3スレ>>952


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タマムシシティの一角に、強烈な光源が現れた。
光を発するその建造物、それは――タマムシシティの片隅に聳え立つ、大きなドーム状の建物。
タマムシシティジム――外からでは光が溢れるだけで、中の様子はわからない。
それでも、現地の住民はさほど驚く様子を見せない。
皆、始まったか――と、見えない戦いの顛末を脳内に描くのは、毎度のことである。


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07 天 高 く 舞 う 花 弁 の 調 べ
~ E c l i p s e ~


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「毎度のことだけど……ジムリーダーってのはホームで戦うときは強いのよねぇ…」
頭上を今にも降ってきそうなエネルギー塊に支配されながらも、軽口を叩くぺるこ。
口を割って出る言葉の軽さに反して、表情は重い。
「これがますたーが気をつけろって言ってた……オペレーション・で…で、…??」
「オペレーション・デイブレーク。」
擬似太陽を作り出すことから始まる作戦。その全容は把握しきれていないが、
少年曰く、その後の敵の動きが桁違いだ、という。狙いの一つは、これだろう。
「気をつけてパトリオ。ぶっちゃけちゃうと、何が来るのかわからないから。」
予測不能の日の出作戦。敵はどう打って出るか……。


「さて、どう打って出ますか?」
威風堂々と立ち振る舞うエリカ。
その傍らには天に向かいエネルギーを絶えず送り続けるキリエレ。
そして先陣の切るのは、ラプティ。
後方に位置するのは、両手の薔薇を天高く掲げたルメラ。
采配は整った。…あとは、その時を待つのみである。
「では…舞いなさい、ラプティ。」
エリカの命令で、ラプティは再び敵陣へと、飛ぶ――


