5スレ>>231


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「さて、と。ともしび山に行く前に、あいさつ回りにいかないとな……。それよりも……」
 モンスターボールをポイと放り投げて、ハブネークを外に出してやる。
「えっと、あれ?」
 中に入ったばかりでいきなり呼び出されたハブネークが何故というように首を傾げる。
「お前さんの名前を聞いてないからな。教えてくれないか?」
「えと、私の名前はハブネーク、私は、マスターって呼べばいいかな?」
「好きにしてくれ。歩けるな?」
「えええ、外、歩くの……?」
 俺は一つため息をつく。思ったとおり、人間の前に出るということが相当怖いようだ。
「俺の傍を離れなきゃ大丈夫だ。お前に何かしようとするやつがいたら、俺が張り倒してやる。人間相手なら負けないさ」
 安心しろ、と、ハブネークの頭を軽く撫でてから、俺は家を出た。

 あいさつ回りの途中、育て屋の前に行った時、爺さんと萌えもんトレーナーらしき男がなにやら話しているのが見えた。
 トレーナーはすぐに育て屋から萌えもんを引き取って船着場へと歩いていった。
「お、パープル、いいところにきたの」
 隣につれたハブネークを見てから爺さんが俺の前に歩いてきた。
「実はしばらく仕事で開ける事になったんで、挨拶にきたんだ」
「うむ。そこでじゃ、萌えもんトレーナーとして旅立つパープルにこれをやろう」
 爺さんが俺に手渡してきたのは、卵だった。
「萌えもんの卵じゃよ。卵が孵るまで、時間はかかるが、お前さんの手助けになってくれるじゃろて」
「これ、何の卵なんだ?」
「ナイショじゃ」
 爺さんは意地悪く笑ってから、萌えもんの世話に戻っていった。ああいうときの爺さんは聞いても答えてくれないので諦める事にした。
 これ以外は特に変わった事もなく終わり、1の島へ戻ってともしび山へと向かった。
「マスター、この山登るんですか……?」
「ああ、しかし、トレーナーが厄介だな、今まで丸腰だったからただの話し相手だったんだが、多分、勝負をしかけられる」
 一つため息をつき、諦めて山を登り始める。そして予想通り、いつもここにいるトレーナーの男に声をかけられた。
「お、パープル。お前も萌えもんトレーナーになったのか。勝負でもいっとくか?」
「いや、見ての通り、こいつしかつれてないんでな。未熟だから負けは見えてるし、どうしても勝負したいなら俺がお前さんの萌えもんの相手になるぞ?」
「うへ、そいつは勘弁。ガソリンぶっかけられて火をつけられるのは勘弁だ」
「ははは! お前冗談のセンスが上がったじゃないか! ま、悪いな、また今度で頼むわ」
「おう、ビクビクしながら待ってるぜ」
 そんなやり取りを繰り返しながら、ともしび山の山頂付近までのぼり、いつもの場所へと向かう。
「パープル」
 いつもの場所のそばまで行ったところで、ファイヤーが俺の前へと降りてきた。真っ赤な髪が印象的な女性。
 ファイヤーはとても優しくて、初めて会ったときは、そんなに強い萌えもんだとは思っていなかったのを思い出す。
「待ってたよ」
「ファイヤー、今日は折り入って頼みがあるんだ」
「ん、言ってみて?」
 ファイヤーに、ニシキに言ったように、マサラまで連れて行って欲しい旨を伝えると、即答で答えが返ってきた。イヤだと。
「そっか、イヤなら仕方ない……。なら他の足さがしてみるよ」
 きびすを返して山から下りようとすると、ファイヤーが俺の前に飛んできて、両手を広げ通せんぼをする。
「遠いところに行っちゃイヤ、寂しいじゃない、私、パープルのほかにまともな話し相手なんていないんだから」
「しかし、仕事受けるって言っちゃったからな。そんな二度と会えなくなるわけじゃないんだからいいだろ?」
「それじゃあ、私と勝負しよう。もし勝ったら、ついてってあげる。私は空に飛ばないし、火の技も使わない、これがハンデよ」
「えええ!? 私、ファイヤーさんと勝負するんですか……?」
