5スレ>>956-1


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 オツキミ山でキャンプを張り一夜を過ごしたオレたちは、次の日早々に下山を開始した。
 どうやらだいぶ出口に近づいていたみたいで、後はさほど迷うこともなく無事ハナダ側の麓までたどり着くことができた。
 早朝の山の空気は麓に比べてだいぶ冷たかったが眠気覚ましにはちょうどよかったかもな。
 あの寝坊助ですら「寒いっ!」といって飛び起きたほどだ。
 昨日、その寝坊助のせいでひどい目にあったオレとしては願ったり叶ったりだったわけだが。
 ひどいといえば昨日の夜もひどかったな・・・。
 あの後ルイザがさすがに見かねてオレにも食事を出すよう提案してくれたのだが、その頃には既に料理も冷めており正直食った気がしなかった。
 しかも相変わらずマドカとアサギの視線がきついままだったし。
 マジで誤解だから・・・勘弁してくれ。

「やっと着いたぁ・・・。まったくあんたの方向音痴にも困ったもんよね」

 まぁ、今回は仕方ないだろ? ズバットの群れに追われたり、トレーナー助けたりさ。
 そんな状況でもなんとか無事下山できたんだし、マシな方じゃないか?

「けど温泉にも入れたし結果オーライなんじゃないかな?」
「・・・そうだね」
「そうねぇ・・・」

 ルイザが「温泉」という言葉を口にした途端、マドカとアサギの視線がこっちを向く。
 おいやめろ、ルイザ、マジで掘り返すな。

「そ、それはともかくそろそろ街が見えてくる頃だな」

 自分でもかなり無理矢理な話題転換だと思ったが、実際そろそろ着く頃だしまぁいいだろ。
 次の街は「水の街」で有名なハナダシティか。この街にもジムがあるから挑戦したい所なんだが・・・。
 水の街、ねぇ・・・。早くも嫌な予感がしてきたな。


『第七話 差しのべられた手』


「まぁ、そりゃそうだよな」

 ハナダジムの前に立っての第一声がこれである。
 街に入り、真っ先にジムを目指したオレ達だったがその前に立てられた看板には

『リーダー カスミ プリティー人魚』

 と書かれていた。よく見ると「プリティー」の部分は後で書き足されたようで、下にはうっすら「おてんば」の文字が見えた。
 ・・・大丈夫かよ、ここのジムリーダー。
 しかし人魚か。てことは当然水タイプのポケモン使いだよなぁ。
 こっちは頼みの綱のマドカが相性最悪だし、アサギ一人じゃ無理がある。
 ルイザが戦えるならあるいはって感じなんだが、まだそういうわけにもいかないしな。

「マスター、どうしますか?」
「こればっかりはなぁ。後回しにするしかないだろ」

 別に『ジムは順番に制しないといけない』という決まりがあるわけでもないしな。
 ニビジムの時みたいな足止めが来る前に、さっさと次の街に行くとするか。

「よし、んじゃ行くぞ」

 後ろを振り向き、手持ち達に声をかけながら歩き出す。
 それがまずかった。

「きゃっ!」
「うわっ!」

 後ろを振り向いたままだったオレには当然前から歩いてくるやつの姿は見えず、見事に正面衝突してしまう。

「いったぁ・・・もう! どこ見て歩いてんのよ!」
「悪い、よそ見してたもんで・・・」

 互いに尻餅をつきながらぶつかった相手を見ればおよそ10歳くらいの女の子だった。
 ノースリーブのシャツに短パン、髪を頭の後ろで縛った姿からは活発的な印象を受ける。

「立てるか?」

 先に立ち上がって手を差し出す。さすがにこんな小さな女の子にぶつかってケガさせましたじゃバツが悪すぎる。

「もう、気をつけてよね!」

 オレの手を取り立ち上がった少女は短パンについた砂をはたき落としながら文句を言ってくる。
 まぁ、確かに悪いのはオレなんだけどさ、もうちょっとこう年上に対する言葉の使い方ってやつをだな・・・。

