5スレ>>747


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 夏祭りのあった日の翌日。
 いつも通り皆より早く起床したデルは、ジムの開店業務を行っていた。

「♪~♪~」

 ご機嫌な様子で床にモップをかけ、てきぱきと仕事を終わらせていく。
 アキラは今頃、ホウを叩き起こしにかかっている頃だろうか。
 そうして一通りの作業を終え、デルはシャッターを開けに玄関へと向かった。

「さーて、今日も一日頑張りましょう♪」

 と、勢い良くシャッターを上げ。
 ……軒下に逆さにぶら下がっている男と目が合った。
 というか、合ってしまった。

「グッモーニンお嬢さん!早速だけどリーダーさんplz」
「っっっっっ、きゃああああああああああああああああああ!!!!!」
「アンビリィバボゥッ!?」

 ズバババババババババァッ!!!
 ドシャア!!!

 デルは反射的に悲鳴を上げつつ、悪の波動を最大出力で放っていた。
 そして衝撃で錐揉み回転しながら吹っ飛ぶ男。
 彼はギャグ漫画のように頭から地面へと墜落した。正に車田落ち。
 それを見届けて、デルはへなへなとその場に座り込んでいた。

「朝一で変質者だなんて……今日は厄日でしょうか……」





『挑戦者は異邦人?』





「で、君の弟さんに取り付いた悪霊の言うとおりに俺を訪ねてきたと」

 あの後悲鳴を聞いて駆けつけたアキラは、事情を聞くべくエドと名乗ったその男を応接室へと通した。
 後ろには彼の相棒(兼自称監視役)だというカメックスの青年……名を凛悟と言うらしい……が申し訳なさそうについてきている。
 デルはというと、お茶を置いてさっさと退出してしまった。

「YES!YES!YES!話がわかるねリーダーさん!」
「あんたとりあえず大人しくしてようよ!リーダーさん引いちゃってるでしょ!?」
「アキラでいい……ってか、何でわざわざあんなことを」
「ガ イ ア が 僕 に も っ と 輝 け と 囁 い た の で」
「今日はいつにも増しておかしいな、おい!?」
「んなことでうちの嫁にトラウマ植え付けんでください」
「嫁?あの可愛らしいお嬢さんが?」
「ああ、でも結構根に持つタイプだから気をつけ……っと、そうじゃなくてだ」

 こほん、と咳払いするアキラ。

「で、結局のところ俺はどうすればいいんだ?三行で頼む」
「話して
 戦って
 くんずほぐれつ」
「意味わからんだろそれ!?」
「把握した……んじゃ、バトルフィールドへ行こうか」
「って把握しちゃったの!?これで把握できたの!?」



 そんなわけで、二人はバトルフィールドへと移動した。
 室内のフィールドはまだ準備ができていなかったので、今回は天候対応型の屋外フィールドである。

「そんじゃ、ルールを確認しようか。手持ちの数はそっちに合わせて5vs5、勝利条件は相手の手持ちの全滅だ」
「ああ、了解した」

 お互いトレーナーエリアに立ち、先発のボールを持って構える。

「準備はいいな?」
「応!」
「「行けっ……」」
「恋歌!」「メリィ!」

 先発はお互い弱点の少ない電気タイプ。
 恋歌は高機動型のサンダース族、対するメリィは耐久重視のデンリュウ族。
 互角に見える両者、だが恋歌の特性である「蓄電」によりメリィは主力の電気技を無効化されるという状況だ。
 中央を挟んで少しの間睨み合う両者。
 先に動いたのは、恋歌の方だった。

「恋歌、雨乞いだ!」
「おっけーっ!」

 自慢の速度は技の展開スピードにも影響を与える。
 空は見る見るうちに曇り始め、あっという間に天候は大雨へと変化する。
 狙いは雷の必中効果か、それとも後続に強力な水技使いが居るのか。
 何にせよ、アキラが出す指示は始めから決まっていた。

「メリィ、光の壁!」
「うんっ!」

 メリィの腕に、光の粒子が集まったような盾が出現する。
 それを見たエドは、内心舌打ちをしていた。
 蓄電を盾に雷の連打で削る作戦だったが、光の壁がある状態では威力が半減する。
 このまま戦うとどうなるか。体力で劣る恋歌が先に落ちるのは明白であった。

「くっ……恋歌、戻れ!」

 デンリュウ族は元々の特殊防御力も高い。
 更に光の壁を纏い、正に鉄壁といえる状態。

「(だったら、物理技で落とす……!)言ノ葉、頼んだ!」
「はいっ!」
「気をつけろ、すぐにでも攻撃が来るはずだ……!」

 雨で視界が悪くなっている中、身構えるマッスグマの言ノ葉。
 だが、メリィは攻撃をしていなかった。
 ただ、その額と尻尾の先端の発光珠が。
 アサギで燈台守をする同族のように、激しく光り輝いていた。
 ──『充電』。
 自らの特殊防御力を強化しつつ、次に放つ電気技の威力を倍化させる、攻防一体の補助技である。
 ……アキラは、恋歌の交代を読んでいたのだった。