 ビビるハブネークをモンスターボールに戻らせて、荷物を傍らに置いて身軽になる。
「今までの喧嘩の戦績って、どうだっけ?」
「さぁ、ちょっと覚えてないわ」
 お互いに地面を蹴り、間合いを詰める。最初にファイヤーが攻撃に出て、右からの蹴りを入れようとしてくる。
 その蹴りをガードするが、反撃の間もなく次の攻撃を繰り出してくる。一撃一撃が重い……。
「やっぱり、殴り合いはなれないわ」
「絶対嘘だろ……!」
 続くファイヤーの右の拳を掴み、勢いを利用して投げ飛ばす。あっけなく投げが決まり、ファイヤーが地面に叩きつけられる。
「あたたた……、ちょっとは加減してよ~……」
 少し涙目になりながらファイヤーが立ち上がり、ため息をついた。
「お前、かなり手抜いてるだろ……?」
「あはは、ばれちゃったか。だって~……、私も連れてって欲しかったんだもん」
 頬を赤らめながら両手の人差し指を合わせてもじもじとする様子が妙に可愛い。本当に伝説の萌えもんなのか疑わしい……。
「で、恥ずかしくて素直にいえないから俺に喧嘩を売ったと」
「うん、というわけで、ボール投げて? イヤなんていわないわよね?」
 俺は頷いて、ポイとモンスターボールを放り投げる。ハブネークの時と同様、全く動く事なくボールは蓋を閉じた。
 動きが止まったボールを手に取り、放り投げてファイヤーを呼び出す。
「ただ、お前は目立ちすぎるから基本的にバトルには使わないぞ?」
「ん、それでいいわよ。話し相手になれればそれで」

 そんなこんなで船にのってクチバに渡り、そこからファイヤーの背に乗せてもらって俺はマサラまでやってきた。
「えーっと、萌えもん研究所、ここか」
 さほど広くもない町だったので研究所はすぐに見つかる。そのドアをくぐると、赤い帽子の少年ともう一人、元気そうな少年が萌えもん図鑑を受け取ったところだった。
「お、パープル君か、来るのが早いな」
「はじめまして、地元の鳥萌えもんにクチバからここまでのっけてもらいましたからね」
「ほう、萌えもんとは無縁だったと聞いていたが、もう捕まえたのか。見せてもらっていいかね?」
「いいですよ」
 ハブネークとファイヤーのボールを放り投げ、2人を呼び出す。
 ファイヤーを見たとたん、オーキド博士の顔色がみるみる変わっていく。
 萌えもんを選んでいた二人の少年も、手元の図鑑を取り落としそうになっていた。 まぁ、これがファイヤーを見たときの普通の反応なのだろう。
 ファイヤーは堂々としていたが、ハブネークはというと、俺の後ろに隠れてしまっている。
「この娘はもしや、伝説の萌えもんと名高い……」
「ファイヤーです。俺の育ての親みたいなもんですよ」
「パープルの育ての親のファイヤーです。よろしくおねがいします」
「あ、ご丁寧にどうも」
 ファイヤーがお辞儀をすると、オーキド博士もつられたようにお辞儀を返す。
「のぉ、パープル君、ファイヤーと記念写真取らせてもらってもいいじゃろうか?」
「ファイヤーが構わないなら、俺はかまいませんが」
 この爺さん、案外ミーハー?らしい。オーキド博士がファイヤーの方を向くと、ファイヤーがいいですよ、と答える。
 とても嬉しそうにするオーキド博士、この人は本当に萌えもんが好きなんだなぁというのが俺の感想。
 カメラを手渡されたので、ハイチーズとお決まりのセリフをいいつつ、シャッターを切る。
 幸せそうなオーキド博士の様子がとても印象的だった。
「それで、これが本題の萌えもん図鑑じゃ。これを完成させてほしい」
 ひと段落ついたところで、赤い手帳のようなものを渡される。
「了解しました、ファイヤー、戻ってくれ」
 ファイヤーをボールに戻す。2人の少年は、オーキドが写真を撮っている間に出て行ってしまったようでもうそこにはいなかった。
「オーキド博士、図鑑収集及びトレーナーをするにあたって、オススメの萌えもんとかありますかね?」
「んん、そうじゃのぉ。おそらく、ジムリーダーとも戦う事になるじゃろうから、トキワの森でピカチュウを捕まえてみてはどうじゃ?