「・・・ん?」

 そんなことを考えていると少女が疑問符のついた声をあげ、動かしていた手を止める。
 かと思ったら慌てた様子でズボンのポケットに手を突っ込み、

「あーーーっ!!」

 うおっ、いきなりでかい声出すなよ。

「やっぱり壊れちゃってるじゃない!」

 ポケットから出てきた少女の手のひらにはポケモンをかたどったアクセサリーが。
 粉々に砕けてしまったその姿からは分かりにくいが色合いからしてトゲピーのようだった。

「ちょっと! どうしてくれるのよ!」

 さっきぶつかって転んだときか・・・。まずいことしちまったな。

「す、すまん、弁償ならするから・・・」
「無理よ! これ限定品で最後の一個だったのよ! お小遣いためてやっと買えたのに・・・」

 げ、マジかよ。こりゃまずいどころの騒ぎじゃない。

「そ、それなら代わりのものを・・・」
「イヤ! これがよかったの! ずっと欲しかったんだから!」

 少女に気圧される形で苦し紛れに出した代替案も、にべもなく断られる。
 本格的に手がなくなってきた。どうするよ?
 考え込んでしまったオレに業を煮やしたのか、少女はオレをキッと見据え、

「もうあったまきた! ぎったぎたにしてやるんだから!」

 そう吐き捨てモンスターボールを放る。
 ボールの中から現れたのはスターミー。
 マスターの怒りに呼応するかのように、敵意をもった目でこちらをじっと見据えている。

「いきなさい、スターミー! あいつをこてんぱんに・・・」
「だーっ! 待った待ったー!」

 少女が手持ちをオレたちにけしかけようとしたまさにその瞬間、目の前のジムから海パン姿の男が数人現れオレと少女の間に割って入る。
 パッと見、どう考えても変態である。

「もう、何よあんた達! 邪魔しないで!」
「落ち着いて下さいよ、リーダー! さすがにこんな往来でドンパチはまずいでしょ!」

 まったくだ、見た目変態のくせにいいこと言うな、こいつら。
 ・・・ってちょっと待て、こいつら今なんて言った?

「離しなさい! あたしはこいつを・・・!」
「だったらせめて公式戦にして下さいよ! 仮にもジムリーダーが街中でケンカなんてシャレになりませんって!」

 マジかよ・・・。

「この・・・ガキが、リーダー・・・?」
「むきー! ガキっていったわね!? 上等よ! ハナダジムリーダー・カスミとしてあんたに勝負を申し込むわ!
 公式戦で大負けして赤っ恥かけばいいのよ!」

 なるほどな。おてんぱ、か・・・。


 なし崩し的にジム内に連れ込まれ、バトルの準備をさせられる。
 どうしてこうなった。いや、もともと悪いのはオレなんだけどさ。
 なんでこうも面倒ごとに巻き込まれるかね、オレは。

「まったく、あんたが余計なこと言うから・・・」

 いや、だってどう見てもガキだろ、ありゃ。

「仮にも女の子なんですから、あんなこと言っちゃダメですよ」

 そんなもんか? けどお前も「仮にも」ってなにげにきついこと言ってるよな。悪気は無いんだろうけどさ。

「あー、わかったわかった、悪かったよ・・・。
 けど始まっちまったもんはしょうがねぇ。勝つつもりでいくぞ」
「ふん、そうやって強がってられるのも今のうちよ!
 あたしのポリシーはね、水タイプポケモンで攻めて攻めて攻めまくることよ!
 この子達の怒濤の攻撃に押し流されちゃいなさい!」

 相対するカスミは水着に着替えて準備万端という様子だ。ていうかそれ戦闘装束なのか?
 カスミの一番手・ヒトデマンも既にフィールドに立ち臨戦態勢となっている。

「頼むぞ、マドカ。相性は悪いがなんとか頑張ってくれ」
「わかりました!」

 カスミのヒトデマンに対するはマドカ。
 本来ならマドカは切り札として残したいところなのだが、今回ばっかりは相手が相手だ。
 アサギを温存して少しでも被ダメージを防ぐしかない。
 幸いにもマドカのバトルセンスは高い。相性が悪くてもそれなりには戦えるはずだ。

「まさかあたし相手にリザードを出してくるなんてなめられたものね」

 うるせーよ。無理矢理バトルに持ち込んだのはそっちだろうに。

「相性がいいからって甘く見てると痛い目にあいますよ!」
「そーなのかー」

 マドカの気合いの入った返しに脳天気につぶやくヒトデマン。
 なんつーか気の抜ける声だな、おい。

「それでは、バトル開始!」

 レフェリー(ただし海パンである)のかけ声とともに2人のポケモンが動き出す。

「マドカ、距離を取れ! 近づけさせるなよ!」

 マドカはああ言ったが相性が完全に悪いのはかなり痛い。
 相手の攻撃をかわすためにも、まずは距離をとらせてその上で隙を突く作戦をとる。
 さすがにジムリーダーのポケモンだ。水タイプの攻撃を一発でももらえば即ダウンの可能性もある。
 向こうの出方を見たいってのもあるし、まずは様子見だな。

