5スレ>>722


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 今より少し昔、とある山奥の小さな村。
 そこでは毎年、夏の初めに雨乞いの儀式と祭りが開かれる。
 農業を主として細々と暮らすこの村にとって、夏の雨は貴重な水源でもあった。

 雨乞いの儀式。
 これは、巫女役のニョロトノ族の女性が、村の中央に立てられた櫓の上で、日の入りから日の出までの間、雨乞いの歌と踊りを披露するものである。
 勿論、体力が持たずに倒れてしまう巫女も今までに多くいた。
 そうして儀式が最後まで終わらなかった年は、その分雨が少なく、実りも細かったという。
 前の年は儀式が半分ほどしか出来なかった結果、村では水不足と不作に悩まされていた。
 そして今年。
 巫女を務めるニョロトノの女性は、儀式に備えて体を鍛えながら過ごしていた。
 ところが……



「お姉ちゃん、大丈夫!?」

 ものすごい勢いで、ニョロゾの少女……アマネが病室に飛び込んでいく。
 ベッドで横になっていた彼女の姉であるニョロトノの女性……シズクは、彼女のほうをゆっくりと振り向いた。

「あらアマネ……学校のほうはいいの?」
「そんなこと気にしなくていいから! それよりもお姉ちゃんが怪我したって聞いて……」
「別に、命に関わるような怪我じゃないわ」
「もー、心配させるんだからー……でも、さ」
「?」

 深刻そうな妹に、シズクは首をかしげる。

「命に関わらないって言っても……足の骨、折れてるんでしょ? 儀式は……」
「……大丈夫よ。なんとかするから」
「ならないに決まってるでしょ、このバカ姉! 去年だって万全の状態で挑んで倒れたじゃない!」
「そうだけれど……でも、この村にはもう私以外に儀式をできるニョロトノ族はいないのよ」

 そうなのである。
 この儀式は、過酷であることに加えて後継者不足が深刻であった。
 ニョロゾの娘が進化するために必要な、王者の印は非常に貴重な品である。
 それに加え、儀式の歌はまだしも踊りを習得している者は殆どいなかった。

「だからって、杖つきながら踊れないでしょ!」
「……じゃあ、どうしろって言うの? このままじゃまた、この村は……」
「……あたしがやる!」
「えっ?」
「お姉ちゃんの練習は毎日付き合ってたから全部覚えてる。だから……あたしが」
「……王者の印は無いのよ?」
「進化なんかしなくったって……やってみせるよ!」

 その後、シズクの怪我とアマネの決意の報は一瞬で村の隅々に行き届き。
 村人は不安を抱えながらも「やらないよりは」と、アマネに儀式を任せることにしたのだった。

 そして、儀式の時は訪れる……



「アマネ、しっかりね」
「大丈夫だって、あれからしっかり練習したんだから!」

 杖をつきながら妹を気遣うシズク。
 巫女装束を纏うアマネは、心配は不要とでも言いたげに櫓を上っていく。
 そして、舞台の中央に立つアマネ。
 彼女は日没を確認すると、ゆっくりと歌い……優雅に踊り始めた。

「~~♪~~~~~♪~~~♪」

 同時に、周りの別の櫓からは太鼓が鳴り始める。
 儀式が、始まった。



 始まってからどのくらいの時間が経っただろうか。
 まん丸のお月様が南の空の一番高いところまで上った頃。
 アマネは、ちょっとした異常を感じながらも歌と踊りを続けていた。

「~~~~♪~~~~♪~~~~~~♪」
(あれ……? なんだか、力が抜けてく……)

 歌詞を紡ぎ、舞うたびに。
 彼女の体から、何かが抜けていく。
 だが、ふらつきそうになる足を踏ん張り、アマネは儀式を続けた。

(頑張らなきゃ……あたしがやらなきゃ、やりきらないと……!)

 そんな妹の姿を、シズクは櫓の下から見上げていた。

「……やっぱり、進化しないままで儀式を行うなんて無謀だったのよ」

 巫女の持つ生命力と精神力を天へと上げ、この年の豊作と降雨を祈るこの儀式。
 きちんと進化した巫女でさえきついというのに、進化していない巫女が行うというのは前代未聞であった。
 個体差があるとはいえ、生命力・精神力共に進化後には到底及ばないのは明らかである。

「今更代わる事もできない……でも、私でも少しは助けになるかもしれない」

 そう言うとシズクは、その場で儀式の歌を歌い始める。
 その歌声は、小さなものであったが……その場に波紋を作り出すには十分なものであった。



 櫓の上で踊っていたアマネは、ふと自分の力が戻ってきていることに気がついた。

(力の抜ける感覚が……さっきより緩い?)

 それと同時に、櫓の下から多くの声が聞こえてくる。
 何事かと思い見てみると、シズクを中心として村中のニョロモ系種族の娘達が集まり、儀式の歌を歌っていた。
 彼女達の歌が、アマネに力を分け与えていた。

(お姉ちゃん……それにみんな!)
「~~~♪~~~~♪~~~~~~♪」
「~~♪~~~~♪~~~~♪」
「~~~~~♪~~~~~♪~~~~♪」
「~~~~~~~♪~~♪~~~~~♪」
「~~~♪~~♪~~~♪~~~~♪」
(あったかい……みんなのお陰であたし、まだがんばれそうだよ!)

 着合いを入れなおし、アマネは歌い、踊り続けた。



 ……そして、日の出の時刻が訪れる。

「~~♪~~~~♪~~♪……っはぅ」

 朝日が山の間から顔を出すのを確認し、アマネは歌と踊りを止めて櫓の中心で仰向けに倒れこんだ。
 日の出までやり通したと言う達成感と、一晩中踊り続けていた疲労感で、彼女は指一本動かせそうにないと感じていた。
 と、その時である。

 ポタッ……

「……へ?」

 ポタッ、パララッ……サァーーーーーー

「あ、め?」

 天から降り注ぐ無数の水滴。
 それと同時に、櫓の下からはものすごい歓声が聞こえてきた。

「儀式……成功したんだ……」

 そう呟くと、アマネは安心したかのように意識を手放した。





 この年、この村では十分な降雨に恵まれ、作物も豊作を軽く超える程度の収穫を得た。
 これ以来、儀式の時には巫女以外の少女達も櫓の下で歌を歌うことになったという。


 ~おわり~



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・後書き

 どうも、またしても本編放置の曹長です。
 いや、ニドあることは(ry
 ごめんなさいバトン踏んだんでこっち優先しましたサーセンwww

 とりあえず本編も同時進行中なので次回こそはー……
 それではまた、次回の後書きでお会いしましょう。
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