午前6時。そろそろ朝日が昇る頃だ。
元々軍で仕事をしていたせいで無駄に早く起きてしまった。
流石にこの時間だとまだ誰も起きていないだろう。時季も時季だし。
ちなみに今は2月だった。どうやら俺のいた世界とはちょうど6ヶ月違いのようだ。
とりあえずやることもないので部屋を出ると、なにやらいい匂いが漂っていた。
その匂いを辿ってみると、どうやらキッチンの方から漂っている。
そこにあの萌えもん、パウワウがいた。どうやら俺よりも早く起きていたらしい。
「あ、おはようございます。」
「あぁ、おはよう。博士はまだ起きてないのか?」
「はい。でももうすぐ起きてくると思いますよ。ご飯食べますか?」
出されたのはパンとベーコンエッグ。見た目は悪くない。
「君が作ったのか?」
「萌えもんも自分で料理くらいできますよ。」
「そうなのか・・・じゃあいただくよ。」
食べてみた・・・意外とうまい、といったらさすがに悪いか。
というより、他人の作った料理を食べるのは久しぶりだ・・・
今まではほとんど海上か海底にいたおかげで同じようなものしか食べていなかった。しかも自炊で。
「おお、起きておったか。まさか先を越されるとは思わなかったよ。」
そうこうしてるうちに博士も起きてきた。
「すいません、先にいただいています。」
「いやいや、気にすることではない。やはり朝はしっかり食べないとな。」
そういって席に着き、新聞を読み始めた。
パウワウが博士の前に朝食を並べる。
こんな小さいのに、萌えもんとはたいしたものだ。
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30分程で朝食も終了し、俺は旅に出る仕度に取り掛かる。
必要なものは博士が用意してくれた。
昨日のうちにやっておけばよかったんだが、流石に睡魔には勝てない。
とりあえず準備はできた。荷物がそんなに多くないおかげで早く済んだ。
「おお、準備はできたか。」
「ええ。出るのは早い方がいいかと思ったので・・・ただ少し気になることが」
「何かね?」
「俺の服装、目立ちますかね・・・?」
今の服装、それは軍服。とはいっても礼服のほうだが。
上下とも真っ白で所々に刺繍も入っている。正直、これでうろつけばかなり目立つだろう。
もし職質を受けたら・・・コスプレとでも言っとくか・・・?
「うーん・・・まあ目立つには目立つが・・・そうじゃ!」
何か思いついたらしく、博士は部屋の奥へ・・・
しかしすぐに戻ってきた。なんだか嫌な予感がする。
「これを着るといいじゃろう!」
そういって俺に渡した服は
白いYシャツに黒いジーンズ、おまけになにかアニメ柄のプリントの入ったTシャツ。
どう見ても子供用の服である。
「・・・すいません、やっぱりこのままでいいです。」
「そうか・・・似合うと思ったんじゃがなぁ・・・」
博士に服を返した。
その心遣いはうれしいが、いい歳してこれを着るのは勇気がいる。
というかなんで残念そうな顔をするんだ・・・。
「まあそれでいいなら何も言うまい。ロケット団よりはまだマシじゃな。」
「ロケット団・・・?」
「他のトレーナーの萌えもんを奪ったり、破壊活動を繰り広げる全く持って迷惑な連中のことじゃ。」
「テロリストみたいなもの、でいいですか?」
「まあそう思ってもらえればいい。とにかく危険なやつらじゃ。君の格好は目立つからな、十分気をつけたほうがいいじゃろう。」
「できれば出くわしたくないですね・・・」
この世界にもそういうものが存在するとは驚きだ。
まあその類が存在しない方がおかしいのだが。
「さて、パウワウ!ちょっとこっちへ来なさい!」
「はーい、なんですか?」
「今日から君のマスターは彼だ。ちゃんと言うことを聞くんじゃぞ?」
「・・・・・・え、あ、あの、ちょっと待ってください!そんな話聞いてませんよ!」
少し間をおいてパウワウが慌てだした。
