1スレ108


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 注意書きという名の言い訳

  • シャワーズ萌えを狙ったが別にそんなことなかったぜ
  • 俺の愛だけで書き上げました。でもシャワー汁は10%くらいでs
  • 萌え展開じゃなくても泣かない。
  • 作者の文体が読みづらくても泣かない。
  • むしろ萌えもんじゃなくても泣かない。

 そんな事を書かなくちゃいけないほどにやっちゃいけない方向に真面目にはっちゃけました、サーセンwww










「シャワーズ、みずてっぽうだ!」
 草むらを踏みしめ、腹の底から声を張り上げた。時期が夏というのもあり、周囲では虫の鳴き声が耳障りで、シャワーズには俺の声が聞こえていないと思ったからだ。
 しかし、二回目の指示を出してもシャワーズから反応はない。
 流れるような群青の長髪は夏の強い日差しをうけてなお輝いていて、ピンとした大人しい佇まいはいつもの後姿。そう、いつもの後姿だ。
「……ねー、バトルする気あんのー?」
 更にその奥。彼の手持ちであるラッタの更に後ろにひかえる、さきほど勝負を挑んできた短パンの少年の反応も、いつも他のトレーナーから発せられる内容なのだから、これはどうしたものか。
「シャワーズ、シャワーズさん? おい、シャワーズ! みずてっぽうだ、みずてっぽう!」
 ぴく、とシャワーズが反応する。それに淡い期待を抱き。
 ……振り向いたシャワーズに、その、鋭い目つきでそっぽを向かれてしまうと、俺はもう、どうしようもできなくなってしまうのだった。
「っ、あー! もどれ、シャワーズ!」
 モンスターボールを取り出し、何もしていないシャワーズを戻すのも、そろそろ日課になってきていた。


【ローレライの夏】


「あー、くっそー」
 ハナダのトレーナークラブに戻ってくるなり、俺は悪態をついてソファに座り込んだ。周りで雑談していたトレーナー達の何人かの視線がこっちに向けられた気がするが、そんなのに構えるほどの精神的な体力は残ってなかった。バトルが終わると燃焼しきってしまうのは俺の悪い癖だ。
 事前に仕入れておいたミックスオレをがぶ飲みしつつ、さっきの戦闘を振り返る。
 地元出身のトレーナー相手なら、ひこうタイプがくるのを想定しておくべきだった。フシギソウを先方にしたのだが、まんまとピジョンを出されて、結局フシギソウを落とされてしまった。やはりノーマルかひこうを先頭にしておくのがハナダでは安定するかもしれない。
 たまにいる山にこもっているトレーナーなどが相手の時は、いわタイプの所有率が高い相手だけにフシギソウは高いアドバンテージをもつが、そうげん地帯だとやはりノーマルタイプも多く、ましてやクチバあたりから来たトレーナーがエスパータイプなども使用してくるから困りものだ。
 となるとやはり、比較的数の少ないでんきタイプへの不安はともかく、俺は今のところ一番信頼しているみずタイプのポケモンを先方にして、今後の戦術を吟味したいのだが……。
「なーに、また一悶着あったの?」
 その通りである。
 間延びした声を上からふっかけてきたのは誰かわかっていたが、ガマンしきれずに振り返る。
「うるさい、俺のせいじゃない。シャワーズが」
「いうこと、聞かないんでしょ?」
 目の前に立っているのはミニスカートの少女、アミである。地元のトレーナーで、前述したひこうタイプを先方にしているトレーナーの一人でもある。出会ったきっかけはもちろんバトルで、橋を渡って五人抜きをするっていう企画の四番手だった。
「ああ、そうだよその通り。くっそー……どうすりゃいいんだか」
 頭を
「いっつも思うけど、あなたも大概いそがしいわね。たまにはリラックスしたら? ポケモン達にも息抜きさせてあげればいいじゃない」
「そうも言ってられねえんだよ。俺と同じ出身で、同じ時期に旅に出たトレーナーがいるんだけど、そいつはブルーバッジを手に入れてたんだ」
