5スレ>>887-2


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「…あ、そうそう! リュウマさん…で間違いないですよね……?」
「ん? あぁ、リュウマで間違いないが?」
「私、あなたを探してる人に会ったの!」
「本当か!?」
「うん。つ…付いて来てくれる……?」
「おう!」

 ここでまさかの手持ち情報ゲット!
 これでもう見つかったも同然、一安心。ラピに感謝感謝。
 ただ、あいつらが無駄にそこらじゅう駆け回ってなければいいのだが……

「良かったね、リュウマ」
「あぁ、ホントに助かったよ。ありがとな、二人とも」
「「どういたしまして!」」

 二人は声が揃ったのに少し驚き、互いに笑い合った。
 その光景がとても微笑ましく、ついつられて俺も頬が緩んでしまう。

「二人とも、本当に仲がいいんだな」
「そう? まぁ、ラピとはけっこう長い付き合いだしね」
「もう! そこは素直にうんって言うとこでしょブイブイ!」
「え? あ、うん。…それで、なんで怒ってるのさ?」
「え、あ…な、なんでもないって!」
「……? それならいいんだけど……」

 …この鈍感っぷり、ある意味相当重症だろう。
 果たしてブイゼルがラピの想いに気付く日は来るのだろうか……
 …と、下らない事を考えていた時だった。

「がぁっ!」
「リュウマ!?」

 突然背中に強い衝撃が走って視界が青空に変わったと思うと、
 俺は勢いよくヘッドスライディングするような体勢で吹っ飛んだ。
 傍から見たら、急加速して綺麗なフォームで飛んでいく変な人に見えたに違いない。

「いっててて……」
「リュウマ、大丈夫?」
「あぁ、なんとかな……」

 ブイゼルの手を借り、痛む背中をなだめつつ起き上がる。
 先程俺がいた場所を見ると、複数の岩が転がっていた。
 そしてその奥に見える茂みからは何者かの高笑い。
 こんな事をするのは……

「はっはっはー! どうだ人間めー! あたちの力を思い知ったかぁー!」

 …やはり先程のイシツブテであった。
 どうやら一眠りさせられてもまだ懲りてなかったらしい。

「いきなり何するんだよ!」
「よそ見してる方がわるいんだよぉー」
「くっ……!」

 確かにイシツブテの意見はもっともだが、いきなり岩を投げてくる方もどうかと思う。
 そしてその不意打ちを見て怒りをあらわにするブイゼル。
 今にも電光石火を放ちそうな気迫である。

「今日という今日は絶対に許さない!」
「これまであたちに勝てた事ないくせにぃー。それっ!」
「なんのっ!」

 イシツブテが岩を投げるのと同時に、ブイゼルが電光石火で攻撃を仕掛ける。
 先程と同様、ヒットアンドアウェイの繰り返しだ。
 しかしこれでは埒が明かない。それは戦っている本人も分かっている事だろう。
 何か打開策はないものか、と考えていると……

「リュ…リュウマさん、わ、私リュウマさんの手持ちのみんな呼んでくる!」
「お、その手があったか。分かった。よろしく頼む」
「は、はいっ!」

 …その手があったのをすっかり忘れていた。
 手持ちの皆を呼んでくれば、あの強情なイシツブテも観念して帰ってくれるはず。
 そう頭の中で策を確立し、ラピを見送る……が。

「くらえぃ!」
「そんなの当たらないよ!」
「…マズい!」

 イシツブテが投げた岩の流れ弾がラピをめがけて飛んできた。
 これは確実に直撃コース。飛行タイプがこれを受けたらただでは済まないだろう。
 更に不運なことに、ラピは後ろを向いているのでその事に全く気付いていない。
 無防備な状態で食らう事になるので、ダメージは計り知れない。
 俺はそれに気付いてすぐに駆け出したのだが……ダメだ。間に合わない!

