5スレ>>806


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『きゅるるるる』
「はぁ~、腹減った……」

 …腹から聞こえる切ない音が自室に響く。
 まったくオニドリルの奴、なんだって俺の分まで朝食を食っちまうんだ。
 しかもなぜか機嫌も悪いし。俺、何かマズいことした?

「リュウマさーん」
「ん? ラプラスか。どうした?」

 自室のドアの向こうからラプラスが声をかけてきた。
 まさか、この空腹の俺に食料を……なんてことはないか。

「ママさんから伝言ですー。ウツギ博士が呼んでるって言ってましたー」
「ん、了解。すぐ行くって言っといてくれ」
「はいですー」

 それだけ言うと、ラプラスはさっさと行ってしまった。
 …やっぱり、食料は無いのな。






 course of life -with you-
 第二話~仕事と遊びと過去の記憶~






「おはようございます、ウツギ博士」
「やあ、おはようリュウマ君。待ってたよ」

 ウツギ博士が呼んでいたという事で、俺は今ウツギ研究所に来ている。
 手持ちのみんなは家に置いてきたが、ここは家からも近いし特に問題ないだろう。

 そしてなぜこんな一般人の俺がこの有名な研究所のウツギ博士に呼ばれているのか。
 それは俺がここで職務体験の一環として物資調達の仕事をさせてもらっているからだ。
 親父がウツギ博士と仲がいいってこともあってできる事なんだよな、コレ。
 給料はもちろん無いが、代わりに色々な場所へ行けたり、珍しい物がもらえたりする。
 それに、そろそろ働き始めないとマズい年だからな。少しは仕事の経験しとかないと。

「それで、今日は何の調達ですか?」
「今日はこれをカントー地方にいるオーキド博士に届けて欲しいんだけど、大丈夫?」
「…え? ナンデスト? カントー?」

 …予想外の注文だった。
 いつもならジョウト地方内で済まされていたが、まさかカントーにまで拡大するとは。
 しかもオーキド博士って、あのカントーで超有名な萌えもん博士じゃないか。
 萌えもんトレーナーなら一度は会っておきたい有名人ナンバーワンの人だ。
 そんな人に生で会える機会など、そう多くはないだろう。

 …と、なんだかとてつもなく魅力的な内容なんだが、どうしようか……

「バッジもそれだけあるんだし、僕は君なら大丈夫だと思うけど……ダメかい?」
「あ、いや、大丈夫です。行ってきます! 是非とも行かせていただきますっ!」
「本当かい? ありがとう。助かるよ」

 …あぁ、言ってしまった。やっぱり人の頼みって安易に断れないよな。
 だが、言ってしまったからには気合い入れて行かないと。

 そして何を隠そう、俺はジョウトのジムバッジを5つ所持している。
 それぞれキキョウ、ヒワダ、コガネ、エンジュ、アサギの5つだ。
 トレーナーの中での腕はそこそこ強いんだろうけど、まだまだ未熟。油断は禁物だ。

「ところで、カントーまではどうやって行けばいいんですか?」
「あ、それについてはもちろん徒歩で行けなんてことは言わないから安心するといいよ」

 いや、博士、徒歩とか言ったらマジで鬼畜ですよ。
 行けない事は無いと思うけど、相当キツいだろうね。山越えとかするだろうし。

「少し遠くなるけど、アサギシティから出航するアクア号に乗って行ってもらうよ」
「分かりました。いつ頃までに届ければいいですか?」
「特に期限は無し。確実に届けてもらえれば問題ないよ」
「了解です。じゃあ準備が終わり次第すぐに出発します」
「うん。今回は結構重要な物資だから、くれぐれも道中気をつけてね」
「はい。それではまた後ほど」


 …………。


「…という訳で、今からカントーへ行く。文句のある奴、手を挙げろ」
「「「はいはいはーい」」」

 さっきの話を家に帰ってみんなにした結果がこれだよ。
 まぁ、突然決まった事だから仕方ないっちゃ仕方ないんだけど。

「じゃあポニータ」
「途中でトキワシティに寄れたりする?」
「あぁ。経路上寄ることになるだろうな」
「やったぁ!」

「「はーい!」」
「じゃあ次、オニドリル」
「どうやってカントーまで行くの? 何かに乗って行くんでしょ?」
「予定ではアサギからアクア号でカントーに行くことになってる」
「ホント!? やりぃ!」