「ブルーバッジって……え、じゃあカスミさんを倒したの? すごいじゃない、その子」
 だから、うかうか、してられないの。他人事のように素直に驚くアミにあたるわけではないが、俺も内心で焦っているのがわかった。
 しかし、同郷のそいつにはその場で勝利した反面、カスミ……ハナダジムのリーダーを相手にした俺は、結果からいうと惨敗だったのだ。
「俺が負けたってのに、あいつが勝って颯爽と町を後にしたのが許せねえ……」
「大変ねぇ」
 そいつは魔法でも使ったのだろうか。いや違う。その時は運悪くカスミの主力であるスターミーがその前の戦闘、ようするに一戦前のトレーナーとの激しい戦闘から回復しておらず、控えのポケモンでカスミが戦ったのだと後に聞くことになる。
 あいつの手持ちからするに、スターミーと比べれば足元にも及ばないポケモンだったに違いない。
 それほどに、カスミのスターミーは手ごわかった。
 俺の本来の主力であったフシギソウやバタフリーをはじめとし、全員が一瞬でスターミーの攻撃で落とされる様には、俺も大笑いしながらプールに潜って溺死したいくらいだった。その後、ポケモンセンターにみんなを連れて帰った後、こうしてレベルアップの日々が始まったのだ。
 その時にはまだイーブイだったのが、今のシャワーズだ。
「ああ、思い出すたびに思うが、あの頃のイーブイはいい相棒だったなぁ……確かにノーマルタイプだしパッとしなかったけど、俺の指示をしっかり聞いてくれて」
 それでいて、一生懸命ちんまりしたのが戦うのが見ていて内心可愛かったし、というのは男として女の前では発言できないので、改めて内心に留めておく。
 イーブイは、そもそも俺がトレーナーになる以前。子供の頃から元々母親が家で飼っていたポケモンだった。イーブイ自体がかなり珍しい種類だってことをその頃の俺は知らなかったが、頻繁に博士が俺の家に出入りしてたのを考えると、やはり貴重な研究対象なのだろう。
 とはいっても、その頃の俺たちはツーカーよろしく
『ブイ、こっちだ、こい!』
『キュイ!』
 みたいな仲良しさんで、二人でポケモンリーグを目指すのを(俺が勝手に)夢見ていた。それをみて、母親が俺にイーブイを託したのである。
 その後はまあ、フシギダネを記念にもらって。イーブイとフシギダネのタッグを使いつつ、他のポケモンもまじえてここまで来たわけだが。
「案外、スパルタにしすぎたんじゃないの? あなたこっちに来てから結構経ったと思うけど、毎日のように草むらに入ったり通りすがりのトレーナーに挑んだりしてるじゃない。ねー、ポーちゃん」
「確かに、毎日バトルはしてたが、そんなの最初からそうだったしなぁ……」
 俺の悩みに答えを出してくれようとしているのか、どうでもいいのかよくわからない言動をしながら、アミはポーちゃんにポロックを与えている。ポーちゃんもポーちゃんで、無表情ながらももくもくと食べる様は愛らしい。俺のポーちゃんにも通じるものがある。
 ちなみに。ポーちゃんとはポッポのことであるのはお察し頂きたい。ピジョンに進化したらどうすんだ。俺ならそんな名前は絶対につけない。
「だけどなぁ。ホントにいうこと聞かなくなったのは最近なんだよ。特にみずのいしをもらってからだな」
 いつだったか、オーキド博士の助手を名乗る怪しい人物から、ニビジム突破の祝い品としてこの石が届いたのは。
 対カスミ戦への方針が定まらなかった俺は、イーブイをシャワーズに進化させることで戦力の増強をはかった。……本音をいうと、でんきタイプのサンダースにしたかったところだが、シャワーズでも俺が戦法を考えればどんな敵にだって勝てる。俺とイーブイなら大丈夫だ、そう思っていたんだ。
 だが、それは突然だった。
 そっぽを向いたのはいつが最初だったか。いつものように草むらのやせいのポケモンを相手にバトルをしていた時、シャワーズは、俺の指示を全く意に介さないかのように、拒絶を貫いたのだ。
