カラカラが自分の手持ちになって、1週間ぐらいはたったか。
まだ、カラカラはしゃべろうとしない。
「おーい、もういくぞー」
今日もじーさんのところに行くので、カラカラに呼びかける。
こいつはボールの中が嫌なみたいだから、普段はボールからだしている。
「……」
無言でこっちにくるカラカラ。少しはしゃべってくれ。
萌えもんハウスについてじーさんにあいさつする。
ここでもカラカラは無言のままだ。
「カラカラ、あいさつぐらいしろって」
「まだしゃべってくれないのか…。しかたないの」
そういってじーさんは奥のほうから、新しいメモ帳とペンをもってきた。
「これでならお話できるかな?」
すると、カラカラはそのメモ帳に、《こんにちは》と文字を書いてみせた。
…文字を教えた覚えはないんだけどな。
じーさんは「はいこんにちは。よくできましたね」と言ってカラカラの頭をなでる。
カラカラはすごくうれしそうな顔をしている。多分傍目からはわからないと思うけど。
「で、大事な話ってなんだよ」
今日は本当は休みだったのだけど大事な話があるとかで昼からここにきたんだ。
「…ああ!すっかりわすれてたわ。」
……頭大丈夫かじーさん?
「明日からここに来なくていいよ」
………………は?
「ちょ、ちょっとまってくれ。もう一回言ってくれないか…?」
「明日から来なくていいよ」
「なんでだ?俺なんかしたか?」
「いや、なんもしとらんよ。ただおつかいに行ってもらうだけだから」
「…それを先に言えよ!」
話を整理しよう。
なんでも、じーさんの昔の友人がグレンにいるらしく、
その友人のところまで荷物を届けてほしい、との事だ。
「要するにこの荷物を秘密裏に運びたいって事だろ」
「………」
「黙り込むってことはそうなんだな」
ぶっちゃけ、カマをかけただけだったんだけどな。
こういうときの嫌な予感ってのはよく当るし、俺は相手の目を見れば考えてることが大体わかる。
だから、俺はこう答えた。
「……わかったよ。行ってくればいいんだろ」
「危険な旅になるぞ?」
「んなことはなんとなくわかるよ。でも誰かが行かなきゃだめなんだろ?」
「たのむ」
それだけ言うとじーさんは真剣な表情からいつもの優しい顔にもどって萌えもんたちの方へ向かっていった。
次の日、俺は適当に旅支度をしてカラカラを起こす。
カラカラは眠そうな顔で《どこにいくの?》と聞いてきた。
「これから、ちょっと旅にでるんだけどどうする?」
正直連れて行くのに躊躇いを感じる。
旅にでるという事は野生の萌えもんやトレーナーと戦うことになる。
できるならこの娘を戦わせたくない。
だから聞いた。「一緒に行くかい?」と。
返事は思ってたよりも早く帰ってきた。
《いっしょにいく。いってますたーをまもる》
それを見て、決意ができた。
「じゃ、行くか」
そう言って俺とカラカラは旅にでた。
最終更新:2007年12月30日 03:06