「ラピ! 伏せろ!」
「えっ…きゃあっ!」

 イシツブテの投げた岩が放物線を描き、ラピに向かって落ちていく。
 俺の努力もむなしく、それはラピに命中……するはずだった。

「なっ……!」

 一瞬青い光が横切ったと思ったら、ラピに命中するはずの岩が消えていた。
 このどこかで見覚えのある光は、まさか……

「ふぅ……間に合ったみたいですね」
「ハクリュー! 助かった!」
「はい。リュウマさんもご無事で何よりです」

 …やはり今のはハクリューの竜の波動だったようだ。
 昨日の温泉騒ぎでのインパクトが強かったため、忘れように忘れられない……
 …まぁそれはともかく、ハクリューの参戦により、負ける要素は微塵もなくなった。
 これで俺達の勝利……と思ったのだが。

「…あれ? イッシー?」
「あ、リューちゃん。何やってるのぉ?」
「え? ハクリュー、お前こいつと知り合いなのか?」
「知り合いも何も。彼女は私の友人です」
「そうだったのか……」

 …ここでまさかの友人発言。こんなの全く想定外だ。
 でも、これで争う理由はなくなったし、結果オーライだろう。
 …しかし。

「たとえリュウマの仲間の友人でも、僕は許したわけじゃない!」
「ちょ…ちょっとブイブイ、落ち着いてよ!」
「落ち着いてる!」
「落ち着いてないよ!」

 …まぁ、やっぱこうなるよな。これまで一度も勝てた事がない相手なら尚更である。
 俺だってそんな理由で負け越しの相手と和解しろと言われても納得しないだろう。
 だが、そうも言っていられないので"アレ"を使う。

「なぁブイゼル、今回はコレあげるからさ、見逃してやってくれないか?」
「……!」

 俺が差し出したのは先程もブイゼルに渡したオボンの実。
 残りの三つを全て渡して和解を試みてみる。
 先程もっと欲しそうな顔をしいてたから、多分食いついてくれるとは思うが……

「…わ、分かったよ。今回だけだからね」
「サンキュ。そうしてもらうと助かる」

 餌付け…いや、和解成功。なんとか丸く収まった。
 だが、このままの関係だと今後がまだ心配だ。
 何か対策を打っておかなければ……と思っていた矢先。

「イッシー、あなたまた悪戯してたんでしょ」
「うっ……!」
「そんな事ばかりしてるなら、私ももうあなたの側から離れます」
「ま…待って! 違うのぉ! お願いだから見捨てないでリューちゃん!」
「それじゃあ相手にちゃんと謝って。それからもうしないって約束して」
「わ、分かったよぉ……」

 どうやら向こうは向こうでハクリューがイシツブテに灸を据えてくれているようだ。
 こちらもこちらで落ち着いたし、これでもう同じような事は起こらないだろう。
 そして一通り話が終わり、ハクリューとイシツブテがこちらにやって来る。

「ごめんねブイゼル君。実はこの子、ご両親がいなくて生活が苦しいの。
 だから色々迷惑かけちゃったかもしれないけど、許してあげてくれないかな?」
「…そうだったんだ。君も一人だったんだ」
「べ、別にあたちは一人でも……」
「大丈夫じゃなかったから迷惑をかけたんでしょ? ほら、ちゃんと謝りなさい」
「うぅ……ご、ごめんなさい……」

 イシツブテの素直な謝罪に驚き、少し考え込むブイゼル。
 そして、彼がイシツブテに返した言葉は……

「許さない」
「え……?」
「ブイブイ!?」
「さっきも言ったでしょ? 絶対に許さないって」
「だからって、それはないよ!」
「ちょっとラピは黙ってて」
「むぅ……」

 彼の真剣なまなざしに、従わざるを得ないラピ。
 多分ああなったブイゼルは止められないと分かっていて黙ったのだろう。
 そして再びブイゼルはイシツブテの方を向き、話を続ける。

