5スレ>>262


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 タマムシシティとヤマブキシティのほぼ中間に位置する場所。
 大きな町から少し外れているが、そんなところに俺たちの家は存在する。
 
 俺の名前はアキラ。カントー限定ではあるが、一応、マスタートレーナーの称号を持っている。
 過去に一度だけチャンピオンの座にも着いたことがあるけど、それはかなり昔の話。これもカントー限定だけど。
 現在はタマムシに開園したもえもん保育園の先生をやっていたり、あのワタルから半ば無理やりもえもんGメンの一員に
 入れられたり、はたまたカントー各地のジムでトレーナーの指導をしてたりといろいろやっている。
 他の地方への遠征とかはしません。可能な限り。
 
 あ、横に居るのは妻のライラ。実は元パートナーもえもんだったりする。ちなみにサンダースでした。
 とあることで殆ど力が使えなくなり、今の姿になってしまったんだけど、それはまた別のお話。
 そんな俺たちは8人の娘たちと4人の従者、併せて14人でのんびりまったりと生活している。
 娘たちのことは追々紹介していくことにする。話し出したら止まらない気がするからね。

 今回は、そんな家族のほのぼの生活を少しだけ紹介してみようと思う。
 とりあえずそこ、変な野次は飛ばさないこと。
 
 えー、それでは

『ブイズファミリー』

 始まります。

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【第1話:もえっこせんたい】

「ただいまぁ」

 家の扉をくぐり、どかっとその場に座る。
 自己中大王ワタルからやっとの思いで解放され、数えてみれば今月7度目の朝帰り。
 週一以上のペースで徹夜シフトとか、そのまま酒盛りとかやらせんな、ワタル氏ね。

「あ、お帰りアキラ。今日は早かったのね」

 文句を垂れながら脱いだ靴を仕舞っていると、後ろからエプロン姿の妻がやってくる。

「ただいま、ライラ」
「ぁー」
「お、ただいまイブ。いい子にしてたかなぁ?」

 ライラに抱かれている愛娘の頬をぷにぷにつつく。

「ぁぅぁー」

 ほっぺたをふにふにされて喜ぶイブ。そうしてライラからイブを預かり、優しく抱く。
 こちらがにこっと笑うと、にぱーっと笑い返してくれる。
 なんという癒し系。なんというイーブイ特有のふわふわもこもこ感。ダメだ、これはかわいすぎる。

「……ねえアキラ。夜勤後で悪いんだけど、後でモミジたちの状態を見てきてほしいんだけど」

 イブのほっぺにチューっとする俺に対し、やれやれといった顔をしながらライラが声をかけてくる。

「んー、夕方ぐらいでいいならOK」
「ぅー」
「じゃあ、それでお願いね。とりあえずご飯にしとく?」
「あー……先に風呂入るわ」
「ぉぁー」

 俺が何かを言うたびに反応するイブ。やっぱりかわいい。
 ぎゅ~っと抱きしめたらお腹をポコッと蹴られた。痛かったのだろうか?
 そうこうしながら一度リビングに足を運ぶと、他の子供たちがテレビの前にきれいに並んでいた。
 時計は午前7時29分を表示している。
 こんな朝からなんだ? と思いながら様子を見ていると

『萌獣戦隊 ブイレンジャー!!』

 タイトルコールに合わせてテレビ画面にでかでかと文字が表示される。
 ホウジュ……? 「萌」えっていう字だよなこれ。
 その後、出演者らしき面々が所狭しと動き回り、それと共に歌が流れ出す。

「なにこれ? ……って、あ、こら。イブ、そんなの噛んじゃダメ!!」
「ぅー?」

 テレビから自分の胸元に視線を落とすと、イブが服のボタンを咥えようとしていたので慌てて引き離す。
 ボタンを右手で持ちながら、眉間にしわを寄せた顔をしてこっちを見上げてくる。
 いや、そんな残念そうな顔されても……。

「あー、それねぇ。確か先月あたりから始まったやつよ。ハサムンジャー(※)の後番ね」
「ふーん……このシリーズまだやってたんだ」

 子供の頃はいろいろと見てたよなぁ……ター○レンジャーとか。
 あれから一体何組のヒーローを生み出したことだろうか。もう知らない人もいるんじゃないかな、○ァイブマンとか。
 それにしても、5人ともテレビからきちんと2mほど離れたところで正座して……ん? 人数が足りない。
 右から順に……ミミィ、ライナ、フレア、アクア、フィアナ。ラキとシアがいないのか。
 視線を少し動かすと、むすっとした2人がソファーの上で足をぶらつかせていた。