「へぇ、多少は考えてるみたいね。でも構うことはないわ! ヒトデマン、「みずのはどう」よ!」
「わはー」

 気の抜ける声とともに無数の水弾が放たれる。
 しかしそんな覇気の無さとは裏腹に水弾はすさまじい数とスピードを誇っていた。
 マドカもなんとかかわしていくがさすがにすべてを避けるというわけにはいかず、いくつかの水弾は爪で弾き落とす。

「くっ・・・!」

 当然完全に弾き落とせるわけでもなく、少なからず水弾の飛沫を受けダメージが蓄積されていく。
 そこまでダメージは大きくないにしろあの数だ、長期戦は不利になる。なら、こっちからもしかけていくか。

「こっちも「ひのこ」で牽制しろ! 動きは止めるな!」
「はいっ!」

 水弾をかわしながらも隙を見て「ひのこ」を放つ。
 おかげでほんの少しだが相手の攻撃が緩む。

「あついのかー」
「今だ!」

 火が体をかすめヒトデマンがバランスを崩す。
 その隙に一気にマドカが距離を詰め、攻撃を仕掛ける。
 危険ではあるが、進化しさらに攻撃力の増したマドカならあるいは・・・。

「はぁっ!」

 ガキィン!

「えっ!?」
「なっ!?」

 マドカとオレの声が見事にハモる。
 振り下ろされたマドカの爪はヒトデマンの眼前で止まっていた。
 リフレクター!? しまった、いつの間に・・・!

「ひっかかったわね! 今よ、ヒトデマン!」
「おわりなのかー」

 リフレクターに爪を止められ、硬直してしまったマドカにゼロ距離の水弾が放たれる。

「くっ・・・! きゃぁっ!!」
「マドカッ!」

 すんでのところで体をそらすが、間に合わず直撃を受けてしまった。
 致命傷はギリギリさけたが、さすがにダメージがでかい。マドカはいったん下げるか・・・。

「マドカ、いったん戻れ! アサギ、いけるか?」
「誰に言ってんのよ! マドカ、後は任せなさい!」

 マドカをボールに戻し、ついでアサギをフィールドに出す。

「リフレクターに気をつけろよ!」
「わかってる!」

 さっきのは迂闊すぎた。相手は形は子どもでもジムリーダーだ。そう簡単に勝てる相手じゃない。
 相性が悪いとはいえマドカがああも簡単にやられたんだ。ポケモン自体の強さも相当なものだろう。
 しかしリフレクターは不可視の障壁だ。見抜くにしてもどうしたものか・・・。

「誰が出てきてもいっしょよ! やっちゃいなさい!」
「いくのかー」

 さっきまでと同様にすさまじい数の水弾が放たれる。
 その水の弾幕の前では避けることすら困難に思われたが、

「こんなものどってことないわよ!」

 アサギは水弾と水弾の間を縫うようにすり抜けてヒトデマンに接近していく。

「なっ!? あの弾幕を簡単に・・・!」
「さっきマドカのときにもさんざん見せてもらったでしょ! これくらい余裕よ!」

 これは驚いたな。
 事前に見た上、進化したマドカに比べアサギの体は小さい。アサギの方が圧倒的に避けやすいのは確かなのだが。
 正直、オレが見る分にはとても避けるスペースなど見えない。
 イシツブテ戦のときに寸分違わず急所を狙えたことといい、もしかしたらこいつ、かなり目がいいのかもな。

「もらったっ!」

 ヒトデマンの眼前まで迫ったアサギが渾身の貫手、「つつく」をはなつ。
 が、

 ガイイィィィン・・・!