「…さっきも言った通り、許さない。だから、いつかリベンジさせてもらうよ」
「リベンジ……?」
「そう。僕が勝つまで付き合ってもらう。嫌とは言わせない」
「な、なぁんだ。そういう事ならあたちだって手加減しないよぉ?」
「臨むところ。こっちも本気でいくよ」
「かかって来なさぁい!」
「もちろん、今じゃないけどね」
「がくっ」

 …一時はどうなるかと思ったが、これにて一件落着の様子。
 もう以前のようなカリカリとした雰囲気はない。
 これで本当に一安心……と思ったが、大事なことを忘れていた。

「そうだハクリュー、ポニータ達は?」
「あ、はい。今呼びますね」
「へ? うおっ!」

 そう言い終わるや否や、空に向かって竜の波動を放つハクリュー。
 するとその何秒かした後……

「…ューウ兄ぃぃー!」
「ぐはっ!」

 背後から何か聞こえたと思うと、突然背中に走る強烈な衝撃。
 まぁ、犯人は言うまでもなくポニータであるのは明白だ。

「探したんだからっ! 本当に探したんだからぁっ!」
「あいてて……探した? お前の聴力ならすぐに見つけられたんじゃないのか?」
「見つからなかったから心配したんだよっ! うわあぁぁん!」
「……? まぁいいか。最終的に見つかったんだしな。心配かけて悪かった」

 ちなみにポニータは、ずば抜けて聴力がいい。
 普通このような環境ならば何キロか先の音や会話も聞き取れる。
 が、今日は多分調子が悪かったのだろう。実際そういう日もあるようだし。

 …胸元で泣きじゃくるポニータをなだめつつ、ハクリューと話を続ける。

「それでハクリュー、実は俺、記憶が飛んでどうしてこうなったか全く覚えてないんだ」
「えぇ!? 大丈夫なのですか?」
「あー、まぁ取りあえずは。それで、一体全体どういう事なんだ?」
「…はい。それについては一言で言うと、事故ですね」
「そうだろうとは思ってた。で、クウとオニドリルの様子は?」
「今はフスベのセンターで治療中です。彼女達も無傷では済まなかったので」
「そうか。それじゃ、すぐそっちに向かおうか」
「はい!」

 一通り今後の方針を決め、ブイゼル達の方に向き直る。
 短い付き合いだったとはいえ世話になったのだから、きちんと礼を言わなくては。

「…それじゃ、俺達はこの辺で。ホントにありがとな。助かった」
「ううん。こちらこそ色々学ばせてもらったよ。ありがとう」
「ラピもイシツブテも、またな。仲良くやれよ?」
「「はーい!」」
「じゃ、また来るよ。元気で……」
「あ…ねぇ、リュウマ」
「ん? なんだ?」

 丁度出発しようとしたところ、またしもブイゼルに引き止められた。
 今日これで何度目だろうとか思いつつ、ブイゼルの呼び掛けに足を止める。

「えっと、あのさ……ううん、なんでもない。また来てよね」
「あぁ。今度来る時はまた何か木の実持って来てやるよ」
「うん。楽しみにしてる」
「おう! そんじゃ、またな」
「ま、またね」

 …何か言いたそうな様子だったが、一体何を言いたかったのだろう。
 少し気になったが、それはまた今度来た時に聞く事にする。
 そうして俺達三人は再びフスベシティへと向かうのだった。
 …向かうのだったが。

「…なぁポニータ、いつまで俺にくっついてるつもりだ?」
「……」
「ポニータ…って、寝てるよオイ……」
「安心して眠くなっちゃったんですかね?」
「勘弁してくれよ……。ハクリュー、ボールは持ってきてないか?」
「すみません。忘れてきてしまいました……」
「そっか……じゃあ仕方ない。背負って行くか」