「せぇぇぇぇあああっ!」
無数の花弁が、戦場の真ん中に狂い舞う。
その花弁の渦の中心にいるのは、ラプティ。花弁を纏い再びぺるこに向かって突進する。
「―――ッ!!」
再度、交叉するのはバトンと爪。しかし――
「ぅぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!」
力任せに、何度も何度もバトンを振り回すラプティ。その速さに隙は全くない。
ただ狂うがままに強襲しているように見えて、そこには一つの型が出来上がっている。
――なによ…これ、さっきと全然動きが違いすぎる――!!
防戦一方のぺるこ。相手の舞を両手の爪で捌くので精一杯である。
上段から下段から、右から左から――絶えず襲ってくる乱打はぺるこの行動を封殺する。
「ぐっ…ッ!ぺるこ…姉ちゃんを……助け…!」
行動を封されていたのは、こちらも同じく、パトリオ。
周りの花弁は、あたかも別の生物のように動き、パトリオを襲う。
渦の中心に辿りつくことができない――花弁は針の雨のようになって、降り注いでいた。
「くそ……っ!この……!」
拳と脚で花弁の嵐を振り払うパトリオ。その内部から昂ぶるボルテージは今、
「小賢しいッッッ!!」
放たれた。
不意に炎を纏った拳が、花弁を焼き払った。それを機に、密集する花弁はたちまち炎に包まれ、
その場に爆発的な炎上を起こす。花弁の渦はたちまち炎の渦と化す――
「っ!!」
高密度な花弁が仇となったか、それらは炎を纏いラプティに襲い掛かった。
異変を即座に察知し、迅速な動きで後退した。
三度開く、間合い。
「熱っ!熱熱熱熱熱熱熱ぅぅぅっ!!」
何とか窮地を脱したものの、その代償は少なからずあったようだ。
「パアアアトオオオリイイイオオオオオ!」
「ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁい!」
火達磨になったぺるこ……とまではいかなかったが、花弁の炎の襲撃は、ぺるこにまで被害が及んだようだ。
「ったく……火傷しちゃったかもしれないじゃない……でもまぁ、助かったわ。」
軽く感謝を述べる間にも、臨戦状態の構えは解かない。
「こっちも軽傷だよ……まだいけそう。」
そう言うパトリオの身体は、全身擦り傷切り傷だらけではあった。
…そうであったとしても、果たしてラプティの次の攻撃を捌き切れるかはわからない。
しかしながら、これで花弁を纏った攻撃は使ってこないだろう。互いに懐に一つ傷をつけられた感じだ。
「!!」
となれば――敵の新たな行動を警戒するものである。
ぺるこはこのときほど、してやられたと思ったことは今までなかっただろう。
「しまった…!パトリオ、今度はこっちから仕掛けるわよ!!」
「う、うん!」
同じように、パトリオも気づいたのだろう。顔からは明らかな焦燥が窺える。
二人は同時に、地を蹴り上げ、敵陣に突っ込む。
「気づきましたか…ですが、させません!」
迎えるのはラプティ。あちこちに火傷のある身体で、なおも二人の前に立ちはだかる。
「はぁぁぁぁ!」
パトリオは気合を一閃し、口から火炎を放つ。
燃え盛る炎がラプティの視界を奪い、襲い掛かる。
「ぐっ……!炎の使い手……やりづらいですね…しかし…!」
「今よパトリオ!!」
炎の障壁の中から、飛び出したぺるこは、そのままラプティに上から飛び掛かる。
鋭い爪をつき立て、ラプティを急襲した。
「!…くぅぅッ!」
最早何度交わったかわからない、ラプティのバトンと、ぺるこの爪。
戦況は一気に乱れ始めた。燃え盛る炎に視界は遮られ、姿をくらませたパトリオ。
彼が向かう先は、天に薔薇を掲げている、ルメラ――
先手を取り、強化したラプティによって足止めをした相手の真意はそう、彼女の行動を悟られないための撹乱。
「間に合えぇぇぇぇぇ!!」
ラプティの防衛網を突破したパトリオは、遂にその姿を捉えた――。
「く…まずい…!突破された!?」
「行かせないわよ!」
戦況は忽ち変化した。攻守が入れ替わり立ち代り、有利不利、立場の一転二転。
そしてこれを阻止できれば、少年側の圧倒的優位、できなければ、エリカの圧倒的優位が待っている――
「はぁっ!」
爪を真上から振り下ろすぺるこ。後方に意識を向けた、その一瞬を狙う。しかし――
「甘い!」
ぺるこの渾身の一撃――それをバトンで受けると、今度はその力の流れを横に逸らす。
それと同時に、ラプティはぺるこの懐へと一気に滑り込む――
「!ぁうっ!!」
ラプティのタックルを空いた懐にまともに受けたぺるこ。斜め後方へと吹き飛ばされる。
「はぁー…はぁー…ッ!」
互いに余裕のない、混沌とした戦い――それに終止符を打ったのは、次の瞬間だった――


「ラプティ!準備は整いました。"避難"しなさい。」
そのエリカの命令により、ラプティはぺるこ、パトリオと距離を置く。
エリカ側から見て、右翼にぺるこ、左翼にパトリオ。そして、中央にラプティ。
機は熟した。
「放ちなさい、ルメラ。」
「承知しました。オペレーション・デイブレーク第二フェーズ開始――」
天高く翳していた二束の薔薇を、遂に振り下ろしたルメラ。
その薔薇の指す先には――右手はぺるこが、左手はパトリオが。
「ツイン・ソーラービーム、発射スタンバイ――」
そして――薔薇から光が漏れ出した。


「くそっ!!間にあえ!間にあえぇぇぇぇぇ!!」
拳を溜めながら、ルメラへと猛接近するパトリオ。
「これが撃たれたら…もう…終わりだ……ッ!!」
パトリオの願いも空しく、まさに今、その光は放たれようとしていた――


「お願い…ッ!間に合って…!」
ここからではもう、妨害も避難も間に合わないと悟った、ぺるこはその場に座り込み、パトリオに願いを託す。


「――今言ったとおりだ、できるな、ぴくる。」
「…はいですっ!」


「ツイン・ソーラービーム、発射準備完了!」
「では…撃ちなさい!!」
そして――エリカの無常なる一言。その命令を、忠実に実行する。
「ツイン・ソーラービーム、発射!!」
…ルメラの薔薇から、あふれ出る光の奔流……それは、挑戦者の心を葬る、絶望の二文字。
タマムシシティジム、その戦場を駆ける二つの光の束は、たった今放たれた―――


