1スレ>>152


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夢を、見ていました。

夢の中のあなたは(ry


「寝惚けんで下さい」
「おゴぶッ!!」


傍らを歩いていた幼女の平手一閃で瞬時に頭が覚醒する。
どうやら俺は歩きながら寝惚けていたらしい。

「すまん……もう二日も寝てないからなあ」
「自業自得です」
この洞窟に入って恐らく十回目のため息をつかれた。ひょっとしたら俺が居眠り歩行してる間にも
実はもっと回数が重ねられていたのかもしれん。

「とにかく、居眠りだけは勘弁して下さいよ。曲がりなりにもここはチャンピオンロードなんですから」



そう、俺達は今萌えもんトレーナーの最後の砦、チャンピオンロード攻略の真っ最中だ。
そして冷静に俺をサポートしてくれているこの幼女こそがミシロから片時も離れず
旅してきた萌えもん・キモリである。

基本的に俺含め脳天気が多いこのパーティの唯一の良心として日々気苦労をかけてしまっており、
勿論俺としても申し訳ないと思ってるのだが……のだが……

何を血迷ったのだろう。俺はこのチャンピオンロードを前にして『萌えもん一匹で攻略して見せる!』
などとふざけたことをのたまってしまったのだ。
博士とハルカの前で。


「ちょっとした出来心だったんだ」
「出来心で命落としたら元もこもありません」
そして絶賛遭難中というわけである。ただでさえキツい洞窟だっていうのに一匹限定の縛りプレイゆえ
俺だけでなくキモリの消耗も馬鹿にならない。大量に容易した薬類や木の実類もそろそろやばい
のかもわからん。

いつも手に持っていた木の枝はもう欠片しか残っていない。先ほどのゴーリキーとの戦闘で
壊れてしまったらしい。

「ダメ、俺、も、歩けん…………」
「……はぁ。仕方ないですね」
大分歩いてきたというのに出口なんか見えやしない。連日の徒歩と戦闘でもう俺の足は
ボロボロだった。

適当に隠れられそうな場所を見つけバッグから毛布を出して座る。このざまじゃ洞窟から出てすぐ
萌えもんリーグに挑戦なんて無理な話だろう。

そしてキモリも休もう、と呼びかけようとすると当のキモリは休むどころか相も変わらない
涼しい顔で見張りに立とうとしているではないか。

「おーい、キモリもこっちで休めって」
「ご心配なく。私は人間と違って頑丈ですから」
そう強がっているけどどう見ても足が笑ってる。もちろん萌えもんの身体が人間よりも強く
出来ているのは事実だ。でも、だからといってあの小さい体であれだけ動けば流石の
萌えもんだってバテるだろう。

ともかく俺の勝手でここまで散々連れ回しちまったんだ。このまま更に働かせるなんて
言語道断である。

「よっと」
俺はキモリの小さい体を抱える。……いつもより軽いその体重がますます俺の良心を
締め付けた。
「ちょっと、何するんですか」
「何って、休むんだよ」
じたばたもがいて離れようとするけど哀しいかな、幼女ほどの大きさのキモリと
青年男性である俺とじゃリーチが違いすぎる。まあパワーはあるので押さえるのは
結構コツがいるんだけども。

「だから、私はマスターを……」
「いいってば。俺よりもキモリの身体のが心配だし」
「でも…………」
その後もキモリは俺に抱えられながらうんうん唸ってたがその内諦めたらしい。
で、大人しく俺のヒザの上にちょこんと座る。妙なところで生真面目だよな、こいつは。
しかしまあそれが可愛くもあるんだけど。

「そういや、その木の枝。洞窟出られたら新しいのに替えないとな」
「……いいです」
意味深な顔でまじまじと木の枝を見つめている。そこまで気に入ってたのだろうか?
と、思っていたら急にくるっとこっちを上目遣いで見つめた。

「……これはマスターがはじめて私にくれたものですから」
「あれ、そうだっけ……」
ええっと……そういやミシロを出たころ、なんとなくその辺の木の枝を折って「これ似合うかもな」
とか言ったかもしんない。
でもあれ独り言だったはずだし、その木の枝も捨てたんじゃなかっけ。
だからてっきり聞かれたにしても別の木の枝を使ってたのだと思ったんだが……

「ってもしかして、あれ拾ってたのか!?」
「そういうことです」
大真面目な顔をして頷く。なんとまあ……と苦笑が漏れる。こいつってやつは。
お、そういや確かポケットに……

「ほい、これ。新しいの」
俺はポケットから発掘した木の枝を取り出した。ちゃんと葉っぱもくっついている。
洞窟への道中で木に引っかけた時に入ってたらしい。

「え、あの……」
「いいから。あれって正確にゃ俺があげたわけじゃないだろ?
だから改めまして。 あ、もちろんこれだけってつもりじゃないぞ!? 洞窟出たら
ちゃんと何か……」

「いえ……」

キモリはしばらくその木の枝を見つめたあと、


「ありがとうございます」
またこっちを向いて柔らかく微笑んだ。

だめだ、俺もうだめだ。やられた。




それから俺はもう前半かけた迷惑を払拭するかのごとく頑張りまくった。
小脇にキモリを抱えながら。野性ポケモンも無視した。トレーナーもスルーした。
キモリが『逃げるのは卑怯』とかなんとか言ってた気がしたが気のせいだったぜ!

そんでもって、なんとその気合いだけで出口を見つけ出してしまったのだった。

「萌えもんリーグ到達ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
「……はぁ。マスターの強運は最早神がかかってるとしか思えませんね」

後ろでもう何回目になるかも分からんため息をつくキモリを振り返る。

「それで……その、ごめんな。こんなことになっちまって。ええと」
ああ、男が言い訳など情けないって言われるんだろうか。でもやっちまったもんは
仕方ない。謝るべきところは謝んなきゃならんだろう。

「何言ってるんですか? マスターの考え無しにはそりゃもう呆れましたけど、
別に怒ってなんかないですよ?」
『もう』のあたりに妙な強調があったのがひっかかるが……え、何だって?

「でも俺、遭難までして……」
「あのマスターの状況で遭難しないはずがないとは思いましたよ。
本当に何も考えてなくて、見栄っ張りで、大ボケなんですから」

あ、あれ、もしかして……俺もう既に呆れられてる!? と思った瞬間、キモリは
またいつもの涼しい顔でとんでもないことを言い放った。

「でも、そんなマスターと一緒だから楽しいんです」


きゅうしょにあたった! こうかはばつぐんだ! ええい、だからそんないい笑顔を見せるんじゃない!
連邦軍の萌えもんは化け物か!!! 貴様ニュータイプか!!!

「たぶん、みんなも一緒ですよ。そうでなきゃ誰がマスターについてこうとしますか」
「……キッツいな」
「冗談です。……さ、早くポケモンセンターに行きましょう。きっとキュウコンさんがお冠ですよ」
「のぅわ! そりゃマズい!!!」
マジギレ状態のキュウコン様の恐ろしさを思い出して背筋が寒くなった。
慌ててセンターに駆け出す。今更走ったところで変わらんだろうが、足が勝手に動くのだ。

そして俺はその後ろを走るキモリの呟きに気付いていなかった。


「これからもよろしくお願いします、マスター」





後日、遭難していたことはとっくにメンバーにバレており、鬼神のようなってたキュウコン様に
燃やされアメタマにビンタされナックラーに噛まれユンゲラーに念力で
ぶっ飛ばされチルタリスに説教されるというお仕置きを受けたのは余談である。
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