「……っ、まずい!言ノ葉!」
「っ……!」

 主の意を一瞬で汲み取り、言ノ葉は目にも留まらぬ速さでメリィに襲い掛かる。
 それは正しく「神速」。
 だが、速度はあれどその攻撃は……そのままではメリィには軽すぎた。
 数回の打撃を難なく受け止めると、いまだに飛び回る言ノ葉を。

「……メリィ、雷だ!」
「うあああああああああああああああっ!」

 ドンッ!

 白銀の雷光で、貫いた。

「っ……ぁ……」

 並みの雷の三倍の威力を誇るソレは、並みの特殊防御力しか持たない言ノ葉を、意識すら残すことなく一撃で墜としていた。
 エドは言ノ葉を回収すると、次のボールに手をかける。

「(恋歌ではジリ貧、ジニーとリンは相性が悪すぎる……天候が悪いが、仕方ないか)……アルバート!」
「了解だ……言ノ葉の仇、討たせてもらう」

 雨粒をその身に受けながら、バシャーモのアルバートはメリィに向かって駆ける。
 必殺のフレアドライブが機能しない状況で、彼が打てる手は一つだけだった。

「スカイアッパー!」
「がふっ……!」

 至近距離に踏み込んで跳び上がり、顎を下から打ち抜く。
 脳が揺さぶられる衝撃に意識を手放しそうになりながらも、メリィはお返しとばかりに雷で反撃する。

「いっ……けぇ!」
「ぐぉっ……!?」

 空中で狙われ、回避行動もとれず(とれたとしても避けることは叶わないが)直撃を受けるアルバート。
 両者共に受身を取ることができず、背中から派手に地面へと落ちた。

「メリィ、大丈夫か?」
「そろそろ……きついかも」
「アル、もう一撃でシメだ!」
「……エド、すま……ん」
「アル?……っ、まさか!」

 アルバートは、大の字に倒れたまま起き上がることができないでいた。
 ……特性『静電気』。
 触れた相手を一定の確率で麻痺させるという、メリィの鈍さを補うことのできる特性。

「チャンスだ、もう一撃!」
「……っぁ、ええぇぇい!」
「がぁっ……!!!」

 再度落ちてきた雷に、言ノ葉に続いてアルバートも沈黙した。
 それと同時に、雨の勢いも次第に弱まってくる。
 エドはアルバートを回収しつつこの状況での最善の一手を考察、それを実行した。

「くっ……そぉ!恋歌、雨が止む前に間に合わせろ!」
「うっりゃああああああ!」

 恋歌が放ったのは、光り輝く水飛沫のビーム……水属性の目覚めるパワー。
 それは止みつつある雨粒を巻き込み、メリィに届く頃には威力を倍化させていた。
 メリィは光の壁を纏った腕を交差させ……当たる瞬間、光の壁が掻き消えた。

「え……うわああああああああっ!!!」

 積み重なったダメージに、ついにダウンするメリィ。

「メリィ!」
「あはは……私、休むね……」
「ああ、お疲れさん……デル、頼むぞ!」
「お任せください!」

 アキラはメリィを回収し、二番手としてデルを繰り出す。
 それと同時に、雨も降り止んだ。
 睨み合うデルと恋歌。
 どちらも高機動型アタッカーながら、若干恋歌の方が速い。
 更に、水技を持つ恋歌に対してデルは炎タイプを持つヘルガー族。
 ……アキラにとって、この選択は一種の賭けであった。
 そして、その賭けは。

「恋歌、もう一度雨乞いだ!」
「よーっし!」

 アキラの、勝ちだった。

「(読みどおり……!)デル、悪の波動!」
「はいっ……はああああああああああああ!!!」

 雨を全身に浴びながら、己の悪意を具現化した黒い光を顕現させるデル。
 その瞳は、ただ一点。
 ……恋歌の比較的豊かな双丘を、鋭く睨み付けていた。

「(妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい、その豊かな体つきが本ッ当にネタマシイ……)」
「っ!?な、何?ボク何か恨まれるようなことした!?」
「……ご自分の胸に聞いてごらんなさいっ!!!」

 ……誰が上手いこと言えと。
 それはともかく、怯んだ恋歌にデルは容赦なく悪意の光をぶつけていく。
 ……心なしか、胸ばっか狙っているように見えるのは気のせいだろうか。
 何にせよ効果はあったようで、恋歌は大きく弾き飛ばされる。

