5スレ>>873


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「この道も久しぶりだなぁ……」
 いつもより少しだけゆっくりと歩を進める。
 小さなころから歩きなれた道――1番道路は、記憶と変わらない感触を返してくれた。
「この辺りは来たことないけど、思ったより田舎ねぇ」
 サヤがあたりを見回しながらつぶやく。
「失敬な、自然が豊かだと言え」
「同じことじゃない」
 言葉に反して、サヤの機嫌は上々だ。
 タマムシのような都会で育ったサヤにしてみれば、ちょっとしたハイキング気分なのだろう。
 視線を転じれば、ミルトとファルがルーメにこのあたりの草花を教えていた。
 この辺りはタマムシ近辺では見られない草花も多いため、
 ルーメは文字通り目を輝かせながら講義を受けていた。
 その光景に思わず目を細めた、その時だ。
 3人が覗き込んでいた草むらの奥から、何かがミルトめがけて飛びかかってきた。
「きゃっ!」
 すんでのところで攻撃をかわすミルト。
 標的を失った襲撃者は飛びかかった勢いのまま空へと上がり、
 俺たちの周囲を旋回し始める。
「野生のもえもんか!?」
 襲撃者の正体を見極めようとするが、速すぎる。
 移動方向を予測することでかろうじてその姿を追うことができるが、細部まではわからない。
 翼をもち、空を飛んでいることから鳥萌えもんだということがわかるくらいだ。
 これで不規則な動きをされたら……
「ファル、『ふくがん』でやつの動きは追えるな? 進路上に『しびれごな』だ!」
「まっかせて~」
 ファルの羽ばたきに合わせ、羽からしびれごなが散布されていく。
 散布速度はそれほど速くはないが、ファルには特性『ふくがん』がある。
 『ふくがん』を利用した軌道予測をもとに、
 しびれごなは確実に襲撃者の予想進路上へと散布されていき―――
「あ、あれ~?」
 襲撃者の急速な軌道変更の前に、見事に空振りした。
「なにやってんのよ、もうっ!」
 サヤの悪態の間にも、襲撃者の軌道は不規則になっていく。
 もはや目で追うことすら不可能だ。
 たまにその姿を認識することができるが、その時には攻撃が飛んできている。
 左右からの連撃。左右に注意を払えば背後からの強襲。
 この攻撃パターンは、まさか――
「ミルト、『たつまき』だ。前方180度、薙ぎ払えっ!」
「はいっ!」
 俺の指示に応え、たつまきが吹き荒れる。
 たつまきが収まった後に見えたのは、少しだけ荒れた草むらだけで――
「ここだっ!」
 その景色を確認した瞬間、ミルトの背後の空間へと蹴りを放つ。
 がつり、と鈍い音が響き、
「ずいぶんと手洗い歓迎だな?」
 振りぬく直前で止められた脚、その先へと声をかける。
「……いつ、わかったのです?」
「ついさっきだ。動きが数段速くなってたが、攻撃のパターンが一緒だったからな」
「なるほど。だからあんな見え見えの罠を……」
「引っかかっておいて良く言うよ」
 俺が蹴り足を引くのに合わせて、襲撃者もガードを解く。
「ええ。突破する自信がありましたから」
 ガード――翼の向こうからのぞいたのは、
「相変わらず口の減らない……。ところで、他に言うことは?」
「ああ、そうでした。
 ……お帰りなさい、トウマ。いろんな方々がマサラでお待ちですよ」
「ただいま、レーティ。それじゃ、マサラに急ごうか」
 久しぶりに会う、仲間の笑顔だった。

