5スレ>>889-5


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sweet hideout 1-4a アルティナルート


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【カイナ】
「……アルティナの仕事、興味あるな」
 
【アルティナ】
「え……わ、私の仕事……?」
 
先程から悲しそうに何か考え事をして俯いていたアルティナが
ピクンと肩を震わせ、下に向けていた顔を上げ、
問いかけながら俺の方に視線を向ける。
 
【ゴル姉】
「そっか。それならここで一旦別れて、
それぞれの仕事の報告をして
またここに集合するって感じやね」
 
【アルティナ】
「ちょ、ちょっとゴル姉!?
そんな急に言われても……私……」
 
決断の早いゴル姉は、これからの行動を纏め上げる。
 
一方、アルティナはそのことを想定していなかったのか
しどろもどろになってしまう。
 
【カイナ】
「……もしかして、迷惑だったか?
それだったらゴル姉に頼むか、自分なりに仕事を
探してみるつもりだけど……」
 
バイトの経験はある。職を探すのには慣れているから
ここまで親切にしてくれた二人の手を煩わせまいとして、
俺は発言をした。
 
【アルティナ】
「そ、そうじゃない……! そうじゃなくて、
わ、私……誰かに仕事を紹介するなんて、したこと……」
 
【ゴル姉】
「えぇやんか、カイナもこの世界は初めて。
アルもそんな経験するのも初めてなんや。
初めて同士で色んな発見あって、楽しいで?」
 
【アルティナ】
「そ、そういうものなの……? ……うーん、でも……」
 
アルティナが悩んでいると、ゴル姉は笑いながら
ひらひらと手を振って、歩いていってしまう。
 
【ゴル姉】
「難しく考えんでもえぇんやー。
早く仕事場案内してやりぃー。
リプラさんも心配しとるでぇーー!」
 
遠ざかる姿と共にゴル姉の声もフェードアウトしていく。
 
そして、道の突き当たりにある曲がり角を境に
ゴル姉の姿は完全に見えなくなってしまった。
 
【アルティナ】
「……もう! ゴル姉ったら……
いつも勝手に決めちゃうんだから……」
 
【カイナ】
「結構強引な人なんだな……」
 
【アルティナ】
「……」
 
【カイナ】
「……」
 
【アルティナ】
「…………」
 
【カイナ】
「…………」
 
【アルティナ】
「……………………」
 
【カイナ】
(き、気まずい……気まずすぎる……
な、何か話題を振らないと……)
 
【カイナ】
「と、ところでさ……! アルティナの仕事先って
何処にあるんだ? ここから遠いのか?」
 
【アルティナ】
「……ううん、そこよ。
看板が置いてある建物……」
 
【カイナ】
「へ? それって……目の前にある看板のこと……?」
 
石造りの建物の玄関らしきドアの横に掛けられている看板、
どうやらここがアルティナの仕事場らしい。
 
看板をよく見ると、なにやら文字が書かれている。
 
それは俺の元いた世界とは全く異なる文字をしていて
読むのにも一々アルティナに聞いたり、
学ばなくてはならないのかと思い、くらっとしてしまう。
 
【カイナ】
「……ん? あれ? こんな字見たこと無いはずなのに、
意味は分かる……」
 
頭の中ではその文字の意味が当たり前のように構成されて
理解へと繋がっていく。
 
【カイナ】
「えっと……『毒消しや火傷、麻痺はもちろん、
仕事の為のオレンエキス100%と眠気覚まし、
観光の方への夜のお供、滋養強壮ヒメリドリンクは如何?』」
 
【カイナ】
「………なんだこれ?」
 
【アルティナ】
「あぁもう……リプラさんったら、また変な宣伝書き込んで……」
 
最初の方のキャッチフレーズはもっともといった感じのものだが、
最後の方のフレーズは胡散臭さが立ち込めるような文章だった。
 
アルティナは頭を押さえながら、深く溜め息をこぼす。
 
どうやらリプラという人がこういったことをするのは
初めてじゃなくて、その度にアルティナは
こんな溜め息をしているのだろうか?
 