「なあ、あいつらはどうしたんだ?」
「さあ……って、はいこれ」

 ライラからすると珍しいことでもないらしく、そこまで気にしていない様子。
 かく言う俺自身も、ふーんとそこまで特に気にも留めず、イブとバスタオルを交換する。

「そんなことより早くお風呂入ってきて」

 うぃーっと返事をし、イブと軽く握手をしてから風呂場に向かう。
 それにしても、うちの子供は女ばっかりなのにああいった男の子向けの番組も見るんだなぁ。
 面白いテレビ番組ならなんでもいいのかもしれないけど。
 リビングを出て右手方向に続く少し長い廊下を暫く歩くと、前方から赤い髪をフリフリ揺らしてモミジがやってきた。
 両手には洗濯物をいっぱい詰めた籠を携えている。

「おはようモミジ」
「あ、おはようございます旦那様」

 声を掛けられて漸く俺に気付いたみたいだが、わざわざ籠を置いて会釈をしてくれた。
 それ重くないの? と両脇にある籠を指差しながら、素朴な疑問を投げかけてみると、

「わたしたちは本来、力だけは取り得ですから」

 と、力こぶを出すマネをする。

「あ、いや……そんなブースターの悲しい特徴を露見しなくても」
「……言わないでください旦那様。自分で言ってから気付いて、ちょっと後悔してるんですから」

 ふぅ、とため息をつきながら明後日の方向を眺めるモミジ。
 やっぱり気にしてるんだ……。

「あー、でもまあ、その辺のカバーはあいつからいろいろ教授されたんだろ?」
「……そうですね。マスターには変なお薬をいっぱい飲まされた記憶があります」

 当時を思い出してか、ますます背中に暗い影を落とす。
 うわー……ひょっとしてあいつ、アレのまま食わせたのか?

「ま、まあ、そのお陰で【特攻】も上がったんだし、いいんじゃないかな」
「そうですね。その分目立つところも殆ど無く、平均的な存在になってしまいましたけど」

 自分自身の各能力を数値で比較すればどれも似通っているのかもしれないが、"一般"のブースター平均からすれば、それ
 がかけ離れていることには気付いていないのだろうか。
 今日の健康診断あたりでその辺を伝えたほうがいいのかもしれない。

「……あ、す、すみません。お風呂に行かれる途中なんですよね」
「ん? ああ、そういやそうだった」

 早くしないと朝食に遅れますよ、と付け加えられたのでちょっと小走りに風呂場に向かう。
 そのため、後ろの方で「あ、そういえば今は……」と呟くモミジの声は耳に入ってこなかった。


       *     *     *     *     *            


「~♪」

 鼻歌交じりに、ぽいぽいと衣服を洗濯機の横に据え付けてある籠に放り込む。
 風呂は家の中で一番好きな場所。だからこの家を建てるときにここだけはかなり気合を入れた。
 一度ライラを連れて旅行に行った際、そこで泊まった宿の風呂がとても良かったので、それを真似て設計してみた。
 結果的には、7年かけて貯めに貯めた貯金を全て使い果たすことになって、後にライラのカミナリを食らったものだが、
 折角、新居を建てるんなら拘らなけりゃね?
 さっそくタオルを持って風呂場の扉を開けると――

「んあ? あ、兄ちゃんだ、おかー」
「え、ご、ご、ご主人様!?」

 てな具合で湯船にはカリン、洗い場にはアオバの2人と遭遇。
 何故気付かない俺。何故気付かないお前ら。
 数秒間の硬直後、俺とアオバは慌てて後ろを向く。

「ってか、何でお前ら風呂入ってんだよ!!」

 気恥ずかしさを誤魔化すようにして声を荒げる。
 その状態で左を見ると、風呂に浸かっているカリンがニヤニヤしていた。
 ……この野郎。

「あ、あ、あああの、あの」

 後方からはかなり動揺しているアオバが声を発する。

「すす、すみません。あの、か、帰ってらっしゃるとはおもってなくて……」
「あ、ああ……それは、まあ、その、なんだ……仕方ないわな」
「で、でで、ですよね。あ、あは、あはは……」
「そう、だよな……はは……」

 ははは、と2人の乾いた笑い声が響く。そして、はぁ、と同時に溜め息を漏らす。
 相変わらず湯の中でニヤニヤしているカリン。後で絶対殴る。
 それはとりあえず置いといて、ここで頭に浮かぶ選択肢は、俺が出るか、2人を出すかなんだが。
 さて、何を選ぶ?