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「私がいない間に、また厄介事に首を突っ込んでたんですか」
 マサラへの道すがら、レーティに今まであったことを話すと、
 開口一番そんなことを言われた。
「……トウマは相変わらずのようですね。安心しました」
「今の流れだと安心というより呆れられてる気がするんだが?」
「気のせいでは? それにしても、厄介事に関わるたびに仲間が増えますね」
「ああ、そういえばまだ紹介してなかったな。お~い、ガイ」
 真下の地面、正確にはそこに存在する自分の影を足でノックする。
「なんだよ、うるせぇな……。昼間ぐらい寝かせろよ」
「その言葉は幽霊らしくて大いに結構だが、まだ紹介してない仲間がいるんだ。
 ちょっと出てきてくれ」
「はいはいっと……」
 ガイが俺の影からぬるりと出てくる。
「こいつがさっき話したガイだ。ガイ、こいつはレーティ。俺の手持ちの一人だ」
「レーティと申します。先日はトウマがお世話になったようで。
 以後、よろしくお願いします」
「ああ、話には聞いてる。ま、よろしく頼むわ。
 ……ふぁ~あ。よし、あいさつ終わりっと」
 それだけ言うとガイは俺の影へと姿を消す。
「こら、ガイ! ……悪いな。見ての通り、口と態度に難のあるやつでな」
「いえ、中身は悪い人でもなさそうなので。
 それより、ガイさんは本当に半分幽霊なのですか?」
「ああ、外見上は普通のゲンガーにしか見えないけどな」
「そんな人まで仲間にするなんて、
 トウマは時々私の想像を超えたことをしますね」
「それはお互いさまだろう?」
 誇らしげに笑うレーティに、同じ種類の笑みを返す。
「俺たちだって、少し会わない間にお前が進化してるなんて思いもしなかったぞ」
 そう。少し会わない間に、レーティはピジョンへと進化していた。
 それは俺たちと別れた後もレーティが研鑽を積んでいたということの証であり、
 俺にはその努力が何よりも誇らしかった。
「そうですよ!」
 ミルトが喜色満面で賛意を示す。
 少し控え目なところがあるミルトにしては珍しい。
 やはりレーティの努力が実ったのがうれし――
「レーティさんってば、こんなに綺麗になって!」
 ――いわけじゃないのかよ!
「背が伸びてていいな~」
 って、ファル、お前もか。
「まあ、ずいぶん大人っぽくなったしな。無理もないか。なあ、サヤ?」
 後ろを歩くサヤへと話を振る。
「…………」 
「サヤ?」
 返事が無いのを訝しみつつ振りかえると、サヤはやたら真剣な目でレーティを見ていた。
 この様子だと、俺の声など届いていないだろう。
 サヤはしばらくレーティを観察すると、次に自分の体を見下ろし、
「……よしっ」
 なぜか小さくガッツポーズ。そして、
「……何がよしなんだ?」
「へ? あ、な、なんでもないわよ?」
 ようやく俺が見ていることに気付いてくれた。
「なんでもないことはないだろう。睨むみたいにレーティを観察してたみたいだし」
「失礼ね。私なりにレーティの成長度合いを見てたのよ!」
「そうか? それにしては目つきが……」
「そ、う、な、の!」
 サヤの剣幕に押されて一歩下がる。
 同時にできた会話の隙間に、レーティが入り込んできた。
「トウマが気にすることではないですよ。
 いえ、気にしないほうがトウマらしいです」
「おいおい、よけいに気になるだろ」
「ですから気にしないでください。大したことではありませんから。
 ……私にはまだ伸びしろがありますからね」
「……は?」
「なっ」
「おや、もう着いてしまいましたね」
 俺の疑問符と、サヤの絶句。
 それらを涼しげな顔でスルーし、レーティが前を指差す。
 そこにあるのは、懐かしい故郷の姿。
「では、おしゃべりはいったん中断して、楽しい報告会と参りましょうか」



「……こちらの報告は以上です」
 言葉を結び、一息つく。
 レポートそのものはセキチクを出発する前に送信したが、
 それだけでは細かなニュアンスや状況が伝わらない。
 それを補うためにこうして説明をしたのだが、
「……つまり、お前さんはいつも通りじゃったということかの?」
 ……果たしてこれ、必要あったんだろうか?
 あまりにあっさりとしたまとめをされて、そんなことを思う。
「えっと……」
「そういうことに~」
「なるのかしらね」
 ミルト、ファル、サヤが返事を分割する。
 その顔に浮かぶのは苦笑。こいつら……
「では、俺はこのへんで……」
「ああ、待て待て。ちと図鑑を預からせてくれんかの?」
 憮然として席を立った俺を博士が呼び止める。
「わかりました。メンテナンスですか?」
「それもあるが、新しい機能を追加しようと思っての」
「新しい機能? どんなものですか?」
「それはできてのお楽しみじゃ」
 若干怪しげな笑みを浮かべる博士に図鑑を手渡す。
「うむ。では、図鑑をいじるのはやっておくとして……」
 博士が指を鳴らすと、部屋の外から研究員さん達がわらわらと入ってきた。
「え? ちょっと……?」
 疑問符を浮かべる俺たちはあっという間に捕獲され、ずるずると引きずられていく。
 そしてたどり着いた大部屋には
『おかえり&いらっしゃい! データ収集御苦労さまパーティー』
 という横断幕と、大量の飲食物が用意されていた。