「はーい!」
「じゃあ最後、ラプラス」
「なんでもないですー」
「……」

 …なんだ。予想と反してみんな行く気満々じゃないか。
 ま、何にせよ結果オーライか。

「それじゃ、これから各自準備に入ってくれ。30分後に出発するからな」
「「「はーい!」」」


 …………。


 30分後、再びウツギ研究所。
 マサラタウンまでの経路を細かく教わった後、いよいよ出発。

「じゃ、そろそろ出発しますね」
「うん。それじゃあこれ。荷物とアクア号のチケット」

 お届け物とアクア号のパスを手に入れた!
 しかしこの荷物、一体何が入ってるんだろう。結構軽いんだが……

「くれぐれも気をつけてね」
「了解です。では、行ってきます!」
「「「行ってきまーす!」」」
「う、うん。行ってらっしゃい」
「…お前らなぁ、遊びに行くんじゃないんだぞ?」

 まったく、少しはこれが仕事だという自覚を持って欲しいものだ。
 多少の不安が残る中、俺達はウツギ研究所を後にした。






「ふぅー、ちょっと疲れたね」
「サンキュー、オニドリル。助かったよ」
「これで今朝の朝食分、チャラだから」
「へいへい」
「…にしても、久し振りだねぇ、アサギなんて」
「あぁ、何年振りだっけな?」
「確か3年振り? 物資調達のついでに、ジムにも挑戦したんだったっけ」
「ミカンさん、強かったよなぁ」

 あれから約10分後、俺たち一行はオニドリルの背に乗り、早くもアサギシティに到着。
 海が町からもよく見え、潮風が心地よい。

「うわぁ、久し振りだね!」
「ほんと、久し振りですー」

 着いて一息していると、ポニータとラプラスが勝手にボールから出てきた。
 こんなのはいつもの事なんだが、やっぱあんまり良くないよな?

「ねぇリュウ兄、ちょっと海行こうよ海!」
「私もちょっと寄りたいですー」
「あ! あたしも行く!」

 出た。予想はしていたが、やっぱりこいつら仕事より遊び優先だよ。
 ま、でもまだアクア号出航までは3時間近くあるし、少しだけ遊ばせてやるか。

「ちょっとだけだぞ。それと、あんまり遠くまで行くなよな」
「「「はーい!」」」

 返事をするなり、三人はそそくさと砂浜に走って行ってしまった。
 さて、俺はその間に乗船手続きでも済ませて来るか。






「うわぁ、久し振りの海だ!」
「よーし! ポニ、貝殻集めしようよ!」
「うん! いいねいいね!」

 ここはアサギの浜辺。8年前、私が行き倒れていた場所。
 ここで私はリュウマさん達に見つけられ、一命を取り留めた。
 なぜ行き倒れていたのか。
 行き倒れる前は一体何をしていたのか。
 …分からない。思い出せない。
 何度も思い出そうとするけれど、頭の中の何かに阻害され、どうしても思い出せない。
 今はそれでも特に差し支えないけど、早く思い出さなければいけない気がする。
 何かとても大事なことを忘れている気がして……

「ラプちゃん?」
「え? どしたのー、ポニちゃん?」
「それはこっちの台詞だよ。どうしたの? 泣いてるよ?」
「泣いてなんてないよー? …あれ?」
「ほら、やっぱり泣いてるよ? 大丈夫?」

 知らない内に、なぜだか涙が流れていた。
 なんでだろう。別に悲しい事なんて何もないのに。

「おーい、ポニー! …って、どしたの、ラプ!?」
「ううん、多分なんでもないよー?」
「そ、そう? それならいいんだけど……。それよりさ、こんなの見つけたよ」

 ドリちゃんが手に持っていたのは、貝殻でできているらしい鈴。
 とてもきれいな音色を響かせている。

「きれいな音だねー!」
「くぅー! 癒されるねー!」
「……」
「ラプ?」
「え? あ、なんでもないよー。ただ、なんだかすごく懐かしい感じがしたから……」
「……」
「ドリちゃん?」
「…ラプ、これあげるよ」
「えっ? いいのー?」
「いいよいいよ。気にしない気にしない!
 その代わり、何か悩みがあったらすぐあたし達に相談すること! いいね!」
「私もラプちゃんに出来る限り協力するよ!
 焦らないでいいから、ゆっくり思い出していこうね!」
「…うん。ありがとー、二人共」
「どういたしまして。それじゃ、湿っぽい話はここまで!
 ラプも早く貝殻集めしようよー!」
「早くしないと時間無くなっちゃうよっ?」
「…うん。やろうやろうー」