 それがたまたま調子が悪かったのだろうなんて楽観したのが運の尽きだったのかもしれない。徐々に頻度が増し、俺の指示にそっぽを向くのが、当たり前のようになってしまったシャワーズは、こうして俺を今日も悩ませていた。
 普通、ここまでくれば、メンバーから外すことも考えるのだが。それでも母さんから譲り受けたポケモンであり、俺の最初のパートナーであるシャワーズを、俺はどうしても外すことができないでいる。
 それに、俺の今の手持ちでは、スターミーの相手はきびしい。ここは、なんとしてもシャワーズに指示を聞いてもらわないといけないのだが。
「ねえ、ポケモンがいうことを聞かないのって、あなたの実力が認められてないってことじゃないの?」
「……は?」
 物思いにふけっていたものだから、一瞬、アミが何を言ったのかわからなくなる。
「ほら、よく言うじゃない? ポケモンが言う事……平たく言えば命令を聞かないのは、そのトレーナーを主人だと認めてないからだって。毎日のように特訓してポケモンのレベルは上がったけど、あなたがパッとしないからシャワーズは――」
「それだ!」
 まさしくひらめいたかのように立ち上がった俺に、軽い悲鳴をあげたのはアミだったか周りのトレーナーだったか。
「それだよそれ! そうか、そりゃ言うこと聞くわけねえよな!!」
 アミに聞き返すと、
「え、ええ、そう、ね……」
 曖昧な返事が返ってくる。
「確か、ブルーバッジって、初心を抜け出したトレーナーは必ず手にするっていわれるくらいの登竜門的なバッジで、他人のポケモンでも多少のやつならいうこと聞いてくれるって話があったよな!」
 アミに更に詰め寄ると、
「あ、えーと。確かに、その話は有名ね……」
 軽く下がりながらではあったが、頷いてくれた。
 そうだ、俺もその話を聴いた時はそんなバカな、とは思っていたが。確かにニビジムを抜けていらい、日常のように行ってきたバトルは練習のようなもの。ポケモンたちはそれで、俺の目でみるに遥かに成長したと思う。
 だが、俺が何もしていなかった。
 せいぜいポケモンの出す手番や弱点をつくわざを選んだり考えたりする程度で、最近はカスミ戦のことばかり。確かに俺は、カスミのことで頭がいっぱいで、さぞかしシャワーズには腑抜けて見えたに違いない。
 だったら、俺が今まで練りに練ってきたカスミ戦の対策と、勝利への戦術を見せてやればいいのだ。それを理解したシャワーズなら、きっと俺のいうことを聞いてくれるはず!
「そう、つまり、もう一度カスミに挑めばいいんだな!」
「な……!」
 周囲がざわめくのがわかるが、嬉しくなってしまい俺は気持ちが高ぶってくる。
 そうすれば、そのままカスミにも勝利、ブルーバッジを手にした俺を改めてシャワーズは認めてくれ、俺達のポケモンリーグへの道が開かれるに違いない。
 諦めるわけにはいかない。
 シャワーズとかつてかわした約束を。
「よし、俺ちょっとジム戦の申請してくる」
 そう言って振り向き、衝動を抑えきれずに急ぎ歩き出す。
「え、ほ、ホントに?」
 そんな言葉が背後から聞こえた気がしたが、今の俺にとってはそれは愚問であった。

 しかし、そう感じたのは俺だけではないようで。
「シャワーズ、みずてっぽうだ!」
 愚問、といわんばかりにそっぽを向くのは勿論彼女、シャワーズだ。
 ジム戦の申請、許可が降りるも予約過多につき明日で、というのがジム側からの回答で、勢いを削がれた俺はひとまずカスミ戦でなくても俺を認めさせようと、シャワーズとの真っ向勝負に入った、のが数時間前。
 すでに空は赤く燃え始めて、ポッポが鳴いたらかーえろ、な時間だ。模擬戦にでもと付き合ってくれていたアミも、ポーちゃんが鳴いたらあっさり帰りやがった。
 あたる相手としてはお門違いだし、夕方は夕方でも夏場なので、時間的には既に夕飯を始める家族がいてもおかしくないわけで。
 それに、稽古の相手をうけてくれたのは正直ありがたかったわけが、『いつまでもこんなことしてても意味ないんじゃないのー?』という発言にはやや頭にきた。そんなの俺だってわかってる。