「まにあわ…なかった……ッ!」
放たれた大量の光を目の前にして、一人絶望を嘆くパトリオ。
辺りは真っ白になり、周りの景色は光に飲まれていく。
――ぺるこ姉ちゃん…大丈夫かな……。
そして、光の中に肢体を放るパトリオ。
――おわった……


「終わりましたね。」
光の奔流はようやく収まりを見せる。勝利を確信したルメラは言った。
「………。」
一方で、複雑な表情を見せるエリカ。彼女には、これで終わりだとは思えなかった。
彼のことだ、必ず何かを仕掛けているに違いない。
…そこには勝利を信じつつ、半面で彼の行動に期待している自分がいた。
――私は何がしたいのだろう。彼を試したいだけなのか?
そして、敵を包み込んでいた光の束は、段々と細くなり、ついには消滅した。
「――なっ!?」「え――!?」「そんな……。」「あら……。」
ルメラ、キリエレ、ラプティ、エリカ陣営驚愕の光景とは――
「む…無傷ですってッ!?」


「はふー間に合ったのですぅ…!」
両手を前に突き出したままのぴくるは、安堵の息をついた。
「ご主人様も無茶なことをさせるのですぅ…ひかりのかべを直前に張れだなんて…」
「勘付かれたらあれは放たれなかった。」
味方も騙すような作戦であったが、こちらも功を奏して一安心か、少年は言った。
「あの二人にも教えていたら、あの動きはできなかっただろ。」
「敵を欺くにはまず味方から――ですかぁ?」
「そういうつもりはなかったんだがな……まぁ、そういうことだ。」
苦笑する少年。
「……なぁんか…」
「ん?」
「ご主人様、変わりましたね…」
そう言うぴくるの表情は、どこか嬉しそうである。
「……さぁ?どうだろうな。」
どこか歯痒くなって、顔を逸らしてはぐらかす少年。
「…それよりもわかっているな?次はもっと難しいぞ。」
「うぅ…が、がんばるのですよ!」
そして、次なる作戦へと踏み込もうとしている少年。ここからが正念場だ、と言うように――


「さぁ、正念場よ!」
先程まで座り込んでいたぺるこは、立ち上がり気合を一閃、爪を構えなおした。
「この爪が……真価を発揮するときが来たわ――!」
彼女が右手に填め直したのは、自身の手の二倍はあるであろう、長く鋭い爪を持つ篭手――
「行くわよ!!」
ぺるこはそう言いつつ右腕を伸ばして爪を前に突き出した。その瞬間――
ボォンッ!
篭手の先の爪が、爆音とともに射出された。


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「おいぺるこ。右手を見せてごらん。」
あれは、パトリオを引き取りに向かった時だった。出発の準備が終わり、道場を後にしようとしたとき、
ぺるこは突然シズクに声をかけられた。
「?」
何のことだかわからなかったが、素直にシズクに右手を差し出したぺるこ。
ぎゅむっ――
「!!いにゃにゃにゃにゃにゃっ!!」
……ちなみにこれは、痛がっているぺるこの声である。
目立たなくなっていた爪のつけ根の腫れを強く掴まれたのだ。
「あんたも無茶するねえ……こんな状態で戦ってたとは…」
しかしこれでも、大分よくなったほうである。なのにも関わらずこんなにも目立たない怪我を
一発で見抜く辺りは、流石ぺるこ達の師である。
「あのねぇ……素手で戦えって言ったのは師匠じゃない。」
「ふむ……確かにそう言ったけどね。」
そういうと、シズクは道場の書斎の方に消えていった。
………?
彼女がなにがしたいのか理解できないぺるこは、首を傾げる。
しばらくして、シズクはあるものを手に持って戻ってきた。
……途中でガタゴト騒がしい音が聞こえたのは聞かなかったことにしようと、ぺるこ。
「やるよ。」
シズクにそういわれてぺるこが受け取ったのは、なんだか古びた篭手だった。
「……いらない。」
ぺるこはあっさりそれを返そうとする。
「いいから貰っておきなさい。アンタならそろそろ使いこなせるはずだよ。」
「………。」
篭手をよく見てみる。ぺるこが注目したのは、長い爪。篭手の部位に比べると真新しい感じがする。
よく研がれていて、切れ味は申し分なさそうである。
「でも……デザインがダサいわ……。」
機能性はともかくして、まず見た目の時点でアウトだったようだ。