 …私は思った。
 今思い出せなくても、無理に思い出す必要は無い。
 今を楽しみつつ、過去も思い出していければそれでいい。
 それが、どんなに辛い記憶であったとしても。
 みんなと一緒なら、どんな苦悩でも乗り越えていける気がするから……






「…ふぅ」

 乗船手続きも終わり、俺は缶コーヒー片手にのんびりとくつろいでいた。
 …そろそろ乗船1時間前だ。アイツらの様子を見に行こう。


 …………。


 …取りあえず浜辺に来て一言。

「何やってんだ、アイツらは……」

 見ると、海にラプラスが浮かんでいる。
 その背にポニータが乗っている。
 そしてその上をオニドリルが優雅に飛び回っている。
 …端から見ればなんとも平和的な図だが、そんなことはどうでもいい。

「あ、リュウだ……」
「ホントだ。えっとー、どうしよっか?」
「何がー?」

 あちらもこちらの存在に気付いたらしく、こっちに近づいてくる。
 一足先にオニドリルが着陸し、俺の前に辿り着いた。…体中砂だらけで。

「えっと、これは、その……」
「見れば分かる」
「うぅ……」
「取りあえず言う事は?」
「ごめんなさい……」
「センターのシャワールーム借りてくるから、みんなを連れてさっさと準備しろよ」
「はーい」

 まさかここまでコイツらが暴走するとは思ってなかった。
 1時間前に来といて良かったぜ……


 …………。


「お待たせ! さ、早く船乗りに行こ?」
「お前、ホント変わり身早いよな。悪いことじゃないが、少しは気にしろ」
「こ、細かい事は気にしないっ! さ、早く早く!」
「リュウ兄、ホントにごめんなさい……」
「面目ないですー……」
「…もういいよ。それより、腹減ったろ。船に乗る前に何か食べ物買って行くか」

 シャワーを浴びて予備の服に着替えた三人を連れ、乗船準備を着々と進める。
 あと出航まで30分しかない。少し急がなくては。

「…ねぇリュウ」
「なんだ、オニドリル?」
「少し思ったんだけどさ、何でワカバからマサラまで一気に飛ぼうとしなかったの?
 そっちの方が楽なのに」
「…お前、何も知らないんだな」
「へ? 何が?」
「一回やってみりゃいい。痛い目見るだろうよ」
「何ソレ!? どういうこと!?」

 …こいつは知らないみたいだが、ジョウトとカントーの間にはシロガネ山がある。
 そのシロガネ山はただでさえ標高が高い上に、乱気流も発生している。
 故に空を飛んで山を越すなど、危険極まりない行為なのだ。
 事実、あそこでは毎年何人かの人間が空を飛んで山越えしようとし、失敗している。

「ねぇ、なんでなんで?」
「だから行ってみりゃ分かるって」
「…ケチリュウマ」
「言ってろ。…さて、食糧も買ったし、そろそろ乗船するか。みんな、準備はいいか?」
「私はいつでもいいよっ?」
「私も大丈夫ですー」
「それじゃ、レッツゴー!」
「それ、俺の台詞だろ……」

 こんな調子で本当に大丈夫なんだろうか。
 やれやれ、こりゃ先が思いやられるな……

 …そして俺達はまだ何も知らなかった。
 これが全ての幕開けだったという事を……










~あとがき~
どうもこんにちは。ポエルです。懲りずにまた書いてしまいました。すみません。
今回はジョウトからカントーへ向かう途中経過。
それと、ラプラスの事について少し書かせてもらいました。

物語は基本的にカントーを中心に進んでいきますが、ジョウトも一応関係あります。
まだ本編が進んでないのでなんとも言えませんが……

ラプラスは前回でも少し触れたとおり、リュウマに助けられた以前の記憶がありません。
普段はあまりその事について考え込むことはありませんが、今回は場所が場所なので
考え込んでしまい、ポニータとオニドリルに救われる、という設定です。
ですがこの部分、ちょっとグダグダで分かり辛かったかもしれません。ごめんなさい。

…と、解説はこんな感じです。本当は解説なんて無いようにするのがいいんですが……
精進あるのみですね。

ここまで読んでくれた方、本当にありがとうございました!

では、これにて失礼致します。
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