 なにせ、昼過ぎから始めたそんな模擬戦も、結局はシャワーズが俺の指示を耳にいれないばかりで、アミもほとんど暇をもてあましていたのだから。
「……ふぅ、シャワーズ」
 見慣れてしまった青い後姿。イーブイの頃に比べたら、すでにそれは可愛さではなく美しさになっているその容姿。
 指示をだせばそっぽを向いてしまうが、別に普段からそうというわけではない。あまりはしゃぐような姿こそ少なくなったが、俺が触っても嫌がったりしない分、心底嫌われたわけではないのはわかっていた。
 そっぽを向いているシャワーズの正面にまわりこんで、右手を伸ばして、毛並みを整える。その間、じっと大きな瞳が俺を見ていたが、青い髪に手を入れると、くすぐったそうに目を瞑って、身震いをした。
 イーブイの頃は足元くらいの大きさしかなかったが、シャワーズに進化してからは座っている状態で膝元くらいまであるから、しゃがむだけで顔に手が届く。シャワーズがしっかり立てば、多分腰より若干上くらいまでは背伸びできるかもしれないな、などと考えた。
 普段は座っている姿勢が多いシャワーズだが、イーブイの頃はよく一緒に走り回っていたのを覚えている。それがヒレが生えてきたせいなんだか、せいかく的な成長があったのかはわからないが。
 ……そういえば、さきほどの帰り際にもアミが何か別のことを言っていた。
『トレーナーとしての実力をあげるのは良い事だろうけど、ポケモンとのコミュニケーションも忘れちゃだめだよ』
 シャワーズに手櫛をしながら、彼女の挙動をみる。昔は撫でればにこにこ笑い、しっぽをぱたぱた振ってしがみついてくるようなやつだったが、俺と旅に出てからは次第に落ち着きを得てきていた。しかし、今のシャワーズは、大人しいというよりも。
 そう。なんだか、楽しそうじゃなかった。
 ……手櫛をやめると、目をぱちぱちとさせて、立ち上がった俺を見上げるシャワーズ。それは不思議がっているというよりも、何をしているの、というような、ひどく傍観的な視線。
「シャワーズ」
 一歩、一歩と後ろへ下がる。夕焼けもすでに終わりに近く、夜がやってくる。シャワーズの青い四肢はそんな夕闇にすら溶け込んでいってしまいそうで、それでいて、絵画のような美しさをもっていた。
「シャワーズ、こっちだ……こい!」
 いつかの掛け声。小さい俺と小さいイーブイが、景色に解けていく。
 ツーカーでならした、俺と彼女とのかけっこの合図。
 ――それに答えるでもなく、そっぽを向くでもなく。遠目にみたシャワーズの耳が、ぴくりと動いた気がした。
 それからどれくらい経ったか。それこそ夕日が沈み始めてから沈みきるまで待つかのような長い時間をおいてから、シャワーズはゆっくりと立ち上がり、ゆっくりとこちらへと歩み寄ってきた。
 ああ、もしかして、私のことを呼んだんですか? とでも言いたげなくらいに中途半端で、俺の言葉を聞き入れてくれたのか、ただモンスターボールに戻りたいだけなのかは、俺にはわからなかった。
 立ち上がった彼女は、やはり俺の腰より上あたりまでの身長しかない。すでに辺りを闇が飲み込みだし、彼女の姿も曖昧で見えないけれど。
「シャワーズは、俺とリーグを目指すのが……戦うのが、いやか?」
 ぽん、とシャワーズの頭に手をおき、伝わるはずもない言葉を囁きかける。
 ずっと疑問に思っていたことだ。かつて夢見たポケモンリーグチャンピオンへの道、そして描かれ出した俺のポケモントレーナーとしての旅。
 果たしてそれは、彼女も……望んでいたことだったのか。
 それは、俺(にんげん)の勝手な思い込みに過ぎなくて。
「確かに、ポケモンだって好き好んで戦いたいわけじゃないだろうし」
 落ち着きが出たのではなく、ストレスがたまっていただけで。
「だから、どうしても試合に出たくないっていうなら……」
 みずのいしで進化させた俺を、無理矢理、進化させた俺を、忌み嫌いこそしないながらも、拒絶するのなら。
「俺は別に、お前と一緒に、故郷に、マサラタウンに、帰ってもいいんだ」
 本音だった。