 このあたりではあまりみかけない電気を使う子じゃから、役に立ってくれるとおもうんじゃが」
「ジムリーダーですか。なかなかやりがいがありそうでいいですね。では私はこれで……」
研究所を一度出たが、思うところがあって、研究所にもう一度入る。
「オーキド博士、ちょっと電話借りれませんか?」

研究所をでて、何事も無くトキワの町へと向かう、その間にハブネークの様子見もかねて、
野生の萌えもんとバトルさせてみたが、意外にも強く、このあたりの萌えもんでは相手にならなかった。
その後のハブネークはかなり落ち着いてきたようで、びくびくすることも少なくなった。
トキワの町についた頃には暗くなってしまっていた。俺は迷わず目の前の萌えもんセンターへいく。
「宿舎の予約したパープルです」
受付にそう声をかけると、鍵を手渡された。宿舎に向かう途中、センターのソファに見覚えのある少年を見つける。
「よぉ、坊主。オーキド博士んとこに居た坊主だろ?」
「俺は坊主なんかじゃない! もうすぐ18だ」
「おっと、そりゃ悪かったな。俺はパープル。お前さん名前は?」
「レッドだよ」
「そんないやそうな目で見なさんな、別にバトルしかける気でもないし。ちょっと話しが聞きたかっただけさ。その子の事とかな?」
 レッドの傍らに座る、フシギダネに視線をうつす。
「博士からもらった子で、フシギダネって名前だよ。そっちの子は、たしかハブネークだっけ?」
「ああ。んー、おまえさんソファ組かソファなんかで寝てたら腰痛めるぞ、手持ちが2だから場所開いてるんだ、ついてきな。
 ベッド貸してやるよ。おまえさんの手持ちその子だけだろ?」
 そう、夕方になると宿舎が一杯になってしまうため、センターのソファで寝るトレーナーも結構いる。いわゆるソファ組だ。
 レッドをつれて宿舎に入り、ボールを放り投げてファイヤーを呼び出す。
「自由にくつろいでてくれ、俺はちょっとぼ……レッドと話しするから」
 坊主、といいかけて名前で呼びなおす。
「どうして博士の所に?」
「ああ、仕事だよ仕事。萌えもん図鑑を完成させるのを手伝ってくれとさ。給料はさほど良くないがなぁ」
「そうなのか……」
「おまえさんは?」
「……」
 レッドの様子をしばらく観察し、ニヤリと笑って見せる。
「お前、俺と似た臭いがするな」
「何だって?」
「やっと、親以外の信用できるのを見つけたって顔してるぜ?」
 絶句。やっぱりレッドは孤立してたタイプか。
「ちょっと、その子借りてもいいか? 変わりにハブネークとファイヤー置いてくから」
「ああ……。フシギダネ、ちょっとパープルさんについてってやってくれ」
「呼び捨てでいいぞ~?」
 そういってから、フシギダネがついてくるのを確認し、宿舎を出る。
 センターに戻り、自販機でミックスオレを買ってフシギダネに手渡してやる。
「あいつの事、大事にしてやれよ?」
「マスターの事?」
「ああ、意地張る事多いとおもうけどな、結構危なっかしいから、しっかり支えてやりな?
