3スレ>>958


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「ユキメノコ、『冷凍ビーム』!」
「はっ、はい! えーっと、その……きゃあああああああああああ!!」

 相手のゴローンのいわなだれ。
 弱点倍率にユキメノコの薄さも相まって一発撃沈。
 賞金として4000円をふんだくられ、タダでさえ寂しい懐に大きな風穴が開いてしまった。

「ああぅ……ごめんなさいマスター……」
「うーむ……」

 素早さではこちらの方が上なのに、ウチのユキメノコはどうにもあたふたしてしまい先制のチャンスを逃してしまう。
 先制を逃しては折角の素早さも宝の持ち腐れ。
 是非とも気後れしない度胸をつけていただきたいのだが、どうすればいいのか……。

「やっぱり私にバトルなんて無理なんです……トロいし、ひ弱だし、根暗だし、いっつもオドオドしてるし、対人恐怖症だしry」
「あー、そんな事ないって、ないない」
「そんな事あります! 私いっつもマスターに迷惑掛けてばかりで、あの時もあの時もあの時も……」

 そしてこのネガティブ思考。
 座り込んで地面にのの字を書く背中に被るのは、おどろ線。
 萌えもんのカウンセラーというのは存在しないのだろうか。

「とりあえず暗くなる前に今日のキャンプを決めないと」

 今の季節は冬。しかもここいらの地域はよく冷える。
 暗くなる前にテントを張らないと面倒な事になってしまう。

「ほら、ユキメノコもしおれてないでご飯食べて元気出そうか」
「はいぃ……」

                ★

「はぁぁ……」

 私の口から漏れるのはため息だけです。
 その原因は唯一つ。

「今日もマスターに迷惑かけちゃいました……」
「まだ昼間のバトルの事気にしてるのか?」

 未だにしおれている私の元にマスターが夕ご飯を持ってきてくれました。
 萌えもん用の暖かいシチューです。

「私は大丈夫ですよ、マスター……大丈夫です大丈夫です大丈夫ry」
「……全然大丈夫そうに見えないな」

 マスターが私の隣に座って自分のご飯を食べ始める。
 ……ちょっとドキッとしてしてしまいました。

「? どうした?」
「あっ? えっ?! い、いえ、なんでもありません……」
「昼間の事はあんまり気にするなよ? ユキメノコは素早さ高いし弱くないんだから、もっと自信持とうな」
「はっ、はい!」

 やっぱりマスターは優しいです。
 私達、萌えもんの事、すごく大好きでいてくれて。
 ご飯だって皆一人一人の好みとか栄養とか考えてくれて、それに美味しいし。
 けど、

「マスターは今日もパンだけなんですね……」
「美味しいぞ、このパン。欲を言えばジャムが欲しい所だが、今は切らしているからなぁ」
「あの……私のご飯、食べます?」
「萌えもん用に調理したご飯は人間には食べられないよ。でも、ありがとうな。気持ちだけ貰っておく」

 そう言ってマスターはパンを美味しそうに口に運びます。
 でも、誰だって分かります。アレでお腹いっぱいになるはずありません。
 私はこんなに美味しいご飯を貰っているのに、肝心のマスターはパンだけなんて……。
 マスターの役に立ちたい……。
 いっぱいバトルに勝って、いっぱいお金を稼いで、いっぱい美味しいご飯をマスターに食べて欲しいです。

「少し残しておくか。ユキメノコ、『いつもの』お願い出来るかな?」
「はぃ……」

 私はマスターが残したパンを冷凍ビームで凍らせます。
 役に立ちたいけど……バトルが駄目な私が出来るのは、こんな事くらい。
 情けないです……。

「俺は少し散歩してくるけど、食べ終わったら食器は皆の分とまとめておいてな」
「はい、分かりました……」
「あんまり食が進んでないみたいだけど、食べなきゃ元気出ないぞ?」

 マスターは立ち上がって森の方へ歩いて行ってしまいました。
 ポツンと残される私。
 マスターはああ言ってくれましたけど、食なんか進みません。

「ユキメノコどうしたのっ?」
「げんきないわね」
「ごはんのこしたらダメー」

 私に声を掛けてくれたのは同じマスターの萌えもんのレアコイルちゃんでした。

「げんきだそうよっ! ごはんおいしいよっ!」
「ありがとう。でも、私マスターに迷惑掛けてばっかりで……恩返ししたくても私、バトルは全然ダメだし」
「だったら、バトルいがいでおんがえしすればいいじゃない」
「……え?」