「っげほっ、何なのさもう~~!!!」
「落ち着け、次の一撃で決めるぞ!」
「当然っ!」

 先制でデルを落とすべく、恋歌は目覚めるパワーを発動させようとする。
 ……そして、それもアキラの読みどおりであった。

「……甘いです」
「え……げぅっ!?」

 恋歌の死角から不意に現れたデルは、彼女の腹に拳を打ち込んでいた。
 『不意打ち』。
 相手の攻撃しようとする隙を突き、先に攻撃をする技である。
 急所にクリーンヒットを貰い、恋歌はその場に倒れ伏した。

「してやられた……!リン、頼む!」
「全く、しっかりしてよ……凛悟、行きます!」

 恋歌を回収し、後の無いエドは切り札であるカメックス……凛悟を繰り出す。

「さて……アルじゃないけど、レンの仇は討たせてもらうよ?」

 そうして放たれるは「波乗り」。
 デルはその瀑布の中に、為すすべも無く飲み込まれ……その中から一条の光線が、凛悟を撃ち抜いた。

「うぐっ!?」
「今のは……ソーラービーム?」
「ああ、パワフルハーブを使ってな。雨じゃ威力は半減だが……効果は抜群、ならトントンだ。デル、お疲れ」
「はい……」

 ずぶ濡れになったデルを回収し、アキラは三番手としてリースを繰り出した。

「うふふっ、よろしくね。ボウヤ♪」
「…………(ピキッ」
「(……スリーパー、か。欠伸は効果なし……なら)普通に攻めるぞ、波乗り!」
「……うおおおっ!!!」

 坊や扱いに気を悪くしたのか、いつもより心なしか大き目の波乗りがリースを襲う。
 それに怯むことなく、リースは凛悟の目を見つめていた。
 そして、波が過ぎ去った後。

「っ、流石に効きますわね……」

 フィールドには膝を着くリースと。

「ZZZ……」

 立ったまま眠りこける、凛悟の姿があった。

「催眠術……!」
「よし、リース!」
「ええ、頂きますわね♪」

 即座に夢喰いをかけようとするリース。
 流石にそれを許すわけにはいかず、エドは慌てて凛悟を引っ込めた。

「やべっ、戻れ!」
「あぁん、残念……」
「(咄嗟に戻したが、相性最悪じゃないか……)ええい……ジニー、済まない!」

 そして現れるエドの最後の手持ち……クロバットのヴァージニア。
 言うまでもなく、エスパーであるリースは最悪の相手である。

「……何だか、前回も似たような状況だった気もするのだけれど」
「本当に、ごめん……」
「いいのよ、手は……無くはないのでしょう?」
「……っ、ああ!」

 力強く応えるエドに、ヴァージニアは微笑み。
 並みの萌えもんを寄せ付けないスピードで飛翔し、リースに迫る。

「エディ、指示を!」
「怪しい光だ!」
「……!?」

 接触する、という瞬間。
 ヴァージニアはリースの顔に向け、紫色の光を浴びせた。
 見た者に幻覚を見せ、正常な判断をできなくする「怪しい光」。
 リースはそれをまともに見てしまい、混乱状態に陥った。

「あら?あらあら?デルちゃんが、メリィちゃんが、サイホちゃんがいっぱいいますわ~???」
「ちっ、リース!幻覚に惑わされるな!左後方120度、仰角60度にサイコキネシス放射!」
「わかりましたわああぁぁぁ???」

 わかっているのかいないのか、リースは目を回しながら言われたとおりの方向に手を掲げて念力を放つ。
 ある程度広域に拡散したため威力は若干落ちたが、それでもヴァージニアを落とすには十分な威力。
 そしてくるくると回転しながら空へと放たれたソレから、ヴァージニアは逃げ切ることができなかった。

「ああああああっ!!!」
「ジニー!」
「後は、任せましたわ……早く、目を覚ましなさいな」

 そして場には錯乱しているリースと、眠りこけている凛悟。

「ZZZ……」
「め~が~ま~わ~り~ま~す~の~??????」
「「…………」」

 ……中々にカオスである。
 そして。

 ゴスッ。

「べぶぼっ!?」

 フィールドの角に立っているポールに顔をぶつけ、リースは気絶した。

「なー、アキラさん」
「……何だ?」
「こういうとき、どんな顔すればいいかわからないの」
「……笑えばいいと思うよ」
「プギャー(^Д^)9m」
「(#^ω^)ビキビキ」