あいつみたいなタイプは、思わぬ事で折れるもんだからな、マッチみたいに簡単に、な」
「マスターの事、馬鹿にしてるの?」
 フシギダネが怒ったような顔でこちらを睨みつけてくる。
「いいや。俺もそうだったからさ。お前はレッドにとってもう特別だからな、あいつに自覚は無いだろうが」
「特別……」
「そう、特別だ。お前が支えてやれば折れる事はない。それだけ言っておきたかったんだ、悪いな」
「ありがとう。私頑張るよ」
「じゃ、アイツが心配しないうちに戻ってやりな。後ファイヤーとハブネークに俺は散歩にいったって伝えといてくれ」
「うん!」

 翌日、早朝に目が覚めた。みんなまだ眠っているようだ。
 俺は大きく息を吸い込む。
「お前ら! 朝だぞ! 起きろ!」
「わわわわ!?」
 ファイヤーとレッドとフシギダネは普通に起き上がっただけだったが、ハブネークだけは俺の声に驚いたのか、
ベッドから落ちて頭を打っていた。
「朝飯食べて出発するぞ。日がくれるまでにニビに行きたいからな!」
 しばらくこのあたりでフシギダネとバトルの練習をするというレッドとわかれ、俺はトキワの森に入った。
「なんか、不気味なところだね……」
「確かにちょっと薄暗いなぁ」
 ハブネークの修行がてら虫取り少年らの相手をし、出てくる虫形の子らを捕獲して、森の中を昼ごろまでうろつく。どうやらピカチュウというのはあまり数のいない子のようだ。
「あ、マスター、あれ」
 ハブネークが指差した先の木陰に、黄色い服の端っこが見えた。
「おっしゃ、捕まえるぞ」
 走ってその黄色に近づくと、オーキド博士が言っていた萌えもんの特徴と見事に合致した。ピカチュウだ。
「やああ!」
 俺達に驚いたのか、いきなりハブネークに電撃を食らわせてきた。こいつは厄介だ……。
「ハブネーク、注意をひきつけろ、出来るな? 攻撃はするな、お前が叩くと多分1発で気絶する。」
「うん!」
 ハブネークが何度か電撃を食らったが、それほど効いた様子はない。レベルがそれだけ違うということだ。
 そしてハブネークに気を取られている間に俺はピカチュウの背後にまわり……
「ほい、捕まえた」
「わ!? 離せ! 離せ~~」
 ピカチュウの服の襟首を掴み、猫でも持ち上げるようにしてピカチュウの身体を持ち上げる。
「はーなーせーー!」
 必死に放電するが、俺には効かない。
 昨日夜に散歩に行った際、ゴム手袋を買っておいたのだ。
「おまえさん、このまま投げ飛ばされて痛い思いするのと、痛い思いをせずにつかまるの、どっちがいい?」
「うー、離して! 離して離してはーなーしーてー!」
「ならお望みどおり、離してやろうか? ちょーっと勢いつけてな」
 思い切り振りかぶって、投げるフリをしてみせる。正面には太い木。
「や、やめてやめて! つかまるからやめて!」
 その言葉を聞いてぴたりと動きをとめて、ゆっくりと地面に下ろしてやる。
「うぅ、怖かった……」
「あー……、マスターが泣かせた……」
「つかまってくれるんだよな?」
「うん……」
「暴れてボール潰したりしたら、木に叩きつけるからな」
 ボールを軽く放り投げると、脅しがよほど効いたのか全くゆれずにボールの蓋が閉まった。
「よっし、目的の子は捕まえたし、さっさと森抜けるぞ」
 キセルに葉を詰めて火を付け、さっさとその場を離れる。
「あ、マスター待って!」
 先ほど勝負した虫取り少年を捕まえて、ニビまでの道筋を聞いて歩いていくと、割とすぐにニビに到着した。
 迷うと2日ほど出て来れなかったりすると聞いていたため少々拍子抜けだ。
 前々から思っていた事だが煙草を吸っていると萌えもんは出てこないようだ。特に虫や草系の子は出てこなくなってしまうらしい。
 早くにニビまで到着したのはそれで余計な時間を使わなかったせいもあるのだろう。
「っし、ちょっと散歩でもするかな……」
 それほど大きい町でも無いが、散歩するにはちょうどよい大きさだ。ハブネークをつれてのんびりと町を散策する。
「ハブネーク、長い事歩いて疲れたろ? ちょっと休憩するか」
「うん」
 町の片隅にベンチを見つけてそこに腰掛け、ハブネークを隣に座らせる。
「ほれ」
 昨日余分に買ったミックスオレを手渡すと、嬉しそうに飲み始める。それをみてから俺はブラックコーヒーの蓋を開ける。
