4スレ>>113


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『スピアー』
それはバタフリー、アゲハント、ドクケイルと並び、非常に成長の早い萌えもんとされる。
優秀なトレーナーなら、数日の間にビードルから最終形態であるスピアーへと進化させられるし、たとえ野生下でも通常数週間、どれほど遅くとも一月の間には進化する。
その時間を越えても進化しないということは、極めて、稀。 

異変は突然起きた。
木にぶら下がっていた一匹のコクーンの体が突如ぶるぶると震えだす。
「う・・うあ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・!」
体から起こる何かに翻弄されるかのように体が揺れ、ぎりっと歯を食いしばる。
そんな仲間の様子に異変を感じたのか、周りの他のコクーン達が異変の起きたコクーンへと体を向ける。しかし、その姿を見る目に困惑や恐れはない。むしろ期待や羨望に満ちた眼差しがそのコクーンへと向けられていた。
「うああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
より甲高い絶叫が上げられた瞬間、そのコクーンの背中がビキッと音を立て、真っ二つにひび割れる。そして、そのひび割れから押し出されるかのようにズルリと別の体が現れた。
輝く金の短髪に、手に光る槍、お尻から生える針、そして大きく、空を舞うための羽を持った萌もん、スピアーとしての体が。
これは進化。言葉通り蛹から成虫へと羽化する、虫萌えもんとしては最も重要ともいえる成長。
「おめでとう!」
「進化おめでとー!」
「おめでとー!」
周りのコクーン達から賞賛と祝福を受けながら、スピアーへと進化を果たした元コクーンは少し照れながら、しかし幸せそうにその羽を広げ、空へと舞いあがって行った。

ここはトキワの森。多くの虫萌もんが生息する天然の迷路。その森の一角にある大きな木にこのスピアーの集落があった。蛹であるコクーンはあまり動けないため、こうして木にぶら下がり、スピアーへの進化の時をただひたすらに待っている・・・・

「・・・・・・・」
一方、大勢のコクーン達とは少し離れたところに一人だけポツンと木にぶら下がるコクーンがいた。惜しみない祝福を与えていた周りと違い、その顔には不機嫌さが浮かんでおり、ムスっとした顔でスピアーとなり大空を飛ぶ元コクーンを睨み付けている。
そんな視線に一部のコクーン達が気づき、ひそひそと話し始める。
「・・ねぇ、またあの子が見てるわよ・・」
「ホント。大方、また先を越されたからふてくされてるんでしょ。」
「それにしても変な話よねー、もう蛹のままどのくらい過ごしてたんだっけ?」
「確か・・3年くらい前からいたって他のスピアーから聞いたことあるけど?」
「うっそー!3年も!? 3年も蛹のままなんてありえなくない?!」
「蛹に成りたてのころにどっかぶつけたんじゃない? そのまま成長がとまっちゃったとかー?」
「うわー・・・ 気の毒ー・・・ 一生蛹のままとかあたしなら耐えらんなーい。」

そんな周りの声を受けながら、そのコクーンはフンッと鼻を鳴らし、自分がぶら下がっていた木からひょいと飛び降りた。
そのまま地面に激突するかと思われたが、驚いたことにすたっと慣れた様子で着地すると、そのまま器用にピョンピョンと跳ねながら、どこかへと去っていった。

・・スピアーの進化は通常数週間から一月の間に起こる。にも関わらず、このコクーンは3年もの間ずっとコクーンのまま、進化できずにいた。
スピアーが進化するのに3年もかかるというのは明らかに異常であり、どこか欠陥があると考えられてもそれは決して間違いではない。
しかし、彼女には自分が体に悪影響を及ぼすような行動はまったく身に覚えがなかった。むしろ、空に憧れ、ビードルのころからスピアーへと進化する!という願望が人一倍強かった彼女は進化に向け、懸命に努力をしてきた。体調管理に気を使い、ひたすら努力を重ねた。事実、同期のビードルの中で最も早くコクーンになったのは彼女のほうだった。
そのままスピアーへの進化一番乗り・・・と、確信していたのもつかの間、どういうわけかそれからというものさっぱり変化が起こらず、気がつけば他のコクーンにあっさり進化の先を越され、それどころか進化の出来ないままずるずると時ばかりが過ぎ、あっという間に年単位の年月が過ぎてしまっていた
進化の一番乗りどころか一番の落ちこぼれ・・・。コクーンのまま進化できないという事実は彼女の自尊心や夢を大いに傷つけていた。
周りからの期待の目が、しだいに同情や侮蔑に変わっていく姿を彼女は感じていた。 だが、彼女は決して諦めはしなかった。否、むしろその周りの目が彼女の反骨を煽り、進化に対する願望は、彼女のなかでますます強くなっていたといえた。

