1スレ>>871


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『せわやきアーボ』

――私の朝は、ぐうたらな主人を叩き起こすことから始まる。
今朝も今朝とて、主人はどうしようもないアホ面を晒して気持ちよさそうに爆睡している。
ここが家のベッドではなく、野宿をしたおつきみやまの山道だとわかっているのだろうか。
「ったく……ほら、おーきーなーさーいー!」
寝袋に包まった主人の体をこれでもかとゆすり、覚醒を促す。
が、起きない。
起きる気配もない。
眠りが深いのは結構だが、こんなところでいつまでも寝こけていて野生の萌えもんにでも襲われたらどうするつもりか。
というか、いくら寝袋があるからって道端で寝てたら間違いなく風邪をひいてしまう。
自分の体調管理くらいやってもらいたいところだが、あいにく主人にそんな考えはない。
「こらー、風邪ひくでしょー?! 起きなさいってー!」
先ほどよりも激しく寝袋をゆすり、ついでに額をひっぱたいてみる。
「ん……むぁ? ……あー、おはよーアーボ」
ようやくお目覚めか。
というかそんな呑気な挨拶かまされても逆に腹が立つだけなのだが。
「おはよー……じゃないわよこのバカ! さっさと起きて準備しなさい!」
「うひゃーっ!?」
意趣返し、というわけでもないが、腹いせに寝袋を蹴り転がしてやる。
が、少々強く蹴りすぎたか、主人を巻き込んだ寝袋は結構な勢いで転がり、だいぶ向こうまで行ってしまった。
「あちゃ、やりすぎたか」
しまった、と肩をすくめ、周りに転がる主人の荷物をかき集めてカバンにまとめてから、それを背負って転がった主人のもとへと向かう。
私が主人のところまでたどり着くと、ちょうど主人が寝袋から這い出したところだった。
「うぅ……酷いよぅ、何もここまでしなくても……」
「あんたが呑気に寝こけてるからいけないんでしょ? ほら、さっさと寝癖直す!」
あーもう、と文句を呟きつつ、カバンの中から櫛を取り出す。
その様子を見るが早いか、主人はさっさと座って私に背を向け、お願いしまーす、などとほざいている。
寝癖くらい自分で直せ、と言ってやりたいが、聞かないのがわかっているので諦める。
この主人、身だしなみというものをまったく気にしないから困る。
おかげで私の櫛捌きスキルがどんどん上昇してしまっているではないか。
そんな愚痴を心の中で、そして時たまポロリと口からこぼしつつ、主人の髪に櫛を通す。
髪質がやわらかいおかげですぐ寝癖が収まるのがせめてもの救いか。
「――はい終わり。 もーアンタ、自分のことくらい自分でできるようにしなさいよね」
「うぅ、面目ない」
「顔だけ申し訳なさそうにしても意味ないでしょうが」
櫛をカバンにしまいながら、日課となった小言を言って聞かせる。
まったく、どうしてこんな駄目な主人に捕まってしまったんだか。
「あ、アーボ」
「んー? 何よ」
主人のほうを振り向かず、適当に応じる。
ああ、またカバンの中がぐちゃぐちゃになって――
「いつもありがと。 大好きだよ」
「――――っ!?」
こ、こ、このバカ主人……!
なんてことをさらっと言ってのけてくれるのか!
だだだ大好きだなんてそんな、騙されないぞ私はご機嫌取りに決まってる!
決まってる、けれど――
「……うっさいわね、わかってるわよ」
――ああ、もう。
そういわれると、やっぱり幸せすぎて、顔がにやけてしまうではないか。
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