【カイナ】
「ず、随分ユニークな人なんだな、リプラさんって……」
 
【アルティナ】
「ユニークで留まるなら可愛いものね……
長いこと一緒に仕事をさせてもらってるけど、
あの人の性格だけは未だに掴めないわ……」
 
【カイナ】
「な、なんか微妙に怖くなってきたぞ?
本当に俺、ここでやってけるかな……?」
 
【アルティナ】
「その点は問題ないわよ、変な人だけど
悪い人ではないから……」
 
【アルティナ】
「ただ、私が心配なのは貴方の方ね……」
 
【カイナ】
「え? 俺が心配……?」
 
困り顔をしていたアルティナの顔がきゅっと引き締まり、
俺の方へずいっと突き出してくる。
 
【アルティナ】
「貴方……家族が心配してないなんて
さっきは言っていたけど、本当にそうなの?」
 
【アルティナ】
「私達を心配させないように強がっていたなら……
帰りたいって気持ちを隠そうとしてるなら、
そんな強がりは……」
 
【カイナ】
「……俺、家族から離れるために慰安旅行に参加したんだ」
 
【アルティナ】
「!」
 
【カイナ】
「……さっきの発言はちょっと雑すぎだったよ。ごめん……」
 
【カイナ】
「でも、少しの間ここにいるっていう
我が儘に付き合ってくれないか?」
 
【アルティナ】
「…………」
 
触れてはならないものに触れてしまったという表情で
アルティナはしばし考え込む。
 
そして、何か答えに行き着いたのか真剣な表情に戻る。
 
【アルティナ】
「仕事をするからには中途半端な扱いはしないわよ!
ビシバシしごいてあげるんだから、覚悟しなさいよ!!」
 
【カイナ】
「お、おう……! 分かった……」
 
【アルティナ】
「覇気が足りない!! もっと気持ちを込めて!!」
 
【カイナ】
「う、うぃっす!!」
 
アルティナの一喝で、直立不動の体勢になる。
 
バイトでも、こんなスポ魂風の面接はしたことがないので
妙に声を上ずらせてしまう。
 
仕事を率先して案内してくれるということは
さっきの家族の話は不問にして
この世界で少しの間頑張れということを
暗示しているんだろう。
 
【アルティナ】
「よろしい、じゃあこれから店に入って
リプラさんへの挨拶と面接、
お店の内装や薬の種類について説明するわよ」
 
そう言いながらアルティナは店の中へと歩いていく、
俺はハッとしながら小走りにその後をついていった。


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【カイナ】
「す、すげぇ……」
 
店に入った途端、自然とそんな言葉が出てしまう。
 
白く塗られた内壁が明るい雰囲気を作り出し、
ガラスのブースケースには整然と薬品のボトルが
並べられている。
 
カウンターらしき台には天秤や顕微鏡が置かれていて、
電気機械を扱わない世界としては
機材も設備も整っていると思える。
 
【アルティナ】
「ふふ、すごいでしょう?
この薬は地域各所で手に入る木の実や薬草を
粉状にして保冷して、保存状態を良くしてるのよ」
 
【カイナ】
「……これ、全部アルティナ達がやったのか……?」
 
【アルティナ】
「うん、店員は私だけだからリプラさんと二人でやったわ。
ちょっと時間は掛かったけどね」
 
【???】
「でもぉ~、アルちゃんは~、真面目だから~、
整理も仕事の速さもぉ~、凄いのよぉ~」
 
【カイナ】
「うおっ!?」
 
急に背後から声がする。
 
なんとも気の抜けそうなほど
のんびりとした口調で、
気配を全く感じなかったため驚いてしまう。
 
振り向くと一人の女性が
こちらを笑顔で迎えていた。
 
【アルティナ】
「只今戻りました、リプラさん……
収穫予定数の実が採れましたよ。