「お前甘いもん好きなんだなぁ」
「甘いもの大好きだよ。マスターは何飲んでるの?」
「これはブラックコーヒーだよ」
「おいしい?」
「お前にゃまだ早いよ。ほれ」
 缶を渡してやると、一口飲んでから露骨に顔をしかめ、あわててミックスオレを飲み始める。
「マスターよくこんな苦いの飲めるね……」
「まぁ、甘いもんのんですぐ後だから余計苦さが際立つんだろうけどな。飲まないなら返してくれ」
「うん」
「さてと、そいじゃ、萌えもんセンターにいくかな」
 センターに着き、宿舎に入ってベッドに座り、それぞれをボールから呼び出す。
森で捕まえた虫系の子たちはボックスに預けておいたため、ここに居るのはファイヤーとピカチュウとハブネークと俺だけだ。
「ボールの中って窮屈でいけないわー……」
「うー……」
 どうやらピカチュウにはずいぶん警戒されてしまっているようだ。
「ピカチュウ、ちょっとこっち来い」
「な、何?」
「いいから、俺の前来て後ろ向け」
 恐る恐る、俺の前に来て後ろを向いたピカチュウの髪に軽く触れる。どうやら今は静電気は溜まってないらしい。
「じっとしてろよ。おいしょ……」
 ピカチュウを膝の上に座らせ、髪に軽くクシを通していく。
「あうあう……」
「あら、いいわねー……。私も毛づくろいしてもらいたいわ~?」
「後からな。ハブネークもしてやるからして欲しかったら待ってろ」
 丁寧にクシを通していく。しばらく続けていると心地よさそうなため息など聞こえてくる。
「お前綺麗な髪してるなぁ……、多分大丈夫だと思うけど、痛かったら言えよ?」
「ん、大丈夫……」
「ほい、おしまい……、ファイヤーは隣に来い」
「あら、私は膝にのせてくれないのー?」
「身長の差を考えてくれ……、膝に乗せたらやりづらい」
 ぶーたれながら隣に座るファイヤーの髪にクシを通していく。
「こうしてみると、結構クセっ毛だなぁ、お前……」
「ウェーブがかかってて綺麗っていってよ」
「きっちり手入れはしてるみたいだな。クシ引っかからないし」
「あー、人にクシ通してもらうと気持ちいいわ~……」
「んーっし、おしまい。ハブネークも隣に来い、てかピカチュウ、お前いつまで膝に乗ってるつもりだ」
「はう!? あ、あんまり気持ちよかったからつい……」
 わたわたと、あわてて膝から降りるピカチュウの姿に和みつつ、ハブネークの髪にクシを通していく。
 しばらくそうして4人で和やかに休憩していたのだが、突然のドアのノックで空気が凍りついた。
「はいはい、今あけますよっと……。ん? あんた誰だ?」
 俺の煙草の煙を見ていやそうな顔をしつつ、青年が早口に物を言い始める。
「ジムリーダーのタケシが相手を探してるんだ。どうだい?」
「ああ、ジムリーダーねぇ……。んじゃ早めにお邪魔させてもらうかね。ほれ、お前ら、ボールに戻れ」
 声をかけると、それぞれがボールに戻る。
「じゃ、案内するよ」
 青年の後をついていくと、すぐにニビのジムへとたどり着く。それほど大きい建物でもないようだ。
「硬くて強い石の男、ってことは岩タイプの子が多いんだな」
「ああ。君の手持ちじゃ苦労するとおもうよ」
「よし、ハブネーク、これつかってみろ」
 秘伝マシン06。岩砕き。ともしび山の温泉の爺さんからもらった物だ。
「ん、これなら覚えられそう」
「おっし、んじゃいくか」
 ジムに入り、タケシの前に居た男を手早く倒し、いざタケシの前へ。
「早速来たな」
 俺はゆっくりと煙草に火をつけて、ジト目でタケシを眺める。
「おまえさん、宿舎にわざわざ人送りつけてくるとか、よっぽど暇なんだな。折角くつろいでたのに台無しだ」
「ウルサイ、どうせ暇だ! 悪いか!」
「気の短い男だなぁ……。そんなんじゃもてないぜぇ? んじゃ、勝負といきますかね。ハブネーク、行って来い」
「いけ、イシツブテ」
 みたまんま、岩タイプのモンスターを繰り出してくるタケシ。
「好きにやれ。俺はのんびりしてる」
 煙草の煙をゆっくりと吐き出し、ハブネークに指示を出す。
「お前馬鹿にしてんのか!」
「勝負見てなくていいのか? ほれ」
 イシツブテが行動を起こす前に、ハブネークの刀がイシツブテの脳天を捉え、その意識を刈り取っていた。