「・・・ぃったぁーっ!!」

 再度リフレクターの壁に阻まれる。あわや突き指といったところだ。

「お返しなのかー」

 手を押さえて飛び跳ねるアサギめがけて再度放たれる水弾。

「くっ・・・こんのっ・・・!」

 指の痛さに顔をしかめながらもなんとかそれらをかわし、トレーナー席まで戻ってくる。

「大丈夫か?」
「ん、なんとか・・・っていうか、あれ反則じゃないの?」

 まぁ、気持ちは分かる。
 完全に見えないもんだからいつ、どこに展開されているのかがまったく分からない。
 そりゃ反則にも思えるよな。

「しかも余裕なのか変なポーズとってるし・・・」

 確かにヒトデマンは両腕を左右に広げて、漢字の『十』のようなポーズをとって相変わらず「わはー」と言っている。
 あれが彼女なりの勝利のポーズなんだろうか? だとしたら甘く見られすぎってもんだ。
 ・・・? 待てよ、そういやさっき・・・。

「なぁ、確かマドカがやられたとき・・・」
「え? ・・・あっ!」

 どうやらアサギも思い当たったらしい。
 もしオレたちの予想が当たってるならリフレクターが展開されるタイミングは分かった。
 あとはどこに展開されるかだが・・・。

「よっし! そうと分かれば!」
「おい、アサギ! まだ・・・」

 すべてが分かったわけじゃない、と言いかけたところでアサギが振り向く。
 その顔には不敵な笑みが浮かんでいた。

「大丈夫よ、何から何まで教えてもらえないと勝てないってほどやわじゃないんだから!」

 そう言ってサムズアップしてみせる。
 ・・・ったくマドカといい、こいつといいどんどん強くなってくな。

「分かった、頼んだぞ!」
「おっけー!」

 言葉とともに駆け出すアサギ。
 それに気づいたヒトデマンが水弾を放つが、気にも留めずどんどん接近していく。

「今度こそっ!」

 ヒトデマンの眼前まで迫り、攻撃を放とうと腕を引いたその瞬間、ヒトデマンが再度『あのポーズ』をとる。
 そう、これだ。さっきマドカがリフレクターを使われたとき、直前にヒトデマンがバランスを崩したせいで分かりづらかったが、
 そのときもこの『十』のポーズをとっていた。
 つまりそのポーズこそがリフレクター展開の予備動作。
 しかしそれが目の前だけに展開されているとは限らない。
 あれほどの防護壁を展開するにはそれなりの体力消耗もあるだろうから、さすがに周囲すべてを覆ってはいないだろうが。
 不可視であるゆえに見誤れば即反撃。どうやって見抜くつもりだ、アサギ?

「いっけぇっ! 「みだれづき」ぃっ!!」

 かけ声とともにすさまじい突きの連打が放たれる。その攻撃範囲たるや、ほぼ全方位!

「わっ、わっ、わっ」

 突きの連打に気圧されるように徐々にヒトデマンが押されていく。そして、

「! そこぉっ!」

 全力を込めた突きはリフレクターに阻まれることなく、

 ドガッ!!

「やられたのかー」

 ヒトデマンにクリーンヒットし、その体を大きく吹き飛ばす。
 最後の最後まで力の抜ける声だったな、おい。

「ま、まさかリフレクターの隙間を見つけられるなんて・・・」

 ヒトデマンを抱き起こしながら、苦々しそうな顔をするカスミ。

「アタシくらいになればそれくらい見抜くのなんてわけないわよ! 甘く見ないでよね!」

 まぁ、完全に力技だったけどな。
 全方位から「みだれづき」を放つことでリフレクターの展開されてない場所を探したってわけか。
 無茶するよな、ホント。けど・・・。

「よくやったな」

 そういって手をかざせば、

「とうぜんっ!」

 パァンッ!

 と、手を打ち合わせてくる。
 よし、まだ余裕はありそうだな。これなら次もいけるか・・・?

「確かに甘く見すぎてたかもね。でもこの子にそんな甘さはないわよ!」

 ヒトデマンをボールに戻し、次にカスミが繰り出したのはスターミー。
 冷徹な瞳に物言わせぬ威圧感を宿したその姿は先ほどのヒトデマンの進化形とはとても思えない。

「さぁ、やっちゃいなさい! スターミー!」
「さもありなん」

 前言撤回、やっぱあのヒトデマンの進化形だ。
 しかし、

「「れいとうビーム」」

 抑揚のない声で放たれたその技はフィールドを瞬時に凍らせる。

「う、うそでしょ・・・何よ、これ・・・」

 技の余波だけでフィールド周囲のプールまで凍らせるその威力に、アサギまでもがうわずった声を上げる。

「どう? これがこの子の力よ! 移動砲台の名はダテじゃ・・・クシュンッ!」

 そりゃその格好じゃなぁ。
 それにしても桁外れの威力だ。ヒトデマンでも相当なものだったが、そのさらに上をいく強さ。
 その無機質な眼からは考えを読み取ることもできない。いや、何も考えてない可能性もありそうだが。
 こんなバケモノ相手にどう闘えばいい・・・!?