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射出された爪は、距離を置いたラプティに向かって放たれた。
「なんですって…!?くっ!」
不意を突かれたラプティは、バトンを振り回して反射的にそれを回避しようとする。
放たれた爪は、ラプティに襲い掛かる寸での所でバトンに弾かれ、軌道を逸らされた。
「まさかその距離から攻撃できるとは…!」
「ふふふ…甘いわよ♪」
まるで相手の行動が狙い通りだったかのように、妖しく微笑むと、ぺるこは右手を左右に小刻みに振った。
すると――くんっと、爪は逸らされた軌道を修正し、再びラプティに襲い掛かった。
「そんなっ!?」
がしっ、と爪が捉えたのは、ラプティのバトン。バトンの周りを一回、二回、周ってワイヤーが絡みついた。
「捕えたわよ――!」
にやりと笑うぺるこ。これでラプティの動きは制限された。
――これが狙い!?
ラプティは、はっとなりルメラのいるほうを振り向いた――


「せい!はぁ!!」
うなる怒号、燃え盛る拳――パトリオのラッシュは、ルメラを襲う――
「く……この…!」
回避一方で反撃の余地はないルメラ。もともと近接攻撃に長けていない上、相手は炎使い。
迂闊に手を出せない、まさに彼女の天敵である。
これでは彼女の主砲、ソーラービームもまともに出せない。
窮地に追い込まれたのは、たちまちエリカ側へと変わった――
――ぺるこ姉ちゃんがラプティを止めているうちに!!
一気に決着を付けたいところである、とパトリオは意気込む。
……その油断が、彼らを再びピンチへと誘うとは、思ってもいなかったが――


「まさかあのビームが避けられるとは思ってもいなかったでしょう?」
二人の間には、きつくワイヤーが張られていた。
「く……!」
「私も避けられるとは思わなかったわ。ご主人様とぴくるに感謝しないとねぇ…。い・ろ・い・ろ・と♪」
どうやら自分も欺かれたことに恨みがあるようだ。妖しく笑うぺるこの表情が物語っている。
「さて、終わらせましょう。こっちも余裕がないんだから……!」
そう言って、右手の篭手に左手を添える。ぐっと、足に力を込めて、タイミングを計る。
狙いはただ一つ。ワイヤーを一気に巻いて、ラプティの元まで突撃。
「いくわよ……!」
そして、地を一気に蹴りだす――その刹那の出来事であった。
「マジカルリーフッ!」
床に散りばめられた、無数の花弁。ラプティの一声によって、再び命が吹き込まれた。
ばっ!と一斉に宙に舞った花弁は、今にも飛び出そうとしていたぺるこに襲い掛かる。
「………なっ!」
反応は遅れた。ぺるこの肢体には、あっという間に無数の花弁が突き刺さった。
全身の耐え難い痛みが、襲う――
「つぁァぁっぁぁッッ!!」
一瞬の出来事に、がくりと膝を折るぺるこ。
ぶつっ!
二人の間をつなぐ、ワイヤーの戒めが切り落とされた。
「惜しかったですね……。」
バトンに絡まった爪を解き、地に放り捨てるラプティ。立つのがようやくという状況で、ぺるこを睨む。
互いに負った傷は計り知れない。壮絶な戦い――それを語る双方は、満身創痍。
「これで…あなたの得意な格闘術は…もう使えません…っ!」
勝利を司る天秤は、これで何度傾きを変えたことだろうか。