 私はハッとして固まってしまいました。

「わたしたちはバトルもうよゆーだけれどー」
「『じしゃく』あるもんねっ。もうまけないよねっ」
「あたりまえじゃない。れんせんれんしょーって言ったで……」
「そうだよ…っ。………だよねっ……」

 レアコイルちゃんがまだ何か喋っていましたが、私にはもう聞こえませんでした。
 そうです。何で今まで私はバトルにこだわっていたんでしょうか。
 バトルがダメならそれ以外で、うんとマスターの役に立てばいいんです。

「レアコイルちゃんありがとう! 私、がんばります!」

                ★

 散歩の途中、座ろうかと思っていた折に丁度澄んだ湖を森の中で見つけた。
 俺は、これ幸いと畔に腰を下ろした。
 冷えた空気は頭を働かせるのに一役買ってくれる。
 加えて目の前には、凍った湖面に映える月。
 これなら、ユキメノコの事も何か良い案が浮かびそうだ。

「実力はあるんだよなぁ。大体の相手に先制が取れるし、氷系の高威力技だって覚えてる」

 後はやはり相手に気後れしない自信だろう。
 しかし、萌えもんの事を色々と勉強はしてはみたものの、萌えもんに自信をつけさせる方法などは見当もつかない。
 どうしようかとしばし頭を捻るが、良い案は浮かばず。湖面に映える月効果はなし。
 そこで、ふと気付く。
 ここは萌えもんひしめく森の中である。
 にも関わらず今、俺の萌えもん達は皆外に出て食事中。手元にゼロ。

「マズイかな……」

 散歩を中断してキャンプに戻ろうかと思ったその時、

「ますたーっ」
「おさんぽですか?」
「わたしたちもーますたーといっしょにおさんぽするー」

 賑やかな声が俺の耳朶を打った。
 見知った顔に見知った声。俺の萌えもんのレアコイルだった。
 俺は浮かせた腰を再び下ろす。もう少し、散歩を楽しめそうだ。

「ねぇ、ますたーっ?」
「ん? どうした?」

 気付くと、レアコイルが皆不安そうな顔を浮かべて俺に視線を向けていた。

「ますたーはユキメノコちゃんのことすてたりしないよねっ?」
「あのこもがんばっているんですよ……?」
「おわかれはさみしーのー」

 ユキメノコはダメな萌えもんなんかじゃない。
 少なくとも、俺とレアコイルはそんな事思っちゃいないんだから。

「大丈夫だって。捨てるなんて、そんな事する訳ないだろ?」

 そう言って、レアコイル達の頭を撫でて、安心させてやる。

「やっぱりますたーはやさしいっ!」
「いっしょうついていきます!」
「ますたーだいすきー」
「こら! 抱きついてくるなって! 背中に乗るな、頭に乗るなっ!」

 どうやら散歩は楽しめそうだが、考えに耽るのは難しいようだ。

                ★

「おはよーございます!」
「ん? ……ん?」

 レアコイルちゃんに諭された翌日。
 私は元気いっぱいにマスターを起こしてあげました。
 爽やかな朝は爽やかなお目覚めからなんです。

「……ユキ、メノコ?? んん?」
「はい! 不肖、このユキメノコがマスターの目覚まし時計の代わりを務めさせていただきました!」
「あー、そうか……ありがとう」

 テントの中で寝袋に包まっているマスターは何だか寝ぼけているようです。
 でも大丈夫です。こんな事もあろうかと準備は万端なんです。

「マスター、これを飲んでください!」
「んん……これは? ……って冷たっ!!」
「湖の澄んだ水をうーんっと冷やしておきました! さあ、ぐいっといって下さい、ぐいっと!」

 冷たい水をぐいっと飲めば、頭もスッキリして爽やかな朝を迎えられるはずなんです。

「あ、ああ……いただくよ」

 マスターは水を一気飲み。
 これでマスターは爽やかな朝を迎えられました。
 のはずなんですが……。

「マスター何か震えていますが……大丈夫ですか?」
「いや、大丈夫だよ……」

 もしかして、私が差し上げた水が冷たすぎたのでしょうか……。

「マ、マスター焚き火しましょう! 暖かいですよ!」
「そうだね。じゃあ……」
「わっ、私がやります!」

 早速失敗してしまいましたが、めげません!
 マスターをテントの外へ連れ出し、私は焚き火の準備を始めます。
 焚き火くらい私だって出来ますし、マスターに暖まってもらうんです!