理由は大体分かる。
「なんじゃ、昨日伝えたと思うんじゃがな。」
「いつ言ったんですか!そもそも私がいなくなったらどうやって生活するつもりなんですか!」
「それならうちの若いもんに任せるわい。」
「・・・ほんとに大丈夫なんですかぁ?」
「そんなに心配することでもないじゃろう。年寄りだからとバカにするでないぞ。」
「そんなことまで言ってませんよぅ・・・」
確かに昨日それらしい事は言ってはいた。
どうやらその部分だけ聞いていなかったようである。
本当に大丈夫だろうか・・・
「とにかく、彼を立派な萌えもんマスターになるまで付いていってあげなさい。」
「はぁ・・・・・・わかりました。この人を立派なトレーナーに育てればいいんですね?」
「そういうことじゃ。よろしく頼むぞ!」
「はい!頑張ります!」
「え・・・ちょ、ちが・・・」
いやいやよろしくじゃないから。そっちも張り切らなくていいから。
当初の目的から大きく外れすぎだから。
トレーナー、あるいはマスターは手段であり目的は元の世界へ帰ることだから。
「とりあえずまずは隣町のトキワシティを目指すとよい。今出発すれば昼前には着くじゃろう。」
「思ってたより近いんですね。」
あえて突っ込まないことにした。
そして博士からボールを受け取る。
「じゃあ、今日からよろしく頼むよ。」
「任せてください!マスターを立派なトレーナーにしてみせます!」
やはり勘違いしてるが・・・まあいいか。
まあ萌えもんやトレーナーに関しては全くの素人だし間違いではない。
「そうじゃ、これを忘れるところじゃった。」
そう言って博士はポケットから手帳のようなものを取り出し、俺に渡した。
「これは・・・電子手帳?」
「それは萌えもん図鑑。遭遇した萌えもんを自動的に登録してくれる便利なものじゃ。」
「なぜこんな貴重なものを俺に?」
「これから遭遇するであろう萌えもんの名前やタイプがわからないと不便じゃろうからな。」
「なるほど・・・ならとてもありがたいです。」
「そう言ってくれるとわしも嬉しいよ。ちなみに4分の1ほどは埋まっておる。」
「残りはまだ・・・ですか。」
「うむ。実は君がここへ来る2週間ほど前に、ワシの孫とその友人にそれを完成させるように頼んだのじゃ。
たまには報告するように言っておいたからの、送られたデータをそれに移しておいたんじゃ。」
「孫とその友人に・・・ならその二人は今も図鑑を完成させるために旅を?」
「そのはずじゃ。何か遭ってなければの。」
「遭ってなければって・・・危険なのでは?」
「その心配はいらん。二人とも中々タフじゃから。」
そして笑うオーキド博士。タフだからとかいう問題ではないと思うんだが。
そうこうしてるうちに、気がつくと9時を回っていた。
床に置いたバックを肩にかける。
「それじゃ、そろそろ行きますね。」
「おお、だいぶ時間を食ってしまったな。もし二人に会ったらよろしくな。」
「とはいっても顔がわかりませんけどね。」
「萌えもん図鑑を持っているのは君を含めて3人だけじゃ。それならすぐにわかるじゃろ?」
「なるほど、なら会えたら挨拶くらいはしておきます。」
「ああ、気をつけてな。」
「色々とお世話になりました。それじゃ・・・行こうか、パウワウ。」
「はい!マスター!」
やっぱり研究所の外は寒い。パウワウは元気だが。
子供は風の子か?
とりあえずまずはトキワシティを目指そう。
幸い歩くことには慣れてるので問題ない。
貰った地図を見る。どうやら全てのジムを回るには結構かかりそうだ。
まあ、長期休暇が手に入ったと思えば、こういうのも悪くない。
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とりあえず続きの完成・・・
何か前よりおかしくなったような気がしないでもない・・・
最終更新:2009年10月16日 14:55