた。
 彼女らデンリュウ族の尻尾と額の珠は、電気を通すことで光を発生させるのだ。
 普段アキラ達は、暗くなった時には彼女の灯りを頼って行動している。
 だがアキラは、空を見上げて頭を振った。

「…いや、今日はいいよ。空、見上げてみ」
「……うわぁ~♪」
「……今日は、満月だったんですね」

 月だけではない。
 無数の星も夜空一面に光り輝いている。

「折角だし、今夜は空を見ながら眠くなるまで歩いて…それから野営しよう」
「さんせー!」
「わかりました」

 間にアキラを挟み、手を繋ぎ並んで歩く三人。
 彼らが向かう先はロケット団に占拠された町、ヤマブキシティ。



 彼女はそこで、久しく忘れていた過去に直面することを……まだ、知らなかった。
 そして……時を同じくして起きる惨劇も、また。




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・あとがき

 どうも、久々に本編が進みました曹長です。
 ああっ、やめて! 物を投げないで! 私にボール投げても捕まらないってば!

 えーと、今回のお話はあの大好きクラブのお話でした。
 てか前々から思ってたんですよね…この人、萌えもんで同じことを語れるとしたら大物じゃね?と。
 そんなわけでムリヤリ挟み込んでみたのがこのお話です。ホントはセキチクから直でヤマブキ行くはずだったんですよw
 でも結果的にいいクッションの話ができたと思いました。

 さて、次のヤマブキシティ編は少々話が長くなりそうな感じです…多分、セキチク編位(ぇ
 というわけで、次はヤマブキ編(前編)、若しくは番外編でお会いしましょう。それでは。
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