 全てのはじまりはあの夜の日。その日は必然としてポケモンリーグの決勝戦が行われ、全てのポケモントレーナーの頂点が決せられた日でもあった。
 この夜、何人の子供達がポケモンリーグを目指すことを夢見ただろう。
 その、何人かの子供の一人が俺で、その傍らにいたのが、ブイだった。
「もしかしたら、俺は俺の夢の半分を、お前に勝手に背負い込ませていたかもな……」
 深く考えすぎているのかもしれない。相手はポケモンだ。"彼らは常にパートナーであり、トレーナーと共に道をいくものだ。"いつかのテレビの言葉が脳裏をよぎる。
 でも、彼女とだからこそ、俺はポケモンリーグを目指せると思った。二人で楽しく、テンポよく、熱く、激しく。どんどん道を突き進む姿を夢想して。
「だから、明日、答えを出そう」
 ジムリーダー戦。こんなところで躓いてるようじゃ、チャンピオンになんてなれるわけがない。
 だから、俺はすでに暗くなっていてやっても見えないだろうに。そんな思い出の自分のように、笑顔でシャワーズに語りかけた。
「……昔、あの夜に誓ったように。それに答えてくれるなら、明日のジム戦、俺を勝たせてくれよ、ブイ」
「キュイッ」
 それは果たして、どんな答えなのかは俺には通じない。
 だが、決心はついた。こんな所でいつまでもとどまっていても、あいつにも追いつけず、マサラタウンにも戻れない。
 だから、ここで、ハナダで決めよう。俺がどちらへ行くべきか。
 進むか。
 戻るか。
 全てに、明日、決着をつける。



「ヒトデマン、戦闘不能! ジムリーダーは次のポケモンを、挑戦者は、一度のポケモンチェンジの権限を得ます!」
 かくして、俺の二度目のハナダジム戦はまずは予想通りの開幕となった。
 プールにいくつかの浮き島のような台が設置された、水場を想定したバトル場に相対する俺とカスミ。
 俺の四匹の手持ちに対して、カスミは僅か二匹。しかも手の内も読めている。
 先方は、ヒトデマン。
 それだけに、事前の対策は出来た。先方で出したピジョンこそ傷を負わせながらも押し切られてしまったが、続くバタフリーのねむりごなで動きを封じ、フシギソウでの追撃。ヒトデマンが落ちるのには時間はかからなかった。
 あの小柄で華奢なヒトデマンも、この辺りのトレーナーのポケモンの中では際立つものがあるが、弱点に抗えるほどではない。みずタイプがくさやでんきタイプに弱いの道理だ。前回の俺も、みずタイプ使いということを事前に知ったうえで、全く同じ戦法をとっていた。
「まあ、ここまでは前回と同じ。やっぱりあなたは才能ある方よ。大抵はヒトデマンで終わっちゃうもの」
「そりゃあ、どうも」
 しかし。
「でも、終わりよ」
 だからこそ。
「いきなさい、My steady!」
 次に登場するそのポケモンの前に、完膚なきまでに実力の差を思い知った。
 舞い降りるは紫でありながら星。忘れるはずがない、あの金と紫の色彩。
 一つ頭ぬきんでているであろうヒトデマン、それすらも軽く凌駕した逸脱さをもっているポケモンが、あの、スターミーだ。
 舞うような動きで、観戦にきた全ての人を水芸を見に来た観客へと変え、その全てを魅了するわざの一撃は、確実に対戦相手を蝕んでいく、それが、ハナダジムを登竜門たらしめる、カスミのスターミー……!
 フシギソウを手元に戻し、モンスターボールからバタフリーが飛び出る。バタフリーは、宙にふわりふわりと舞いながら、俺の指示をまっている。
「いけ、バタフリー! ねむりごなだ!」
 緊張で声が出そうにも無い中を、腹の底から声を出した。数秒の間をおいて、バタフリーが上空へと飛び出し。
「――スターミー! 10まん、ボルトぉ!」
 空を舞うバタフリーをもってして、なお上空を舞うのは水中よりのぼった輝く星、そこから放たれた電撃波が、初戦をフラッシュバックさせるかのように、バタフリーを飲み込んだ。
 一、撃? 弱点とはいえ、とくしゅこうげきには強いバタフリーだ、最悪一撃に耐えることができれば、ねむらせる事も可能だった、のに。
 あれだけバトルを重ねても、まだ届かないなんて……!
