2スレ>>751


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これはぴくるの前のご主人様の話なのです…

ぴくるがまだピッピだったころ、ぴくるに『ぴくる』と名前を付けてくれたのは前のご主人様なのです。

ご主人様は遺伝子の配列に関する病気で、寿命を定められた状態でこの世に命を受けました…

くわしいことはぴくるにもわからないのです。

ぴくるはご主人様のお父様にブリーダーズショップで気に入られ、ご主人様のおうちに連れて行かれました。

介護もえもんとして育てられたぴくるにお父様は言いました。

「君は優秀な娘だ。よかったら、彼の世話をしてくれないかな。」

ぴくるは喜んで引き受けました。…でも、初めてご主人様を見たときはショックを隠しきれなかったのですよ。

そのときご主人様は7歳でした。

ご主人様は足が動かず学校に行けませんでした。

ご主人様は手が動かず食事が一人でできませんでした。

ぴくるはよくご主人様の見えないところであまりの不憫さに泣いてしまいました…。

それでも、ご主人様には素敵なものがありました。



あるときぴくるがうまく介護できなくて、落ち込んでいたときのことでした。

「…どうしたのー?ぴくる。」

ごめんなさいご主人様、ぴくるはだめな子です。

ご主人様の前なのに…だめだってわかっているのに…それでも思わず涙が出てしまうのです…。

「ないちゃだめー。歌を歌ってあげるから、泣き止んで。」

そういってご主人様は泣き虫なぴくるによく歌を歌ってくれました。

ご主人様はいつも素敵な歌を歌うだけではなく、たまに自分の考えた詩歌も教えてくれました。

そのおかげで、ぴくるは介護に自信を持ち始めました。

ニンゲンにも難しいとされている介護の仕事を、苦しいときもあるけれど、

ぴくるはがんばってこなしました。

ご主人様とも楽しい時間を過ごす事ができて、ぴくるはとても幸せでした。



でも…

それでも…

お別れの日は、やってくるのです。

どんなに願っても、どんなに努力しても、どんなに大泣きしても、

お別れの日は、やってきたのです…



ご主人様は10歳の誕生日を迎えました。

お医者さんの当初の見解によれば、ご主人様の寿命は10年、"も"、ないとの事でした。

それでもご主人様は今日まで元気に過ごし、

10歳の春――

10歳の夏――

10歳の秋――

10歳の冬を過ごし、遂には11歳の誕生日を迎えようとしていました。



ある日唐突に、ご主人様はぴくるにこういいました。

「ねえぴくる…」

「なんですかご主人様。」

「もしさ…天国があるとすれば、どんなところなんだろう――?」

! ! !

嫌!

言わないで!

ぴくるは窓に飾ってあった鉢植えを取り替えている最中、

思わずその言葉で鉢植えをひっくり返してしまいました…

「あ……ぴくる!!」

ひっくり返した鉢植えもそのままに、ぴくるはご主人様の部屋を飛び出してしまいました。

心臓の音がどんどん早くなって…

涙がどんどん溢れて来て…

ぴくるが消えてなくなりそうでした…

だって…だって、

落として粉々になった鉢植えを見たら――

いつかご主人様も、こうなってしまうのだろうかと

思ってしまったから…

思ってしまったから、ぴくるは悲しくなって…

もう、嫌です。

これ以上、ぴくるには耐えられないです――



しばらく休暇をもらいました。

ぴくるは、こころの弱い子です。

ぴくるは、つらいことから逃げ出した、悪い子です。

神様、こんなぴくるが生きているくらいなら、

せめて

せめてお願いです。

ぴくるを殺して、ご主人様の病気を治して!!



休暇をもらってからわずか一週間。

ご主人様の様子がおかしくなってしまったのです。

その連絡をお父様から聞いて、ぴくるはいても立ってもいられなくなり…

もう一度、逃げ出したあの空間に、自ら赴いていきました――

ご主人様は呼吸も荒く、熱もあって、

いつまで持つかとお医者さんは心にもないことしか言いませんでした。

ぴくるは気づいてしまいました。

ご主人様の様子がおかしくなってしまったのは、

ぴくるが逃げ出しちゃったからに違いないと…

ぴくるが我慢して、

我慢して、

大好きなご主人様と一緒にいたら、

こんなことに…ならなかったのに…



こんなことに!ならなかったのにっ!!