……………

………




「……よっと」

 腰掛をシャワーの前に置き、そこに座る。

「アオバ、すまないがそこのシャンプーとか取ってくれ」
「……は、はひっ!!」

 俺が選んだのは、そのまま入るという選択肢。
 無理に彼女たちを出すのも気が引けたし、あの状態から慌てて飛び出せば、こちらがこいつらを意識していると思われる
 わけだし。そんなことになればそれをネタにして何を言われるかも分からない。
 そもそもこの状況が妻にばれれば危険なのだ。それならこいつらも共犯にしてしまえばいい。
 共通のタブーを持つことで、お互いが抑止力となるはず。だからこその選択。別に喜んではいないぞ、ゼッタイ。
 後ろのほうから、兄ちゃんも好きだね~とかいう声が聞こえてきたので、洗面器を振り向かずに投げつける。
 カン、ゴン、ギャン、というキレイなリズムを取って音が響いた。

 蛇口を捻ると頭上からザーッとお湯が降り注ぐ。
 適度な温かさを持ったお湯で軽く髪を濯ぎ、シャンプーを手に取って少し泡立てた後、頭を洗う。
 シャカシャカと爪を立てて洗いつつ、軽くマッサージも加える。
 そんな俺の横からは、同様にしてシャワーを使っている音が聞こえる。
 風呂場にはただ、水の流れる音と、湯船でパシャパシャと水が跳ねる音だけが木霊する。
 何となく気になって、頭を洗いながらチラッと目線だけを右側に向けてみた。
 ……意外と大きかった。
 どたぷ~んと何となく呟いてみると、頭に【?】マークをチラつかせながらアオバがこちらを向いているのが見える。
 何だろうか。その反応はいろんな意味で困る。

「なあ、アオバ」
「な、なんでしょう?」
「何でお前、カリンと一緒に風呂入ってんの?」
「なんで、と言われましても……」

 目元に着いた泡を取り除き、手を伸ばして蛇口を捻る。
 シャワーを使って頭の泡を落としていくついでに、体全体に対してもう一度お湯をかける。

「……だってさ、普通に考えて水タイプと電気タイプが同じ風呂に入るか?」
「それって、わたしが電気を垂れ流してるみたいに聞こえるんだけどー」

 先ほど以上にお湯を叩くカリン。
 俺は後ろを向かずに、タオルに石鹸を擦り付けていく。
 ふと右側に視線を泳がすと、アオバと目があってしまったので慌てて顔を違う方向に動かした。
 大きいというのは、ある意味最高のステータスだと思うんだ、うん。
 気まずさや気恥ずかしさを紛らわすために、何度も何度もタオルを擦り、程よく泡立ったところで腕から洗い始める。

「でもさ、サンダースって電気体質じゃなかったっけ?」
「んー、まあそうだと言えばそうなんだけど、ライチュウとかみたいな無闇に放出はしてないよ?」
「……一応、マスターからその辺りの訓練はされてますし」

 さりげなくフォローを入れるアオバ。
 ふーん、と適当に相槌を入れながら背中にタオルを回して擦る。
 隣の少女は、シャワーズ特有の長くて綺麗な青い髪を頭の上で簡単に束ねると、スッと立ち上がって湯の方へ向かう。
 そして、ちゃぷんとアオバが風呂の中に入る音が耳に入ってくる。って、ナニ聞き耳立ててるんだ俺は。

「兄ちゃん信じてないでしょ?」
「……んあ? まあ、アオバがそういってるんだからそうなんじゃね?」

 ひどっ、と言いながらパシャパシャと三度目のお湯叩きを始める。
 さっきから同じことをしているが、何がしたいのか分からないので放っておいた。
 体とタオルの泡を落として湯船に近づくと、サァッと中央が開けられる。……なんで?
 と思ってても仕方がないので、そのまま浸かる。
 はぁ~、生き返るねぇ。ジジくさいとか思われてもこればかりは譲れないね。譲れないものベストスリーの1つだね。

