5スレ>>754


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 シオンタウン。
 もえもんタワーと呼ばれる巨大な墓地を持つこの町は、慰霊の町として知られている。
 普段は静かで神秘的な雰囲気が特徴の町だが、お盆になると様子は一変、
 カントー最大の規模を誇る縁日につられてやってきた観光客で、文字通りお祭り騒ぎとなる。
 また、ゴーストタイプのもえもんが多いことでも知られており、
 ゴーストタイプのもえもんが好きな者や肝試しをする者にとってはちょっとした名所になっている。
 夏の風物詩がもたらすにぎやかさと普段の神秘的な雰囲気。
 このギャップこそがシオン最大の特色であるということもできるだろう。

 夏が終わり、秋に入る頃。
 再び神秘的な雰囲気を纏い始めたこの町に、ちょっとした騒動が起ころうとしていた。

―――

「ふぅ……やっと落ち着ける」
 シオンタウンもえもんセンター内の宿泊施設。
 セキチクを出て東に向った俺たちがそこへ着いたのは、もう日も暮れようという時間だった。
 与えられた部屋に入った俺はとりあえず腰のボールから仲間たちを出し、荷物を置いて座り込む。
 ボールから出ると同時にファルはへろへろと俺の頭の上へ、ミルトはキッチンの方へと向かっていった。
「おーい、ファル。生きてるか~?」
「も~だめ~」
 頭上のファルに問いかけると、予想通りへろへろとした声が返ってきた。
 今日は12番道路付近のデータ集めをしながらシオンを目指したのだが、結構厳しい道のりだった。
 理由その1。トレーナーが多すぎる。
 ただ多いだけならいいのだが、そのうちの大多数が目を合わせただけでバトルを申し込んで来るのだ。
 正直たまったもんじゃない。
「マスター、お茶が入りました」
 ミルトがお茶を持って戻ってくる。カップから漂う香りが、疲れた体を癒してくれるようだった。
「すみません、私のせいで……」
 俺達から漂う疲労感を感じてだろう。
 3人分のカップをテーブルに置きながら、ミルトが謝ってくる。
「いや、このくらい大丈夫だ」
 頭からファルを降ろしながら言うと、
「そうだよ~。調子が悪いことくらい誰にでもあるよ~」
 俺の手の上でファルも追随する。
 理由その2。俺たちの戦力の低下。
 レーティをマサラに行かせていることに加えてここ最近のミルトの不調により、俺達の戦力は大幅に下がっていた。
 データ集めをする分には大きな問題はないが、今日のように山ほどバトルをさせられると少々きつい。
 だが、
「ファルの言う通りだ。ミルトは何も悪くない」
 申し訳なさそうな顔をするミルトに言い聞かせる。
 確かに少々厳しかったが、ミルトが何か悪いことをしたわけじゃない。むしろ、
「むしろお前たちの体調管理をしっかりできなかった俺に責任があるくらいだ」
「そんなことないです。私が自分のことをしっかりできなかっただけで……」
「……じゃあ、お互い悪かったということで手打ちにしよう。
 ミルトは早く体調を戻す、俺はそのために協力する。……これでいいな?」
 ミルトが口を挟む前に言い切る。
 少々強引だが、俺もミルトもこういったことになると簡単には折れない。
「……わかりました」
 ミルトもそのあたりはわかっているのだろう。やや不満そうながらもうなずいてくれた。
「よし、じゃあ晩飯は俺が作ってやるよ!」
 お茶を飲み干して席を立つ。
「え、それは……」
「言っただろ? お前の体調が回復するよう協力するって」
 ミルトが何か言いかけるが、さっきの約束を持ち出して黙らせる。
「大したものは作れないが、これくらいはやらせてくれよ」
「……はい」
 ミルトが頷くのを確認して、俺はキッチンへと向かった。