…床の鉢植えは綺麗に片付けられていました。

窓にはもう鉢植えはありません。

もしかしたら、あの鉢植えをぴくるが割らなければ…

ご主人様は、元気なままだったかもしれないのに!!

ぜんぶ!

ぜんぶ!!

ぴくるが悪かったのです…

なにもかも、ご主人様から奪ってしまったのは、ぜんぶ!

ぴくるのせいなのです!!

ぴくるはそのまま泣き崩れてしまいました。

ぴくるが何もかもいけなかったのです。

だから神様!

ご主人様を…


ご主人様を、元に戻してよぉぉぉぉぉぉっ!!



「…か……ない…で。」

――ご主人様?

「…な、か…ないで。」

――ご主人様…

「な、か、な、い、で。ぴくる」

――ご主人様!

「うた…を、歌って…あげる、よ」

――ご主人様。

「だ…か、ら…なかないで…ぴ、く、…」

――ご主人様っ!うぅっ、ううぅぅ!

「ぴく、る。もっと、近くに……」

はい。もっと近づきます、ご主人様!

「い、いこだ…」

…いいえ、ぴくるは…ぴくるは悪い子なのです。

「そんなことは……ない、よ。」

だって…だってっ…

「もし…ぴくるが…わるい子、だったら…」

……??

「この…石を…ま…ん、げつの、夜に…かざしてごらん…」

これは…??石…?

「きみが…本当に、わるいこだったら、…はぁはぁ、その石は、きみのいきのねを…とめる。」

……えっ?

「自分を、責めちゃ、だめだ…よ。それは、きみに…預けよう…」

……わかりましたです。ご主人様…

「うん…よかった…。これ、で…ぼ、く、は……」

――!? ご主人様!?

「もう、おもい…のこす…こ、と…」

嫌!イヤ!!ご主人様!!行かないで!!ご主人様!!!

「ぴくる…ほんとうに、きみにあえて…よかった…っょ」

ごしゅじんさまぁ゛ぁぁ゛!!おねがい…おねがいだからぁぁっ!!

「あ、り、が、と、う。 …。………。」

ご主人様!ごしゅじんさま!!



ごしゅじんさまぁぁ゛ぁぁぁぁぁぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!



………


…………


……………

ぴくるはそれ以降、介護の仕事をやめました。

介護がイヤになったのではありません。

やることができたからです。



満月の光が降り注ぐといわれている、オツキミ山。

ぴくるは、ご主人様が言っていたことを確かめにここまでやってきました。

ぴくるがわるい子であれば、この石に命を奪われてしまいます。

その時はそれでいいと思いました。

ぴくるのようなわるい子なんて、この石に命を奪われてしまえばいいのです。

……。

石を、満月にかざしました。

どうか、このぴくるに、死の裁きを与えてください。

そして、願わくば、ご主人様の元に、逝かせてください――


石が、光り始めました。

この光に、ぴくるの命は奪われていくのでしょうか。

ぴくるは、目を閉じて、最後の時を、止まりそうな時間の中、過ごしました。


………


ゆっくり目を開ければ、そこは天国…いや、地獄だと思っていました。

でも、そこは元いた場所と変わりありませんでした。

???

何が起こったのだろうと辺りを見回してみれば、

水面にはぴくるの姿…いえ、正確にはぴくるの姿ではありませんでした。

別の体になっていました。

何が起こったかわかりませんでしたが、一つだけわかったことがあります。

これは命を吸い取る石なんかではありませんでした。

ご主人様は最初からうそをついていたのです。

そして、ご主人様は最初からこうなることが…

わかっていたのです。



「ご主人様…っ!うっ、ひくっ…ぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」



また、そこでも泣いてしまいました。

でも、もうぴくるは……泣きません。これを最後の涙にしようと決心しました。


だって、


ご主人様が、ぴくるに新しい命をくれたから――



それからというもの、ぴくるは新しいご主人様についていくことにしました。

どうしてかって?

それはですねぇ、


今のご主人様は、前のご主人様みたいに、綺麗な目をしていたからですぅ♪

「ぴくる?なにぼーっとしているんだ?行くぞ。」
「あ、はいなのですぅ!」

あの石は、月にかざしたときに、不思議と手の中からなくなっていました――
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