さて―――
あの後、親父との沈黙合戦を終わらせてから自分の部屋で旅の準備をしているわけだが・・・
「よくよく考えてみれば、お前らもこっちのいざこざに巻き込まれて大変な目に遭ってんだよな・・・」
あらかた荷物をまとめあげたところで、物言わぬ2つのモンスターボールを手にとって語りかける。
勝手に捕まえられて、得体の知れない男の部下になれってんだから―――
しかも時代錯誤も甚だしい忍者としての部下に
「うん、俺だったらまずうんざりするか呆れかえる。確実に」
軽くため息をついて2つのボールを握ったまま外に出てみる。
俺だって今更忍者なんか時代遅れだとは思っているが、実際に親父はそれを成し遂げていたりするのだ。
だからこそ、俺も親父に憧れて忍への道を進むと決めた(まぁ子供の頃の話なんだけども)
「それでも、こいつらに忍者のことを理解してもらえなければ話は進まないからな」
先ずは右手に収まったモンスターボールのスイッチをカチリと押す。
すると収束した光が放たれ、萌えもんの姿を形成してこっちに向かい
―――こっちに向かい?
「っ!?待て、俺はこれからお前達の・・・」
「せぇりゃあぁぁっ!」
問答無用で放たれようとする右の拳。
たなびく金色の髪と黄色と黒のストライプ模様―――
知っている、この萌えもんは確か
「エレ・・キッド?」
「・・・・・」
何かが焦げたような臭いが鼻につく。
俺は―――本当に『髪』一重でエレキッドのかみなりパンチを避けていた
「えやっ」
突然の出来事に固まってしまったこちらへ、更にエレキッドは次の一手を放つ。
何か興味を持ったのか、彼女は驚いて落としてしまったもう一つのモンスターボールのスイッチを押してしまったのだ
「お前、何やって―――」
どうしてこうも俺の話を最後までさせてくれないのか。
案の定、次に現れた光も背後へ何かの得物を持って襲いかかってきた
「覚悟ッ!」
物騒な言葉を吐いて得物を振り下ろす萌えもん。
だが俺だって馬鹿じゃない、二度めの不意打ちは既に不意打ちではないのだから
「だからなぁっ」
エレキッドの初撃で自然と研ぎ澄まされた感覚は相手の一撃を上手く受け止め、掴みとった得物から相手を引き離すことに成功する
「人の話を聞けってば・・・」
ようやく事態が収まって話を切り出そうとするが、エレキッドは先ほどからモンスターボールをつついているだけ。
得物を取り上げたもう1人の子は―――
「あぁうぅ・・・」
先ほどの気迫はどこへいったのやら、今にも泣き出しそうな表情で奪い取られた得物を見つめている。
改めて自分の手にある相手の得物をみれば、それは大きな骨だった。
そうか、この子は―――
「ほら、ちゃんと返すからこっちの話を聞いてくれるか?」
銀色の髪の毛に、ちょんと生えた恐竜にも似た茶色の尻尾。
カラカラと呼ばれる萌えもんの少女は、サッと骨を受け取ると大切そうにそれを抱えて落ち着いた表情を取り戻した
最終更新:2007年12月22日 22:46