 …………。


 …ブイゼル達と別れて数分後、俺達一行はフスベシティに到着した。
 そして着いて早々センターへ向かうと、そこには見慣れた少女の姿が。

「リュウマさーん」
「お、ラプラス。すまないな。色々迷惑かけちまったみたいで」
「いえいえー。無事で何よりですー」
「あぁ。ありがとな。…それで、クウとオニドリルは?」
「はいー。こっちですー」

 立ち話もほどほどに、ラプラスに先導されてセンターに入る。
 いつもなら入ってすぐ横の腰掛けに皆集まっているはずなのだが……誰もいない。

「こっちですよー」
「そっちって……個室か?」

 どういうわけか今日ここに泊まる予定はないのだが、個室を借りているらしい。
 もしかすると二人とも結構なケガをして寝込んでいるのかもしれない。
 そう考えると急に心配になり、速足で個室へ向かう。
 そしてその個室の扉を開くと、そこには……

「zzz……」
「……」

 …だらしない格好でベッドで寝ているオニドリルが二人。
 彼女らの体に怪我といった怪我は特に見当たらない。
 即座にどういう事かラプラスに問おうとし、慌ててラプラスが説明する。

「えーっと、これは今日一日は安静にしてろと言われてですねー……」
「なんだ、そういう事か……。まぁ取りあえず、大したケガもなくて一安心だな」
「はいー」

 なんだか心配して損したような気分だが、とにかく大事に至らなくて良かった。
 安心したついでに、背中で寝ているポニータも二人の寝ているベッドに降ろす。
 別に重いと言っているワケではないが、流石に背負いっぱなしもキツいしな。
 そして今日は仕方ないのでここで一泊せざるを得ないのだが、さて、どうした事やら。
 …と、今後の予定を考えていると、一人個室の外へ向かうハクリュー。

「…それでは、私はこれにて失礼しますね」
「え? 失礼するって、どこに行くんだ?」
「あ…ごめんなさい! 記憶をなくされてたのですよね。失礼しました」
「あー、ごめんな。どうにも思い出せなくてさ」
「いえ、事故なら仕方がありません。ではもう一度お伝えします」

 忘れてしまった俺のために嫌な顔一つせず、もう一度教えてくれるハクリュー。
 他の手持ち達なら確実に「えー」とか「めんどくさーい」などと言うだろう。
 そういった意味では、本当にこの子を仲間にして良かったと思う……が。

「私、リュウマさんの手持ちから外れます」
「…へ?」
「どうしてもこちらで手放せない用事ができてしまったので、申し訳ありませんが……」
「あ…あぁ、そうなのか……。分かった。それなら仕方ないよな……ハハ」

 …きっと親友に裏切られた時やフラれた時の気持ちってこんな感じなのだろう。
 それくらいハクリューがパーティーから外れるのはショックだった。
 せっかく俺の苦労を分かち合ってくれる仲間ができたと思ってたのに……

「あ、ですがポケギアで呼び出してもらえればいつでも駆け付けますので」
「え? ポケギア…って!」

 そう言ってハクリューが見せてくれたのは、どこか見覚えのある羽根型の小さな機械。
 見た瞬間犯人は分かったが、当の本人は寝ているので後ほどまた問い詰めるとする。

「…ではそろそろ失礼しますね。本当にごめんなさい」
「あぁ、気にしなくてもいいよ。それじゃ、またな」
「はい。それではまた」
「元気でねー」
「ラプラスも元気でね」

 ハクリューは扉の前で俺達に一礼し、部屋を出て行った。
 正直こんなに早く手持ちから離れるとは思ってなかったが……仕方ないか。
 無理させてまで来てもらうわけにもいかないし。

「…じゃ、この際だ。俺達もゆっくり休むとしよう」
「はーい」

 …というワケで、結局俺達はセンターで一晩暇をもてあそぶ事となった。
 本来の旅路からかなり逸脱してしまったが、まぁたまには道草もいいだろう。
 何事も予定通りいくとは限らないし。焦っても失敗するだけだ。
 …そう開き直りつつ、再度俺は惰眠をむさぼるのであった。