 しばらく後。俺達の部屋に全員が集合する。
 サヤ達とは部屋が別だが、食事のときは全員集合というのが俺たちのルールだ。
 俺のいる位置を12時とすれば、10時の位置にルーメ。
 以下8時、4時、2時の位置にサヤ、ファル、ミルトの順でテーブルを囲み、料理に箸を伸ばしている。
 テーブルに並ぶのは白いご飯に味噌汁、サバの味噌煮とほうれん草のおひたし。そして大皿に盛った野菜炒め。
 久しぶりなのできちんと作れるか心配だったが、案外なんとかなった。
「味はどうだ? まずまずの出来だと思うんだけど」
「とても美味しいです」
「ちょっと意外なくらいおいしい~」
「……なんだか懐かしいです」
 ルーメ、ファル、ミルトがそれぞれの感想を述べてくる。
 ファルはともかく、家事の得意な2人からの評価はあてになりそうだ。
「サヤはどう思う?」
 最後の1人に目をやる。
「…………え? な、なに?」
 ぼんやりとした表情で料理を口に運んでいたサヤだが、俺の声で我にかえる。
 セキチクシティでロケット団とやりあって以来、サヤは時々ぼうっとすることがあった。
 毒の後遺症か何かかと思ったが、どうも違うようだ。
 ぼんやりと遠くを眺めていることもあれば、俺の方をちらちらと見ていることもある。
「だから、料理の出来だよ」
「あ、そ、そうね。まあまあなんじゃない?」
「そうか。口に合ったようでよかった」
「まあ、私に言わせればまだまだだけどね!」
 褒められたかと思えば文句が飛んでくる。
 これも最近増えた現象だ。顔が赤いところを見ると怒っているのだろうが、何か怒られるようなことをしただろうか?
 まあ殴られるなどの実害がないのでかまわないが。


 食事の後はお茶を飲みつつ、今日の成果(捕獲数、バトル成績など)についての報告・反省会。
 情報の共有は大事だということで最近始めたのだが、要はその日のことで談笑するだけだ。
「ふっふっふ……今日は私の勝ちみたいね」
 今日は久しぶりに捕獲数が俺より上だったためだろう。サヤが若干上機嫌でからんでくる。
「だから勝負してるわけじゃないってのに」
「あら? 負け惜しみ? みっともない。そんなんじゃ明日も私の勝ちね」
「……まあ、データ集めが進むから俺としてはありがたいな」
 正直、勝負とかどうでもいいし。
「べ、別にあんたの為に捕獲してるんじゃないわよ!
 いい? 私は単にあんたに負けたくないだけ。そこんとこ間違えないでよね!」
「わかったわかった」
 顔を真っ赤にして怒鳴るサヤを適当にあしらう。
 そんなに俺が利益を得るのが嫌か?
 まあ、どっちが多く捕獲しようが最終的には対戦相手(=俺)の役に立つわけだからな。
 勝負好きとしては納得がいかないところもあるんだろう。
「面倒だな……っと、どうした? ミルト」
 ぼんやりとこちらを眺めていたミルトに話を振る。
「……え? あ、すみません。ちょっとぼーっとしてました」
「大丈夫か?」
「はい。……少し、疲れたのかもしれません」
 そう言ってほほ笑むミルト。
 疲れのせいだろう。その笑顔は少しさみしそうに見えた。
「んじゃ、今日はこの辺でお開きにするか」
「そうね。私も少し疲れたし」
 サヤが立ち上がって大きく伸びをする。
 それからテーブルの上を片付け、
「ファルさん。起きてくださいな」
「う~ん。もう食べられない~」
「ルーメさん、寝かせておいてあげてください。ベッドに運んでおきますから」
 いつの間にか寝ていたファルの面倒を見る2人を眺めながら、サヤと明日の予定を確認する。
 シオンタウン到着1日目の夜は、こうして更けていった。

―――

 その頃、シオンタワー内部。
 整然と立ち並ぶ墓の間を歩く人影があった。
 人間の男だ。黒い帽子を目深にかぶり、顔を隠してはいるが、
 胸に書かれているRの文字が彼が何者かを雄弁にかたっていた。
 ロケット団――カントーではその名を知らぬものなど無い犯罪組織だ。
 その行動範囲はカントー全域におよび、シオンでももえもんハウスの管理人が連れ去られるという事件が起きたばかりである。
 最小限の照明しか点灯していない暗闇の中、男は足音を立てぬようゆっくりと歩を進め、
「――ここか」
 1つの墓の前で立ち止まった。
 形式としては周囲のものと同じ、いたって普通の墓石だ。
 場所もごく普通の区画で、こんな夜中にこそこそと訪れるような場所とは思えない。
 まあ、ロケット団が白昼堂々ユニフォーム姿で墓参りをしたとあればそれはそれで問題なわけだが。
「まったく、なんだって俺がこんな――」
 男は何やらぶつぶつつぶやきながらしゃがみ込み、墓石の根元を探っている。
 暗闇の中、半ば以上手探りで遺骨を納めるスペースを見つけ出した瞬間、
「――そこにいるのは誰だ!?」
 鋭い声が飛ぶ。タワーの見回りをしていた警備員だ。
「チッ!」
 男は即座に作業を中断し、懐から取り出したナイフを警備員に向けて投げつけた。
「うわっ!」
 しかし、男の中に動揺があったのだろう。
 当てるつもりで投げたナイフはわずかに逸れ、警備員の後ろにあった社のようなものに突き刺さる。
 警備員が一瞬怯んだ隙を見逃さず逃げに転じる男。
 故に彼には見えていなかっただろう。ナイフの行方を見た警備員の顔に浮かぶ驚愕の色が。