「なああ!? イシツブテーーー!」
「……ジムリーダーが聞いてあきれるな。田舎もんにやられて恥ずかしくないのか?」
「行け、イワーク!」
 やれやれと、俺は肩をすくめる。
「髪に気をつけろ」
 俺が言うと同時に、髪の毛をハブネークに叩きつけるようにイワークが迫ってくる。
「編み方がゆるいな、髪の先の紐をきってやれ」
「ええぇ……そんな無茶なぁっ!?」
 髪の毛があたるギリギリのところでハブネークがその髪の毛を避ける。
「よーく動きを見ればいけるだろ」
 ハブネークがイワークの動きを凝視し、次に襲い掛かってくる髪の束に向けて刀を一閃させる。
 刀の先端が、イワークの髪留めにひっかかり、プツリと、紐が切れた。
「ほい、勝負有り」
「なんだと! イワーク!」
 タケシがさらにイワークをけしかけるが、イワークがそれに応じて髪を振り回した瞬間、編んだ髪が解けてバラバラになる。
 ひっつめた硬い髪ならともかく、バラバラになったそれは脅威じゃない。
「あうあうあ……」
「む、むぅ……」
「勝負ありって事で、オーケー?」
 タケシが渋々ながら頷く。どうやら手持ちはこの2体だけらしく、タケシが俺にバッジをくれた。
「ところで、この子の髪、編んだのあんたか?」
 イワークの頭にぽんと手を置きつつ、タケシにたずねる。
「あ、ああ……。そうだが」
「だろうなぁ……、あんな編み方されたら痛かったろ? タケシ、だっけ? このジム、椅子無いか?」
「ああ、あっちに休憩室があるからそっちになら」
「んじゃ、ちょっとこの子借りるぞ。ハブネーク、戻ってろ」
「あ、こら、何するつもりだ!」
 ハブネークをボールに戻し、イワークをつれて休憩室にいくと、タケシが後ろをついてきた。
「別になんもしねーよ? ただ髪を直してやろうと思ってな」
 先ほどのクシを取り出して、イワークの髪をすいていく……が。
「いたっ……」
 妙にクシが引っかかる。
「おい」
「あ?」
 タケシの頭を軽くどついてやる。
「何しやがる!」
「何しやがるじゃねぇ! この子の髪痛みまくりじゃねぇか! ったく、かわいそうに……。
いくら武器に使うからっていっても限度があるだろ限度が」
「そういわれてもなぁ……」
「この近所に美容院か散髪屋あるか?」
「ああ、それならあるけど、どうする気だ?」
「気になるならついてくりゃいいだろうが……」
 取りあえず、イワークは髪が長くて引きずってしまうため、ポニーテールにして引きずらないようにしてから、美容院に向かう。
 時間的には閉店間際だったが、比較的すいているようだ。
 店の人に声をかけて、開いている場所を貸してもらう。
「場所借りたから早速作業にかかるかね……」
 服の袖をまくり、手始めにイワークの顔にタオルを乗せ、髪を洗いにかかる。
「なんでそんな慣れてるんだよ」
「ガキの頃に美容院で仕事手伝ったりしてたからな。ここの人がななしまの美容院のおっちゃんと知り合いでよかったよ」
 綺麗に髪を洗って、ドライヤーで髪を乾かし、クシですいていく。
「髪が絡まってどうしようもなくなっちゃってるところがあるなぁ……、ちょっと切るか……。いいな?」
「あ、ああ。任せる」
 痛んでどうしようも無くなった部分を切り、髪を手早く編んでいく。
「んっし……、こんなもんだな、あとは……」
 髪の先端にリボンを結んで完成っと……。
「鏡見てみ」
「わぁ……」
 イワークは鏡を見ると、嬉しそうに笑う。
「頭、違和感無いか? 編み方がゆるいとか、引っ張られて痛いところがあるとか」
「どこも痛くないし、ゆるくもないです。すごいですね……、うちのマスターとは大違い……」
「それならいい。やれやれ、もう夜になっちまったなぁ。さっさと宿舎に帰って寝るかな」
 店の人にお金を払い、落ち込んだ様子のタケシはその場に放置して宿舎に戻り、3人をボールから出してやる。
「さーて、1杯飲んで寝るか」
「飲むって、またコーヒー?」
「バカ、1杯飲むっていったら酒に決まってるだろ。ハブネークとピカチュウにゃまだ早いな。
ファイヤー、付き合ってくれるか?」
「もちろん~」
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。