「燃えやすい小さな小枝や落ち葉の上に薪を置いて、種火を起こして……」

 自分でも頼りない手つき……でも、コレくらいは出来ないとダメです。私、バトル出来ないし……。

「種火を入れたら息で空気を送り込んで……」
「あっ、ユキメノコ!」
「あっ……」

 気付いた時には手遅れでした。
 ゆきぐに萌えもんの私。当然、その息を吹きかけてしまっては……。

「ああっ……!」

 種火は元より、薪まで見事に氷漬け……。

「あっ、あっ、あのあのあの……! ごっ、ごめんなさいぃ……」
「いや、大丈夫だよ。そろそろ出発しようか。朝ご飯は町に着いてから食べよう」

 マスターは怒るどころか私を気遣って優しい言葉を掛けてくれます。
 でも、甘えちゃいけません! 自分の失敗は自分で取り返します!

「マスター、その荷物私が持ちます!」

 いつもマスターは重そうなバッグを背負っています。
 私がそのバッグを持てば、マスターは身軽になって楽が出来るんです。

「いや、でもコレ、相当重いから」
「大丈夫です!」
「でもなぁ……」
「私に持たせて下さい! お願いします!」
「……分かったよ。無理そうだったら代わるからな?」
「あ、ありがとうございますっ!」

 今度こそマスターの役に立つんです!
 気合を入れてバッグを持ち上げ……

「あ、あれ?」

 ビクともしないバッグ。

「んっ、んっ、んぅぅぅ~……!」

 バッグは一向に持ち上がる気配さえしません。
 頑張らないと、頑張ってマスターの役に立たないと!

「んぅぅぅ~!」

 ズリズリズリと、バッグを引きずる私。
 けど、私の腕に掛かっていた重さは無くなりました。

「おいおい。もう、いいってユキメノコ」

 マスターは私が持ち上げられなかったバッグを、いとも容易く背負っていました。
 私は出来なかった……私は……。

「さ、行こうかユキメノコ。ボールの中に戻って」
「嫌……」
「え?」
「嫌です!!!」

 あれ? 私何で叫んでるんだろう?

「私なんてもう全然なんです! バトルはダメだし! それでもマスターの役に立ちたくて!」

 私、こんな事言いたくない……。

「でも色々やったけど全部ダメで! もういいんです私なんか! ほっといて下さい!」

 止めて……こんな事言ったら、

「もう私に優しくしないで!」

 止めて……こんな事言ったら、

「もう私に構わないで!!」

 マスターに嫌われちゃう……!

「あ、あれ……?」

 はっと、我に返った後に残るのは強烈な罪悪感だけ……。
 どうしよう……どうしよう……!
 どうしよう……絶対にマスターに嫌われた……!

「あ、あの……マスター……」
「……出発しようかユキメノコ」

 マスターは、それだけ言うと歩き出しました。

                ★

 腕が悪いとは前から思っていた。
 だから勉強した。色々と。
 けど、勉強したのはステータスだとかバトルだとかそんな事ばかり。
 そんな事ばかり勉強したってそりゃあ萌えもんの、ユキメノコの気持ちは分からないよな。
 全く最悪だ。
 どこまで腕が悪いのかと。
 けどユキメノコもアレだよな。
 自分の事をダメだダメだって、そんな事絶対にないのに。
 ……あ、何か腹立ってきた。

                ★

「……………………」

 マスターは黙って歩き続けてます。
 私はその少し後ろを付いて行きます。

「……………………」

 絶対にマスターに嫌われてしまいました。
 もう二度と口なんて利いてくれません。
 ……じゃあ何で私、マスターの後ろに付いて行ってるんだろう。

「……………………」

 ずっとマスターと一緒に旅していたい……。
 ずっとマスターの萌えもんでいたい……。
 でも、もう……。

「ユキメノコ」
「は、はい!」

 口も利いてくれないと思っていたマスター。
 けれど唐突にマスターの口から私の名前が出て、驚いて顔を上げてみると

「ここは……?」

 私の目の前に広がっていたのは、氷の張った湖でした。

「マスター……?」
「ユキメノコ、『吹雪』使えるね?」
「は、はい……」
「ここで思いっ切り『吹雪』を起こしてみて」
「え……でも……」
「いいから」

 私にマスターはとにかく『吹雪』をやってみてと言います。
 訳は分かりませんが、私は黙って『吹雪』を起こしました。
 その理由は一つ、マスターに嫌われたくないから……。