 シオンに再び幽霊騒ぎが発生するようになったのは、それからすぐのことだった。

―――

「幽霊?」
 シオンに来て1週間目の夜。
 すっかり定例になった報告・反省会の時に、ミルトがそんな話題を出してきた。
「はい。ここ最近、幽霊の仕業と思われる事件が多発しているらしいんです」
「ゴーストタイプのもえもんではないのですか?」
 ルーメがもっともな意見を述べる。
 ゴーストタイプが多いシオンでは、彼らによるイタズラは割とよくあることらしい。
 悪さがすぎれば祈祷師たちがお仕置きをするので、何かあったら相談してほしいとセンターの職員から言われている。
「確かにそれもあるのですが、このあたりのもえもんとは明らかに違う姿が多数目撃されているんです。
 もえもんタワーに封じられている幽霊の仕業だなんていうのがもっぱらの噂で……」
「ほんとにそんなのいるの~?」
「さあ……?」
「いるわけないでしょ、そんなもん」
 ファルが上げた疑問の声に、ルーメとサヤが意見を返す。
 それを境に始まった幽霊についての議論を聞きながら思考を走らせる。
 確かに封じられた悪霊なんておとぎ話じみている。
 しかし実際に事件は起きているし、幽霊らしきものも目撃されていて……
「なら、調べてみるか」
「「「「えっ?」」」」
「……何驚いてんだよ」
 発言によって集まった視線を順に見返しながら、言葉を続ける。
「その見かけない姿ってのが何なのか、実際に確かめてみればいいじゃないか。
 もしかしたら新種のもえもんかもしれないし、データ集めのついでに調べてみないか?」
「もし、本当に幽霊だったらどうするんですか?」
 ミルトが口にした言葉に、他の皆が頷く。
「そりゃ、祈祷師の人に任せるしかないだろ」
「あんたねぇ……」
 やれやれといった口調でサヤが口をはさんでくる。
「どの程度被害が出てるか知らないけど、少なくとも事件が起きてるのよ?
 そんないい加減な考えで動いて、何かあったらどうするのよ」
「確かに、サヤの言うことにも一理ある。何が起きるかわからないから、危険はある程度覚悟しなきゃならない」
 自分に向けられる視線が真剣なものに変わっていくのを感じながら、言葉を続ける。
「でも、今この町では事件が起きていて、少なくともその一部にはもえもんが絡んでいるんだろ?
 なら俺達にもできることがあるはずだ。少しでも動いてみないか?」
「あんたねぇ……」
 少しの間の後、さっきと同じ口調でサヤが口を開く。
「それじゃデータ集めの方がついでになってるでしょうが」
「……あ」
「まったく……。いいわ、手伝ってあげる」
 しかし、続く言葉は肯定的で、
「ふふ、私はマスターに賛成ですよ」
「いつものことだしね~」
「すごくトウマさんらしいと思います」
 苦笑気味の空気の中、他の皆も口々に賛成の意見を言ってくれる。
「ありがとう。……それじゃ、季節外れの肝試しといこうか」

 こうして、翌日からのデータ収集は幽霊事件の調査へと変更になった。

―――

あとがき
 
 こんにちは、白です。
 まずはここまで読んでいただいてありがとうございます。

 さて、物語は今回から舞台をシオンに移します。
 今回はセキチク~シオン間の移動と状況説明をメインにした日常パートといったところでしょうか。
 この物語は初代ポケモンの物語とは直接関係ないようにしているので、
 ガラガラの幽霊やフジ老人誘拐事件などはこの物語より前に終わったものとしています。
 つまりシルフスコープはゲームの方の主人公が持って行っちゃってるわけで……
 次回のメインは幽霊事件の解決。
 幽霊なんてほんとにいるのか、ほんとにいたなら対幽霊アイテムがない状態でどうするのか。
 そのあたりを楽しみにしていただけたら幸いです。 
 
 それともう一つ、シオンの祭りなど、町の設定は私が勝手に考えたものです。
 私がイメージ(妄想ともいう)した町の様子を読者の皆様にも感じていただきたくて書いているのですが、
 イメージ(妄想)である以上、ポケモンの世界観上ありえない描写があるかもしれません。
 今後の参考にいたしますので、ありえない描写を見かけたらびしばしご指摘いただければなぁと思います。

 それではまた、次回でお会いしましょう。
ツールボックス

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