そうして、彼女は今日も1人巣から離れ、ピョンピョン飛び跳ねながらいつもの場所へと向かう。途中で手ごろそうな木片や石を拾いながら。

本来、コクーンとは敏捷性には欠けた萌えもんである。しかし、長い蛹生活の中で、彼女は蛹のままでも素早く動ける方法を身につけていた。

そしてしばらく移動していた彼女はだだっ広い広場へと出てきた。そこは木のおい茂るトキワの森には珍しく木がなく、主に草むらなどの隠れ家に潜みたがる萌もん達はあまりやって来ない。それゆえに彼女の『日課』には最適な場所と言えた。

「・・よし。」
周りに外敵が居ないことを確認し、拾ってきた木片や石ころを入れた袋(袋は『いとをはく』から作り出した自前品。)を持つ。そして、袋からいくつか取り出しそれを大きく空へと放り投げた。そして・・・・・
「おりゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
掛け声一閃とともに飛び上がり、空に散らばった木片や石にむかって飛び掛る。
「せえええええぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!」
とても鈍足なコクーンとは思えぬ敏捷さで次々と目標を破壊していくコクーン。
しゅたっと地面に飛び降りた時には投げられた木片や石は見事に粉砕されている。
「・・・よしっ! 次!!」
と、なにやらガッツポーズをとり、再びごそごそと自前の袋を漁りだす。
「でりゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
そして再びまた同じことを繰り返す。



彼女は自分が進化できない理由をずっと考えていた。
そして、ある1つの結論へたどり着く。多くの萌もんの場合、進化には経験が必要になる。経験をつみ、よりレベルを上げていけば進化の域へとたどり着く。
彼女はそこに目をつけた。すなわち、自分も鍛錬し、経験をつめば進化できるのではないか?と。
それから、彼女の特訓は始まった。
まず、巣から飛び降りるところから始まり、特訓の場である広場までダッシュ(実際は飛び跳ねているわけだが)それから日が暮れるまで的を正確に壊す練習や、その辺にあった岩を砕く練習など、ただただひたすらに己を鍛え上げる・・・
こうした特訓のせいあってか、彼女はコクーンにしては規格外の強さを手にしていた。
一度、周りに隠れる場所のない広場という地形上、上空からみれば格好の獲物であった彼女にピジョンが襲いかかってきたことがあった。
通常なら捕食者と被捕食者に別れる2手であるが、このコクーン、逃げ出すどころか真っ向から勝負を挑み、あまつさえ相性の不利もあったにも関わらず、ピジョンの攻撃をあっさりかわし糸で絡めとった挙句、どくばりでもってさんざんに小突き回し、ピジョンの方がほうほうの体で逃げ出した。などという結果で終わらせてしまった。
こうしたこともあってか、狂ったようにひたすら訓練を続ける彼女に周辺の萌えもんたちは気味悪がって近づかず、彼女の孤独性をますます高める結果となっていた。
もっとも、彼女にとってはそんなことはさしたる問題ではなく、より重要な進化への訓練にのみ明け暮れていた。
何が何でもスピアーに進化するという夢、いや、もはや執念ともいえるその一点にのみすべてを捧げ続ける・・・・ こうした生活が彼女にとっての日常であった。

しかし、こうした日常のなかに小さな、ごく小さな変化が訪れる。
その変化が訪れるのは、この日から数日経ったある日のこと・・・・・・・・・・
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