「もっと! 思いっ切り!」
「んん……!」

 私は力を込めます。

「もっと! もっとだユキメノコ!」
「んぅぅぅぅぅ!!」

 もっと、もっと、もっと力を込めます。

「まだだ! もっと!」

 また優しい言葉を掛けて欲しい……!
 マスターの萌えもんでいたい……!

「んんぅぅぅぅ……んんん!!!」

 マスターとずっと一緒にいたい!!

「んああああああああああああああああ!!」

 轟音まで伴った『吹雪』。
 一寸先も見えないような冷風が周囲をひとしきり舐めた後、『吹雪』はやがて静かに止んで……

「わぁ……!」

 後に残ったのはキラキラと光る空気でした。

「すごい……空気が光ってる……!」
「ダイアモンドダストだよ」

 マスターが私の隣に立って言います。

「すごく寒い時に、晴れてたりすると起こる現象でね。氷の結晶になった空気中の水分が太陽の光を受けて輝いているんだよ」

 氷の結晶がキラキラと太陽の光を反射しています。
 まるでお星様が生まれているみたいです……。

「いや、湿度が低いとダメなんだけど、何とかなってくれたか」
「キレイです……すごいですね……ダイアモンドダストって」

 自然はただそこにあるだけでこんなにもキレイなのに、私は……。

「ダイアモンドダストはすごくなんかないよ」

 マスターは首を横に振って言います。

「この現象は気温がマイナス20℃程度にならないと絶対に起こらないんだ。つまり、コレはユキメノコ、キミが起こした事なんだ」
「え?」
「だから、すごいのはダイアモンドダストじゃなくて、ユキメノコの方なんだよ」

 コレを……こんなキレイなものを私が……?

「加えて言うと、この現象はすごく珍しくて俺も今回が初めての体験だ。ほら、ユキメノコは立派に役に立てたじゃないか」
「あっ……」

 私、役に立てた……? マスターの役に立てた……!

「マ、マスター! あのあのあのあのわたっ、私、私っ!」
「チョップ」
「きゃっ……!」

 マスターのチョップが、コンと私の頭に刺さりました。

「痛いです……」
「いいかいユキメノコ? 次に自分の事をダメなんて言ったら俺、怒るからね」
「は、はいぃ」
「なら、よし!」

 マスターは私の頭を優しく撫でてくれて、笑いかけてくれました。

「…………そっか」

 私は、マスターのこの笑顔を向けられたいから…………。

「マスター、大好きです………」
「ん? 何か言ったか?」
「ふふっ、何でもありませんよ」
「……まぁ、いいか。とりあえず町に行こうか。正直、この寒さは俺には堪えるよ」
「えーっ!? こんなにキレイなんですよ? もっと見ていたいです!」
「あー……分かったよ。チョップのお詫びだ。もう少し付き合うよ」

 二人で眺めるダイアモンドダスト。

「マスター、これからもよろしくお願いしますね……」
「ああ……」

                ★

「ユキメノコ、『冷凍ビーム』!」
「はっ、はい! えーっと、その……きゃあああああああああああ!!」

 相手のイワークのいわなだれ。
 弱点倍率にユキメノコの薄さも相まって一発撃沈。
 賞金として3000円をふんだくられ、タダでさえ寂しい懐に大きな風穴が開いてしまった。

「ああぅ……ごめんなさいマスター……」

 ユキメノコのバトルは相変わらず振るわない。
 けれども

「でも次! 次は勝って、マスターに美味しいご飯を食べさせてあげますから! 待っていて下さいマスター!」

 前よりも笑顔が増えたから、良しとしよう。















あとがき

ダイアモンドダストをネタに使っておいて自身は体験した事ないとかry
文法、用法、誤字脱字は未熟と思ってご容赦を
さーてユキメノコに努力値を振る作業に戻るかぁ
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。