余裕を持って少し多めに採取したので遅れましたけど……」
 
アルティナはそう言って、茶色の貫頭衣を着ていて
眼鏡を掛けた女性にさっきの冷凍した木の実が入っている
麻袋を手渡した。
 
【リプラ】
「あらぁ~、こんなに採れたんだぁ~。
ありがとうね~アルちゃん♪」
 
にこにこ顔で麻袋から木の実を取り出して
種類分けをしている『リプラ』と呼ばれた女性。
この人がアルティナの店長さんみたいだ。
 
【アルティナ】
「折角だから木の実を薬剤加工していこうと思いましたが……
どうやら仕事が一つ増えたようです。
看板の文字の訂正という仕事が……」
 
アルティナ表情がまた黒くなる。
これはさっきの看板のキャッチフレーズに対しての
抗議の表情のみたいだ。
 
【リプラ】
「えぇ~? 私~何か変なこと書いたかしら~?」
 
【アルティナ】
「町の皆はもういつものことだって割り切ってるけど、
この間、観光に来たお客さんが遠巻きにこの店を
苦笑いしていたんですよ!?」
 
【リプラ】
「でもぉ~結局は買っていったのよ~?
あの夫婦さん~。
ヒメリドリンクを二つも~」
 
【アルティナ】
「偶々相手が寛容だったからじゃないですか!
買う時だけでも顔を真っ赤にしていたのに、
リプラさん、更に追い打ち掛けたりして……!」
 
【リプラ】
「ふえぇ~アルちゃんがいじめる~。
誰か助けてぇ~」
 
【アルティナ】
「いじめてなどいません! 説教をしているんです!!
大体、リプラさんはいつもいつも私の話を
ふざけて聞いて……くどくど……」
 
半泣き状態のリプラさん、目を尖らせて叱るアルティナ。
 
この構図はまるで、悪戯をした子供が母親に叱られる
シーンを再現したようだった。
 
【カイナ】
(どっちが店長なんだか……)
 
【リプラ】
「ところでぇ~君は誰なの~?
オスのグラエナ君なんて~この辺にはいないはずよ~?」
 
【カイナ】
「ぼ、僕ですか……!? えっと……い、いや、その……」
 
脈絡もなくリプラさんから俺に対する質問が出る。
 
いくつか受け答えを考えていたはずなのに、
驚いて言葉を詰まらせてしまう。
 
【アルティナ】
「リプラさん、私が説明します。
彼、ちょっとテンパってるみたいなので」
 
俺の情けない姿を見るに見兼ねてか、
アルティナが助け舟を出してくれる。
 
【リプラ】
「きゃぁ~。アルちゃんが『テンパってる』ですってぇ~♪
俗っぽい~♪」
 
【アルティナ】
「茶々をいれないで真面目に聞いてください!!」
 
……ははは、本当に変わってるなぁ。この人……
 

 
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【アルティナ】
「という訳で……彼に少しの間仕事をさせて欲しいんです」
 
アルティナはこれまでのいきさつをリプラさんに伝える。
 
話の流れで分かったけど、どうやらリプラさんは
俺に起こった不可解な現象については心当たりがないようだ。
 
アルティナもそのことに少し気を落としていたけど
気にしてばかりではいられないので、
打開策として俺が働けるようにと相談してくれてる。
 
【リプラ】
「うふふ~、是非働いてよぉ~カイナ君♪
だってぇ~アルちゃんのお友達でしょぉ~?
私もお友達になりたい~♪」
 
【カイナ】
「あ……有難う御座います……えっと、店長……」
 
【リプラ】
「いやいやぁ~そんな呼び方~。
リプラちゃんって呼んでぇ~!」
 
【カイナ】
「い、いや……それはちょっと……」
 
体をぶんぶんと振って呼び方に抗議してくるリプラさん、
バイトの経験で、上下関係を気にする俺としては
このやり取りは少々困ってしまう。
 
むぎゅっ!!
 