「ば、バタフリー!」
「バタフリー、戦闘不能! ジムリーダーは待機、挑戦者は、次のポケモンを!」
「ダメね。前回と同じ戦い方をしたら、同じ結果になるに決まってるじゃない。……まさか、私があなたがポケモンを育ててる間、のんきに待っているとでも思ってたの?」
 挑戦者である俺に対する失望を訴えるような表情で、カスミは俺に言葉を投げかけてくる。
 ――そんなの、当たり前じゃないか。そんなのわかってる。誰もがポケモン達と共に戦い、互いに練磨しているんだ。
 俺一人だけがレベルアップをねらっているわけじゃない。
 だからこそ、俺も考えた。日々練磨しあう中、各上の相手を倒すための、戦い方を。
「……いけ、フシギソウ!」
 二度目の登場となるフシギソウ。初めてであったころはただの塊だった頭の種も、今ではもうすぐ開花するまでに至っている。そして、僅かに振り返った視線には、熱がこもっている。それはバタフリーやピジョンよりも強い、信頼を秘めた瞳だった。
 フシギソウ。お前の動き次第で、全てが決まる……!
「再開!」
「フシギソウ、はっぱカッター!」
「スターミー、れいとうビーム!」
 くるりと舞ったのはどちらだったか。いや、水中から飛び出して舞うスターミーと舞うフシギソウはその動作の差でほぼ同時であり、わざを出すのは僅かにスターミーが速かった。
 放たれる氷点下をそなえた光線と、舞い散る緑の葉っぱ。直後、夏とは思えない、プール全体を凍らせるかのような冷気があたり一帯を包み込んだ。
 真実、俺の周囲のプールサイドに氷が張る。まるで全てを凍らせるかのようだった攻撃もプールほどの水の量を凍らせることはかなわず。
「フシギソウ、そのままはっぱカッター!!」
 そして、冷気をまといながらも、耐えしのぎ、立ち上がったフシギソウから、大量の葉の刃が放たれた相対する全てを切り刻むかのような攻撃が、空中に舞い上がったスターミーに真横から降り注ぐ……!
「スターミー、もう一度よ!」
 しかし、それらの刃を一身にうけながらも、尚も舞うスターミーから放たれる光が、刃一枚一枚を枯葉にするかのように飲み込み、そのまま、一瞬、俺の方を振り返ったフシギソウを、あっという間に飲み込んだ。
「――フシギソウ、戦闘不能! 挑戦者は、次のポケモンを出してください!」
 フシギソウをボールに回収し、ふと一息をつく。視線の先には、空中より舞い戻り、着水したスターミーが、わずかによろめく。
 ……フシギソウ、よくやった。お前の一撃は、確かにスターミーに一矢を報いている。
 だからこそ、ここからが本番。
「挑戦者、ポケモンを!」
 手持ちの最後の一匹。壁役なんて邪道だし、そもそもそんな事は考えなかった。
 四対二でありながら戦力はイーブンかそれ以下。だからこそ戦果としてはこれは当たり前の犠牲で、ピジョン、バタフリー、フシギソウが倒されたのは、俺が受け止めなければならない責任だ。
 勝利を確約するための責任。
 だから、それが果たせなければ、俺はもうこいつらを戦わせることはできない。
 だから、全てをお前に託す。
「いけ、」
 今はそれしかできない俺を、許さなくていい。
「――ブイ!」
 ただ、今は、勝利のために。
「いくぞ、ブイ!」
「キュイ!」
「シャワーズに、進化したの……? ふふ、みずタイプ同士、面白いじゃない。うけて立つわ!」
 俺の掛け声に答えて、プール中央の台に現れる"シャワーズ"をみて、カスミが不適に笑う。
 そう、俺は昨日になって、やっと気付いた。
 忘れていた、彼女の名前を。ニックネームを。
 ブイをイーブイとして、シャワーズとしてしか見なくなったのはいつだったか。なぜ俺は、フシギダネをフシギダネとして、ピジョンを、バタフリーを、"ポケモン"としてしか見ていなかったのか。
 俺が徐々にポケモンをポケモンとして扱うようになっていって、忘れていた感覚。
 そう、ブイは別に、俺のことを拒絶していたわけじゃない。
 ただ、名前を呼ばれなかったから、応えなかっただけ。そして、名前を呼ばなかったのは、俺だ。
 全てをやり直せる気がした。ブイと、ブイ達と一緒に、ポケモンリーグへの道を歩める気がした。
 俺達はトレーナーとポケモンである前に、仲間だ。そして、"ブイ"は、俺のパートナー。
 カスミ、スターミーがお前のSteady(相棒)ならば。
 シャワーズこそが、俺の最高の"Steady"だ!