 と、そんなやりとりをしつつもアキラはリースを回収する。
 そして四番手として、ゲンを繰り出した。

「さぁて……真打ちは遅れてやってくる、ってな!」
「頼んだぞ、夢喰いだ!」
「任せろおっ!」

 眠り続ける凛悟に、見事に夢喰いは決まる。
 そしてそのショックで、彼はようやく目を覚ました。

「……はっ、状況は?」
「だいぶマズい。ってかお前以外全滅」
「何ですとおおおおっ!?」
「だがジニーが頑張ってくれたから、まだ何とかなる。分は悪いが……やれるな、相棒?」
「……ああ!」

 そして改めて二人は相対する。

「(ゲンガー相手に眠ったら相手の思うつぼ……なら)波乗りだ、決めて見せろ!」
「ゲン、出し惜しみはナシだ……シャドーボール、ありったけ投げつけろ!」
「「うおあああああああああああああああああああああああああああっっっっっっ!!!!!」」

 互いに全力。
 凛悟の作り出した瀑布はゲンを飲み込み、フィールドを超えるかのような勢いで押し流していく。
 ゲンの投げつけたシャドーボールも、殆どが凛悟に着弾。余波で周辺には土埃が舞った。
 ……そして。

「──。」
「っは、はぁっ、はぁっ……やった、か……?」

 ゲンはフィールドの端でうつ伏せに倒れている。
 一方で凛悟は、膝をつきながらも意識を保っている。
 首に巻いているマフラーからは、微かに光……隠されていた気合いの鉢巻のものである……が漏れていた。
 ……数秒の時が流れ。

「――ま、だだ……」

 ゆっくりと。
 頭に巻いているボロボロの鉢巻を光らせながら、ゲンは立ち上がった。

「……あんたも、そいつの使い手だったとはね」
「はっ……そいつはオレのセリフだ」

 ……お互い、あと一発。
 鉢巻さえ発動し続ければ、いつまでも戦いは続くがそうもいかないであろう。
 ……動いたのは、凛悟の方だった。

「終わらせる……波乗り……!」
「…………」

 再びゲンに迫る瀑布。
 その向こうにいる凛悟に人差し指を向け、ゲンはニヤリと笑って言った。

「……チェックメイト、だ」

 そしてゲンは波に飲まれ、意識を手放した。

「これであと一人、か」
「ああ、そうだな……ゲン、よくやった」

 そう言ってアキラはゲンを回収し、最後にサイホを繰り出した。

「サイドンか……リン、勝てるぞ」
「――――――――」
「……リン?」

 返事をしない凛悟。
 ……彼は、立ったまま気絶していた。

「……悪いな。何度も発動されたら困るんで『道連れ』を使わせてもらった」
「……そう、か……戻れ、リン」

 エドは凛悟を回収する。
 戦いは、アキラの勝利で幕を閉じた。



 その後、エド達はジム備え付けの装置で回復し、来たときのハイテンションが嘘のような状態でジムを去っていった。
 アキラ達はその後も業務を続け昼休みに入ったとき、デルがアキラの下へやってきた。

「ご主人様」
「ん、デルか。どうした?」
「いえ、その……今朝の方々は、またいらっしゃるのでしょうか」

 少し困惑した表情でそう言うデル。
 今朝の奇行にいきなり遭遇すれば、そりゃ次が心配にもなるだろう。

「ま、十中八九来るだろうな。話して戦闘はしたが……まだ三行目がクリアできてないし」
「はぁ……憂鬱です」
「あー、んじゃ明日から暫くは俺がシャッター開けるから。そんなら大丈夫だろ」
「そうですね……申し訳ありませんが、お願いしますね」

 そう言ってデルは昼食の支度を手伝うべくキッチンへと向かう。
 アキラはというと、エドとの戦闘を振り返っていた。

「……今回は運良く翻弄できたが、次は……」

 幸運に続く幸運。
 初手の相手の雨、静電気の発動、急所に入った不意打ち、錯乱してなお当たった攻撃、最後の鉢巻合戦。
 どれか一つでも落としていたら、勝敗はひっくり返っていただろう。
 アキラは、既に次の戦いに思いを馳せていた……


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・後書き

 ども、毎度お馴染み曹長です。
 ……あれ、前回の投稿から一週間経って……無い……?
 うむ、テスト補正恐るべし(ぇ

 と言うことで今回は番外編、ってか未来編。
 吸血の人のとこの子がジムに遊びに来たよ!ってお話でした。
 私にしては珍しくガチバトルしてたなぁ……てか割とゲーム準拠に戦わせたら脳味噌沸騰して(ry
 あと戦闘後のパートが短いのは仕様です(マテ
 さて、それじゃこの後は吸血の人にバトンタッチだ!
 ……未来編増えてきたし、外伝から移そうかしら……

 それでは、また次回の後書きでお会いしましょう。
ツールボックス

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