「おーっほっほっほっほっほ!甘い甘い、甘いですわぁぁぁぁぁッ!!」
一方こちらでも、勝利の風を吹き返す予兆は、示されていた。
高らかに勝利の確信に笑うルメラ。体中から、無数の茨が生えていた。
宙で全身を茨に絡め取られ、身動きのできないパトリオ。
全身を使って迂闊に懐へ攻め込んだ所を捕縛された。狙われたのはたった一瞬の隙。
「いい眺めでしょう?あなたの相方もじきに落ちるわ。
わかったかしら?…最後に笑うのはエリカ様なのよぉぉぉ!」
眉間に皺を寄せ、パトリオを睨み上げるルメラ。
「ぐ……うぅうう!!」
最後まで必死にもがき続ける、パトリオ。しかし、棘が食い込むだけで、茨の戒めは外れない。
「さぁ、考えてごらんなさい?この距離からさっきのビームを放ったら……どうなるかしら?」
無常にも、手にもった二つの薔薇を、パトリオへと向ける。
「これで終わりですわッ!」


「終わりですね。」
キリエレは静かに言い放った。擬似太陽に注入するエネルギーも、間もなく途切れる。
「しかし…手ごわい相手でした……。ここまであの二人がダメージを受けるとは…。」
予想外な苦戦を強いられたものである。しかし、これでもう終わり――
「手ごわい?」
と思っていたキリエレだったが、不意にエリカの、声によって目が醒める事になる。
「こんなものではないですよ…彼らは……。」
そういうエリカの目線は戦場に向いていなかった。
見つめていたのは、天井に浮かぶ擬似太陽。
……その球体の一部が、いきなり黒く欠け始めたのだ――
「!?」
同じく天を仰ぐ、ラプティは驚愕を隠し得なかった。
「驚きましたね――まさかこんなことを、やってのけるとは……。」
…もう一度、キリエレに擬似太陽を作らせるほどのエネルギーは残っていない。
彼女らを導く勝利の太陽は……今消え去ろうとしていた――


「どういう事…!?光が……」
俄に暗くなり始めた戦場。それはラプティの元にも変化が訪れた。
がくっ、と膝を折る、ラプティ。無理をした体に祟ったか、呼吸も荒くなり始める。
「はぁ…はぁ…ッ!力が……っ!」


「どうしてっ!?もっと、もっと力を!」
ルメラは、自分の身体から何か憑き物が取れたかのような感覚で、力を失っていくのを感じた。
これでは、自慢のビームもまともに撃てない。…否、撃てるが膨大な時間がかかる。
「何が…何がおきてるのよ!?」
謎の闇に侵食される太陽を睨みつけ、ルメラは狼狽した。


「いいぞぴくる。そのまま送り続けるんだ。」
策士は遅れてやってきた。少年は、ぴくるに命令した。
「ハイご主人様!うにゅぅぅぅぅ~ッ!」
掛け声こそ謎であるが、太陽をかき消す闇を操るのは、ぴくる。
次第に太陽は月のように欠け始めた。それは今も尚、続いている。
オペレーション・デイブレーク。
擬似太陽を天に作り出し、特定の属性を持つ者を活性化させる特殊技を軸にした、エリカの作戦。
要はあの太陽がなければ…打つ手はいくらでもある。
そしてそのために、ぴくるをサポーターに残したのだから。
「それならこっちは…それを食らうのみ。」
そう――皆既日食である。そしてその策は、願うまでもなく見事に嵌った。


「皆既日食ですって!?」
完全に覆われた太陽を見て、ルメラは愕然とした。
まさかこんな形でこの作戦を阻害されるとは思ってもいなかったからだ。
「…くっ!しかし、充填率は十分なのよ!威力は劣るけど…この距離なら――」
あっという間に暗くなった空間。そこにルメラの薔薇の光が点った……
その時だった。茨の中から光が灯されたのは――
「うっ!」
真っ赤な光。それはたちまち茨を飲み込み大きくなる――
「うぅぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
その光の中心にいるのは、パトリオ。
彼のボルテージは最高潮に達し、それは身体の外へと一気に放出された。
「いっ…いやぁぁぁぁぁぁ!火がっ!うぁぁぁぁぁッ!」
そして……その光はルメラ自身を遂に飲み込もうとしていた――
「オーバーヒートだぁぁぁぁぁあああッ!!」