 ボクはなにをやってるんだろう・・・。

「アサギ、またくるぞ! 気をつけろ!」

 ボクはどうしてここにいるんだろう・・・。

「分かってる! けど・・・っ!」

 あのとき、お兄ちゃんが差しのべてくれた手。

「スターミー! どんどん撃って逃げ場をなくしなさい!」

 ボクはなんのためにあの手を掴んだんだろう?

「「れ「れ「れ「れ「れいとうビーム」」

 こんなボクでも『一緒に来い』って言ってくれたお兄ちゃん。

「怖いわよっ! ていうかこんなもの・・・どうやってよけろっていうのよー!」

 そんなお兄ちゃんに恩返しがしたかった。

「くそっ、何かないのか・・・!? すまんアサギ、もう少し耐えてくれ!」

 自分の力を克服できればお兄ちゃんの力になれるかもしれないって思った。

「あははっ、いい気味よ! 粉々にされたトゲピーの恨み、思い知りなさい!」

 なのになんでボクは、まだここで立ち止まってるんだろう・・・。

「しまっ・・・! きゃぁっ!」

 アサギちゃんの叫び声に我に返る。
 凍ったフィールドに足を取られて、バランスを崩したところに「れいとうビーム」を受けたみたい。
 なんとかかわしたみたいだけど、足が凍りついちゃってる!?
 あの足じゃ今までみたいに動けないよ!

「アサギっ!」
「ふん、これで勝負あったわね! スターミー、せめてもの情けよ! 一撃で終わらせなさい!」

 スターミーの目の前にすごいエネルギーが集まっていく。
 このままじゃ・・・!

「くっ・・・甘く見るなって・・・」

 今までよりもっと大きな「れいとうビーム」が放たれた瞬間、アサギちゃんが凍った足をものともせず駆け出す。

「言ったでしょっ!」

 身を屈めて「れいとうビーム」の下をくぐり抜けて、スターミーに突きを放つ。
 けど、

「・・・っ!? くぅっ・・・!」

 「れいとうビーム」の余波で腕まで凍らされて、十分な威力がのってない・・・。

「甘く見ても甘く見なくてもあたしのスターミーの前じゃ一緒よ! スターミー、『あれ』を使いなさい!」

 『あれ』? 『あれ』ってなんだろう?
 そう思った瞬間、

 パチッ!

「いたっ!」
「? ルイザ、どうした?」

 今のは、もしかして・・・。
 感覚を研ぎ澄ませてみれば、あたりにものすごい電気エネルギーが渦巻いていた。
 ボクも電気タイプだからよく分かる。これは・・・!

「おい、ルイ・・・」
「アサギちゃん、逃げて!!」

 お兄ちゃんの問いかけを無視して叫ぶ。

「もう遅いわっ! スターミー!」
「「10まんボルト」」

 注意は間に合わずに、高圧電流がアサギちゃんの体を貫く。

「かっ・・・!」

 一瞬で体を駆け巡った電流に詰まった声を上げ、アサギちゃんはそのまま崩れ落ちた。

「アサギっ!!」

 お兄ちゃんが倒れたアサギちゃんに向かって駆け出す。
 そんな・・・アサギちゃんまでやられちゃうなんて・・・。
 次は・・・ボクが・・・ボクが戦わなきゃ・・・。
 なのに・・・。

「おい、アサギ! しっかりしろ!」
「ごめ・・・サイカ、ドジっ・・・ちゃった」

 なのに・・・なんで。
 ボクは、動けないんだろう。
 ・・・怖い。
 怖いよ・・・。

「どうやら勝負あったようね! それともそっちのピカチュウがあなたの切り札なのかしら?」
「いや、あいつは・・・まぁ、いい。確かにお前の言うとおりだ」

 言わなきゃ。
 言わなきゃ・・・。
 「待って」って。
 「ボクが戦うから」って・・・!

「オレのま・・・」
「待って!」
ツールボックス

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