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 頬をなでる風が火照った体を冷ましていく。
「やっぱりここはいいな……」
 オーキド研究所の裏手はちょっとした丘になっている。
 程よい日差しと風通しを両立した場所で、昼は子供たちの遊び場として、
 日が落ちてからは天体観測所や夜の散歩コースとして利用されている。
 今は時間の関係か周囲に人気はなく、月と星の明かりが淡く降り注いでいる。
「ここにいたんですか、マスター」
 呼びかける声に振り向けば、蒼い色彩が目に入る。
「ミルトか」
「主賓が抜け出しちゃっていいんですか?」
「……ああなったら主賓とか関係ないだろ」
 夕方から始まったパーティーは最初こそ主目的に沿ったものだったが、
 こういうイベントの性か、夜になる頃にはカオス化してしまった。
 隠し芸大会を始める者、部屋の隅でちびちび飲む者、しこたま飲んで酔い潰れるもの―
 中でもサヤがひどかった。
 絡み酒と泣き上戸の合わせ技で、近くにいた研究員を捕まえて泣きながら愚痴っていた。
 あいつもストレス溜まってるのかなぁ……。
 というか誰だ、あいつに酒を飲ませたのは。一応未成年だろうが。
 俺はといえばカオスに巻き込まれないうちにこっそりと抜け出してきたのだが、
「よくここがわかったな?」
「マスターが行きそうな場所なんて、そうはありませんから」
 夜風に揺れる髪を押えながら、ミルトが隣に腰を下ろす。
 新たな風が生まれ、ふわりといいにおいがした。
「まあ、昔はよくここに来てたしな」
 俺達も昔はよくここを遊び場にしていた。
 鬼ごっこやかくれんぼ、木のぼり……ここにはたくさんの思い出がある。
 初めて殴り合いのケンカをしたのもこの場所だった。
 あの時はミルトを助けるつもりだったのにぼこぼこにされて、
 半泣きになったミルトに逆に助けられたっけ。
 そういえば、怒ったミルトを見たのはあの時が初めてだったな……
 脳裏に浮かぶのは、『暴走』状態になったミルトの姿。
 同じ怒りの感情のはずなのに、その発露がずいぶん違う形になってしまっている。
 なんとかしなければ――
「どうしました? マスター? 私の顔に何かついてますか?」
「……いや、なんでもない」
 いつの間にか見つめていた横顔から視線をはがし、空を見る。
 明日には博士からラムの実の解析結果が聞ける。
 そうすればきっと対策を見つけることもできるはず。
「……? 変なマスター」
 ミルトが小さく笑う気配を感じながら、俺は内心の不安と焦りを押し殺していた。
 

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あとがき

 お久しぶりです、白です。
 なんだかもう存在すら忘れられてる気がするのですが、本編の続きをお送りします。
 投稿感覚がものすごく空いてしまってすみません。
 言い訳をさせていただくと、この春から生活環境が変わりまして、
 以前のようには書けなくなってしまいました。
 以前から執筆速度の遅さが問題になっていた白ですが、
 今後はさらに皆さんをお待たせすることになりそうで、本当に申し訳ないです。
 頑張って書きますので、どうか見捨てないでやってください。

 さて、本編ですが、マサラに帰ってきました。
 ここから終盤に向けて物語が展開していきます。
 結局『暴走』はどうなるのか?
 そもそもどんなオチをつけるつもりなのか?
 そのあたりを楽しみにしていただければと思います。
 今回も前後編になってしまいました。
 一気に書けないヘタレですみません。もしかしたら中編も挟むかも……?
 では、次回のあとがきでお会いしましょう。
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