「光を隠して月を晒す……なるほど。策士ですね……。」
さほど驚いた様子もなく、ラプティ。冷静に相手を捉える。そして――
「ですが!この距離では何もできないでしょう!」
バトンを構える。この距離なら得意な間合い。そして何より、彼女の間合いの外――
「私の勝ちです!覚悟!!」
そしてバトンを振りかざした。その瞬間だった――
ボンッ!
ぐらりと、ラプティは視界がぶれるほどの衝撃を正面から受けた。
――え…っ!?
何が起きたのか……全く把握できない。
ただ……自分の身体がゆっくりと傾いていることだけは、わかった。
「私の……勝ちよ。」
最後に聞いたのは――ぺるこの勝利宣言。それを機に、ラプティの意識は途絶えた。
どさっ……

「ごめんなさい。夜は私の時間なの♪」





七色に輝くレインボーバッジ。それを再び手にした少年は、エリカに向き合う。
「一つ…訊きたいことがあるんだが…」
「なんでしょう?」
負けた悔しさはあるだろう。しかし、それ以上に満足そうな表情である。
「ロケット団は……本当に村を焼き払ったことと関係がないのか?」
「………?」
不思議そうな顔をするエリカ。
「さっきの話は……」
「ロケット団が村を焼き払った犯人ではないという話ですか?」
「そうだ…」
「確かに…わたくしはそう申しました。…しかし関わっていないわけではないと思うんです。」
…情報がこんがらがって来た。ロケット団は直接の犯人ではないが、関連性はあるとエリカは言う。
謎は深まる一方であったが……
「エリカ様!!」
不意に眷属の一人が、エリカの元に大急ぎで駆けつけてきた。息も絶え絶えに。
「騒がしいですよ。どうしたのですか?」
「すいませ……はぁ…はぁ。っ、ヤマブキが……!」
その謎を解く機会が、思わぬ形でやってくることとなった――
「ヤマブキが、封鎖されました!!」


- 07天高く舞う花弁の調べ~Eclipse~ 完 -


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【設定集】

◇技解説編

・ツイン・ソーラービーム
つまりニ砲式ソーラービーム。威力倍、ダブルバウトなら全体化可能というとても強力な技。
性能はそのままソーラービームと考えてもらって結構です。また1ターン待つので、チャージに
膨大な時間が掛かります。それを補うコンボとしてデイブレークは役に立ちます。
これによって半分以下の時間で充填を完了させることができます。こんなコンボを考えるエリカは鬼ですね。

・マジカルリーフ
回避不能技。それ即ち、相手が回避不能な状況で使うという解釈で本編では使用されています。
こんかいは「はなびらのまい」によって舞い散った花弁を再度利用するという一人コンボ用に用いりました。
実際はこんな感じなんだろうなーとか考えつつね。

・エクリプス(ムーンライズ)
「にほんばれ」の対なる技があってもいいじゃない!ということでぴくるに使わせました。
日本語では皆既日食。つまり擬似太陽の光を遮断する唯一の方法。
性能は「デイブレーク」と同じで、特定の属性の者の戦闘能力をぐーんと上げてくれます。

・内在波動式気功術
ぺるこがラプティに止めを刺したときの正式名称。体内に眠っている力を引き出し、
気功として撃ち出す技。ぺるこの場合は「シャドーボール」です。
なんというか、「めざめるパワー」とかの類だと思ってください。モチーフはそれなんで。

・オーバーヒート
炎技は、基本的に使用者のテンションというかボルテージというか、そういう精神作用によって
使用できる技が制限されています。要するにスパ○ボの「気力」みたいなシステムですかww
そのため、戦闘開始からいきなり繰り出せる機会はそうないと思ってください。
窮地に追い込まれて発動したのは、そのためなんです。


バトル描写は難しいなァ……賛否両論あるでしょうが、実際の萌えもんたちはこんな感じで戦ってるんだー
ってのを自分なりに想像してみた結果です。こんなんじゃねぇよとか思う方もいるでしょうが、
その点は寛大な心でご容赦、ご了承ください。
ツールボックス

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