「ブイ、かげぶんしん!」
「スターミー、10まんボルトよ!」
 スターミーから放たれる電撃が、ブイに直撃する直前。奇跡的なタイミングで、シャワーズの"影"を電撃が突き抜けた。
 僅かな運の差。高い命中力をほこる電撃がプールの中へと流れ放電されていくその合間に、シャワーズは自らの分身と共に台の上を縦横無尽に飛んでいく。
「ブイ、そのままみずてっぽう!」
 スターミーが着地した周囲をかく乱するように動いていた三匹のシャワーズが、おもいおもいに水を放つ!
 スターミーが体の軸から回転するようにそれらを回避すると、一つだけ確かな実体をもった水が、プールサイドに直撃して水を撒き散らす。
「スターミー、一番左のやつにサイコキネシス!」
「ブイ、まだだ、かげぶんしん!」
「サイコキネシスから10まんボルト!」
 スターミーの動作が一瞬とまった後、水を放ったと思われるシャワーズの周囲の水が、一気にシャワーズへと集まる!
 直後の、水球内での水圧。しかし、それでもなお足りないというかのように、続いて放たれた電撃が、その水球へと届き、中で暴れ狂う。
 何度目の放電が起きたか。周囲に水が行き渡り、審判すらも若干の退避をする中、水球の中のシャワーズは。
「っ、いない! またかわされた!?」
 ここにきて、千載一遇の勝機を得る……!
「ブイ、そのまま"とけろ"!」
 どこにいるとも、既にカスミの視界には入っていないであろうシャワーズに指示を出す。とける、つまり、周囲の水に同化して、完全にこちらを見失ったカスミのスターミーに、奇襲をしかける……!
「く、スターミー! 10まんボルトよ!」
「ブイ、かげぶんしんだ!」
 スターミーの電撃が放たれる、放たれる、放たれる。
 現れるのはシャワーズの影、影、影。
 ただひたすらむなしく放電現象だけを残していく10まんボルトを他所に、なおもシャワーズの影は増える!
「なら! スターミー、水ごとれいとうビームで凍らせるのよ!」
 10まんボルトの弾が切れたのか、ついにカスミは"そのわざ"を使う。
 スターミーが放つのは冷気。全てを凍らせるまでにいかずとも、プールの表面すべてを氷結させ、水中にいる何者かを閉じ込める牢にする事くらいは、あのスターミーならば容易いのだろう。
 徐々に氷結していくプールの水。それをもってして
 状況は、整った。
 ――すでに水上ではなく、氷上となったプールの上に降り立つスターミー。既にプールの中の水は氷の彼方へと消え、あたりには結果として霧のみが漂う。
「審判、判定は!」
 カスミが勝利を確信し、審判を促す。審判は戸惑うも、あまりの静けさに、そこに生気を感じ取れないようで。
「あ、え、……シャワーズ、せんとうふ」
 だからこそ、
「……ブイ! いまだ、"あなをほる"!」
 直下からの攻撃こそ、最大の奇襲になる……!
「なっ」
 俺のシャワーズは、そもそもとけるなんて高等な技は覚えていない。
 どこぞの怪しい黒服から手に入れた、あなをほるのわざマシン。かげぶんしんでかくらんして穴に潜りこんだことで、あたかもとけるを使ったかのように、場をこんらんさせることに成功した。
 そして、今が、最大の好機!