 …………。


「リュウ兄ー! 朝だよっ! おっきろー!」
「え…朝? マジで!?」

 ポニータに毛布を剥ぎ取られた事などお構いなしに、慌ててベッドから飛び起きる。
 しかし窓越しに外を見ると、空は茜色に染まり、カラスが数匹羽ばたいて鳴いていた。
 おまけに町中では子供達がわいわい騒いで遊んでいるではないか。

「…朝にしては随分賑やかだなぁ、ポニータ?」
「あはは……こうでもしないと目が覚めないかなぁーって思ってさ!」
「いやそんな事しなくとも……はぁ、まぁいいか。で、何かあったのか?」
「あ、うん。ちょっとこっち来てっ!」
「お、おい!」

 有無を言わさず強引に手を取り引っ張るポニータ。
 そのまま俺はセンターのエントランスまで引きずり出された。
 するとそこにいたのは安静にしていなければならないはずのオニドリル。
 今度は一体何を企んでいるのやら……

「ドリちゃーん、連れて来たよっ!」
「ご苦労ご苦労」
「ご苦労って……寝てろよ怪我人」
「だって暇なんだもーん。もう怪我もなんともないし!」
「そういう問題じゃないっての。いいから寝とけ」
「ふーん……そんな事言ってもいいのー?」

 あー、こりゃ確実に何か企んでる時の目だ。
 こうなるとただでは部屋に戻ってくれないだろう。
 仕方がないので、今回は素直に聞いてやる事にする。
 記憶がないとは言え、墜ちた原因が俺かもしれないから逆らえないというのもあるが。

「…分かった分かった。話だけは聞いてやる」
「よし! そうこなくっちゃ! じゃ、ラプー、よろしくー!」
「はーい」

 オニドリルの合図で待ってましたとばかりに外からラプラスが入ってくる。
 …人の背ほどの高さがある謎の歩く雪ダルマを引き連れて。

「…これは?」
「それを当てるのが今日のクイズ! 制限時間は一分! はいスタート!」
「いやオニドリル、クイズとかいいから早く中のやつ出してやれ。凍え死ぬぞ」
「えー!?」

 せっかく経験者の俺が忠告してやっているのにこの反応である。
 こいつは死人が出てからでないと危険だというのが分からないのだろうか。
 …そうこうしている内に、その雪ダルマは力尽きたのか、ぼてっと倒れてしまった。

「わっ! ちょっと、大丈夫!?」
「ほら言わんこっちゃない。早く出してやれ。ポニ……いや、やっぱ俺がやる」

 ポニータに頼もうとしたが、さすがに室内で火を使うのは危ない。
 それに中のやつも下手をすれば火ダルマになりかねないし……
 …とか思いつつ雪ダルマを崩していくと、そこには見覚えのある萌えもんの姿が。

「…って、ブイゼル!? 大丈夫か!?」
「ゲホゲホッ……あ、リュウマ? 僕ならなんとか大丈夫。それより……」
「あぁ、分かってる。ラプラス、オニドリルを氷漬けにしてでも部屋へ連行!」
「え? そういう意味じゃ……」
「はーい。ふふふ……」
「ちょ、ちょっとラプ? 目が怖いよ? ま、待って! こっち来な…いやあぁぁ!!」


 …………。


「…さて、これで邪魔者はいなくなったな」
「むごいね……」

 さすがに今回の悪戯は度が過ぎた。下手をすれば大事故になっていたろうに。
 故にあいつにはこれくらいお仕置して分らせておかねばなるまい。
 これでも軽いくらいだが、やり過ぎても可哀相だし、一応怪我人だしな。