【カイナ】
「いてっ!?」
 
背中に痛みが走る。
 
周りを見ると、俺の横にはジト目で
背中をつねってくるアルティナがいた。
 
【アルティナ】
(ちょっと、何どもってるのよ!?
話が全然進んでないじゃない!!)
 
【カイナ】
(し、仕方ないだろ!?
俺、こういうくだけたタイプの店長に会ったことないんだよ!)
 
【リプラ】
「あっるぇ~? ヒソヒソ話なんかしちゃって~仲がいいのね~♪
もしかして、友達じゃなくて恋人同士なのぉ~?」
 
【カイナとアルティナ】
「ち、違いますよ!! そんなんじゃ……」
 
【カイナとアルティナ】
「えっ!?」
 
リプラさんの言葉に反応して否定しようとしたら
アルティナと同じタイミングで同じセリフを言ってしまった。
 
【リプラ】
「すごいわぁ~。息がピッタリねぇ~♪
これくらい仲がいいんだったら、
安心してお仕事を任せられるわぁ~♪」
 
【カイナ】
「………………」
 
【アルティナ】
「………………」
 
気恥ずかしさで言葉がそれ以上出ず、
俺とアルティナは顔を真っ赤にして俯き
そしてリプラさんに気付かれないようアイコンタクトをする。
 
【カイナ】
(下手に喋るの、やめとこう……
ボロが出ないとも限らないし……)
 
【アルティナ】
(そ、そうね……
早く話を済ました方が良さそう……)
 
自然体でいこう、変にかしこまると
またリプラさんにからかわれそうだから。
 
【カイナ】
「じゃあ……リプラさん……でいいですよね?
よろしくお願いします!」
 
【リプラ】
「は~い、こちらこそ宜しくね~カイナ君」
 
【アルティナ】
「はぁ~……とりあえず一件落着ね……
それじゃ、改めて、カイナに仕事の説明を……」
 
【リプラ】
「あぁ~アルちゃん、それは明日で構わないわよ~?
もう夕刻を迎えてるし~、それに~カイナ君には~、
この世界のことを知ってもらわないといけないでしょぉ~?」
 
【カイナ】
「この……世界のこと……?」
 
【アルティナ】
「……まあ、カイナは雄ですしね、
知っておかないと大変な目に遭うかもしれませんし……」
 
どういうことだろう?
 
アルティナからは、萌えもんの雄は出生率が
極めて低いことは聞いていた。
 
けど、そこに何の問題があるというのだろう?
少数派だから、迫害されているのか?
 
【アルティナ】
「それではお先に失礼しますね、リプラさん……
ゴル姉と合流したら、ちょっと話し合ってみます」
 
【リプラ】
「分かったわぁ~、メロちゃんにも
宜しくって伝えておいてね~」
 
【リプラ】
「それからぁ~カイナ君~?」
 
【カイナ】
「は、はいっ! なんでしょうか?」
 
【リプラ】
「もうちょっと~肩の力を抜いて話そうね~。
ぶっきらぼうな話し方してると~、
アルちゃんやメロちゃんを悲しませちゃうから~」
 
【カイナ】
「……っ! は、はい……」
 
話のいきさつでしか知らない筈なのに、
まるでその場にいたかのように
感情が交差した俺やアルティナ、ゴル姉のやり取りに対して
リプラさんは助言してきた。
 
【カイナ】
(この人……とぼけている様に見えるけど、
何もかも理解しているんだ、アルティナのことや
初めて会った俺の気持ちも……)
 
【アルティナ】
「カイナー? 行くよ?
もたもたしないで早く来てよ!」
 
【カイナ】
「あぁっ、ごめんアルティナ……
そ、それじゃリプラさん、お疲れ様です!
明日から宜しくお願いします!!」
 
【リプラ】
「は~い。お待ちしてますねぇ~♪」
 
にっこりと笑いながら、ひらひらと手を振って
見送ってくれるリプラさん。
 
俺はなんだか
いい所で働けるような気がしてならなかった。



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