「ブイ、かみつけぇ!」
 シャワーズの、俺のブイの一撃が、スターミーに、確実に、食い込み。
 そして、今度こそ。判定が、下された。

 旅支度を整えた俺は、ハナダの出口まで来ていた。
 何人かの仲が良いトレーナーと別れを告げてからここまでやってくると、案の定というか、アミがいた。
「あ、お疲れ」
「なんだ、見当たらないと思ったらこんなとこにいたのか」
「いや、対戦が終わった後、すぐにいなくなったのそっちじゃない。……いつでもいそがしそうなんだから、困ったもんね。今回も、急に旅支度なんてしちゃうし」
 あきれ返るような声は聞き飽きたので、左から右へ受け流す。
「まあ、善は急げっていうしな」
「善い事なのかどうか」
「俺にとっては良い事だ、な?」
 そう言って、俺は後ろに控えている彼女に同意を求める。
「キュイ!」
「……シャワーズ、一体どうしたのよ。なんだかいきなり従順になったじゃない」
 訝しげにアミがシャワーズをみてくるが、それも仕方ないだろう。昨日の今日だし、本当に昨日まではひどいすれ違いがあったのだから。まあ、なにはともあれ。
「俺も実力を認められたってことさ」
 胸を張ってそういえる。
「何言ってるのよ。結局、負けたくせに」
 そう、例え、勝利を逃したとしても。
「傷を負った仲間たちに愛の手を。そして次の勝利への道を歩むのみ。……本当は、負けたらトレーナーも諦めるつもりだったけれど、そっちをやめることにした。まだまだ未熟だけど、俺はこの道をいこうと思ってる」
「そう。……まあ、いいんじゃない? ブイちゃんとなら、きっといい所までいけると思うわよ」
 あん? ブイちゃん?
「おいおい、勝手にニックネームつけるなよ」
「へ?」
「こいつの名前、さっき図書館にいって考えてたんだ。……ローレライ、どうよ、いい名前だろ!」
 ブイだなんて。進化したらどうすんだ。俺ならそんな名前は絶対につけない。……そうだろ、昔の俺。
「ローレライって、人魚? あれでしょ、船乗りを沈めちゃう……なんかかわいくない」
 そういって、そっぽをむいたのはアミだった。そのまますたすたと歩いて、距離が離れる。
 ハナダの出口と、ハナダの内側。ブリッジのトレーナーを続ける彼女は、おそらくずっとここでブリッジに挑んでくるトレーナーの相手をし続けるだろう。
「な、いいだろ! 誰がどんな名前つけたってさ!」
 そして俺は、ポケモンリーグを目指して、また旅に出る。
「ま、確かにそうだけどね。まあ、とにかく? そのローレライちゃんとあんたなら、いいとこまで行けるかもねってことで。……それじゃ」
 アミが軽く後ろ向きのまま手をあげて、そのまま歩いていく。
 だから、俺も見えないであろう俺の手をあげて、
「ああ。……またな!」
 そう告げて、後ろを向いた。
「キュイ?」
 ローレライが首をかしげて俺を見上げる。そっと髪をなでると、急ににこにこしだして、尻尾をふりながらしがみついてくるあたり、どうやら大人しくなったのはやはり俺の見当違いだったようだ。
 こんなのんきなローレライが歌ってたら、そりゃ船(おれ)もいつ沈むかわからない。
「ひとまず、クチバあたりに行くか……あいつは今どこなんだ……まさかクチバのバッジまで……」
 ローレライの歌に聞き惚れてはいけない。決して舵取りを誤らずに、ただただ、前へ。
 夏の炎天下の元、ローレライの声を聞きながら、いつか約束した、ポケモンリーグへ。



A☆TO☆GA☆KI**

 正直すまなかった(ω・`)
 最初はもっと萌え萌えな展開だったはずなのに、何かのスイッチが入ったようでもう萌えもんでもポケモンでもどっちでも通るような作品に。
 でも一応、イメージとしては萌えもんを使っているのでこっちでどうか一つ(A`)

 実話を元にしたフィクションなのはここだけの話。ホントはシャワーズじゃなくてピカチュウだったけど、その辺は気にしてはいけない。
 あとミニスカート萌えではありません><ちなみにアミは実在しています。
 それからシャワーズは俺の嫁。


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