「ごめんな、あのバカが変な事して」
「ううん、もう大丈夫。それに騙される僕もまだまだ未熟だし……」
「いやいや、どう考えても悪いのはオニドリルだから。な、ポニータ」
「うん。今回のはちょっとやり過ぎだったね……。ごめんねブイゼル君」

 この様子だと、今回ポニータはあまりこの騒ぎに関与していないらしい。
 この子だけでもまともな思考を持った子がいて本当に良かった……

「じゃ、あいつは後で俺がきっちりシメとくからさ、安心して帰るといい」
「え? あ…うん。冗談だったんだよね……」
「ん? 何がだ?」
「う…ううん、なんでもない。それじゃ……!?」

 何か言いたそうなまま帰るブイゼルだったが、ポニータがそれを止める。
 彼女の目は真剣そのもので、何かをブイゼルに語りかけているかのようだった。
 するとその目に感化されたのか、やがてブイゼルは再びこちらに向き直る。
 そして、意を決した表情で話し始めた。

「…あのさ、リュウマ」
「お、なんだ? 急に改まって?」
「実はさ、僕……」
「実は?」
「…僕、君と一緒に旅がしてみたい。だから、僕を君の仲間にしてくれないかな?」
「え……」
「よしっ! 合格だよブイブイ! これからよろしくねっ!」
「……」

 俺の返事も待たずにサムズアップのポーズでブイゼルを歓迎するポニータ。
 ホントこいつの先走り癖はどうにかならないものか……
 でもブイゼルがここに来た時点でこうなるのは大体予想出来てたし、まぁいいだろう。

「…本当?」
「あぁ、本当だ」
「今度こそ冗談じゃない?」
「冗談はこれまで誰かさんに嫌ってほど聞かされてきたから嫌いだ」
「う、うん……」

 何の試練だかは知らないが、取りあえず合格したと伝えると黙ってしまうブイゼル。
 特に思い当たる節はないのだが、何か悪い事でも言ってしまったのだろうか?

「…ブイゼル?」
「あ、ごめん。何か夢を見てるみたいでさ、実感がないんだ」
「夢なんかじゃないって。なんなら、一発デコピン入れてやろうか?」
「う…ううん、それは遠慮しとくよ」

 そこまで仲間になれたのが嬉しかったのだろうか……と思ったが、
 これまで彼は一人で生きてきたのだし、これが当然の反応なのかもしれない。
 だから、俺はこれからブイゼルに仲間と共に生きる喜びを教なくてはならない。
 それが俺にしてやれる彼への最善の行いであり、義務である。そう思った。

「…じゃ、改めてこれからよろしくな、ブイゼル」
「うん。こちらこそよろしく、リュウマ、ポニータ」
「うん! 今日からよろしくねっ!」

 …こうしてまた一人新しい仲間を迎えた俺達一行。
 まだ旅に出て数日しか経っていないが、かなり内容の濃い旅路だと思う。
 まぁ、これからも多分こんな事がたくさん起こるのだろうが。
 …取りあえず、もういい加減道草とかしないで普通に旅がしたい。
 それが、まだまだ続くであろう旅に向けて俺が願う事である。










~あとがき~
こんにちは、ポエルです。
前編と後編の2部に分けるとか言いながらこの有様です。ごめんなさい。
次はもっと短く纏められるよう努力します。多分。

…さて、今回は新入りブイゼルが仲間入りするまでの経緯を書かせてもらいました。
彼は幼い頃に両親を失い、生きる知識を教わらないまま取り残されたという設定ですが、
その知識の半分程度はラピに、その他は自力で習得してしまったという頭の良い子です。
それ故に普段は冷静で何事にも動じない大人しい性格ですが、もちろん欠点もあります。
ラピとしか関わりを持たなかったという時点で大体目星はつくとは思いますが……

では、いつもながらこのような作品を見ていただきありがとうございました!
今後もペースはともかく頑張りますのでよろしくお願いしますっ!
ツールボックス

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