「んっふっふ~」

 体全体を包む温かさや、鼻にふわっと入ってくる湯気とその臭いを楽しむ俺に対し、何やら、にまぁっと含み笑いを浮か
 べながら、犬掻きみたいな格好でこちらに近寄ってくるカリン。とりあえず無視無視。

「ねえねえ、嬉しい? 嬉しい? こんなかわいい子たちとお風呂に入れて」
「別に……って、近寄ってくんな」

 スッと横に体を動かすと、それにあわせてスススッと動く電気娘。うぜぇ。
 近寄ってくるので逃げる。逃げるから近寄ってくる。そんなことを数回繰り返す。
 当然こんなことをしていれば――

「きゃっ!?」
「!!」

 ふよんっとやわらかいものが左腕に当たる。
 今のはアレですよアレ。言わなくても分かると思うけどアレですよ?
 ギギギッと顔を左に向けると、顔を真っ赤にしたアオバが両手で自分の体を抱えていた。

「……あ、その……すまん」
「い、いえ……お、お構いなく」

 今まで以上に何ともいえない微妙な空気が流れる。
 どうしたらいいんだよこの状況。

「むふっ、今嬉しそうな顔した。したよね? ね? やっぱり、好きなんでしょぉ?」

 そんな俺たちを見て、先ほど以上にニヤニヤしている金髪不良娘。
 こいつ俺になんか恨みでもあるのか? ……あ……ないこともないか。

「ふんっ、そうだな。アオバくらいふくよかな子と一緒なら嬉しいわな。
 でもお前みたいな大平原の小さな家じゃあ何ともないわ」

 苦し紛れにそう言いながら、指でピンっと弾く。何を弾いたのかはご想像にお任せします。
 一瞬、ビクッとなってその場に留まるカリン。ようやく諦めたか。

「……ぬ、ぬわにするんだるぇあーっ!!」

 が、どうやら逆鱗に触れてしまっていたらしく、いきなりカリンは怒り出した。
 そして、急にバシャッと飛び掛ってきたかと思うと、そのまま右腕に絡まってくるカリン。

「これでもか、これでもかぁ!!」
「ぬあっ!! って、こら、止めろカリン。くっつくなぁ!!」
「え、あ……ちょ、ちょっと2人とも。暴れないで」
「えいっ、えいっ。どうだ、ほんとは嬉しいだろ? 嬉しいんだろ? あと、萌えるだろ?」
「マテ、何言ってんだおまっ……意味わっかんねぇよ!!」
「ちょ、あ、だから、うわぷっ、暴れな、でってば」

 暴れながら執拗に伸し掛かってくるカリンに押されて、グイグイ端っこに追いやられる俺たち。
 背中のふにふに、右腕のぺたふに。今日は一体何なんだぁ!?
 展開的にはおいしい……訂正、おいしすぎるのかもしれないけど、これはこれでヤバイって。ああもうやめろぉ!!

「…………何してるんですか、あなたたち?」
『あ……』

 いきなり開いた扉から、惜しげもなくその裸体を晒すスミレが現れ、お湯の中の3人は硬直してしまった。


       *     *     *     *     *            


『未来に向けて……エボリューション!!』

「えぼるーしょん!!」
「えぼるーちょん!!」
「えー、っちょん!!」

 なんだかんだで風呂から上がってくると、先ほどの番組が丁度終わったところらしく、掛け声?に合わせてちびっ子たち
 がポーズを決めていた。下から2番目のフィアナもお姉ちゃんたちの真似をしてピシッと腕を天に突き出している。
 ……やっべぇ、デジカメ持ってくればよかった。
 と、このかわいらしい光景などはお構い無しに、テレビからは次の番組の宣伝が流れる。
 えーっと、『Shine!! プリ☆マリ7』……? まあいいや。
 その番組もこのまま見るらしく、決めポーズを解除して再び正座する娘たち。

「テレビを見たければ姿勢よく見ること。あと最低2mは離れること」

 と普段からライラが電撃をバチバチさせながら言っているだけはある。
 あの姿は俺でも尻込みするし。いくら能力が全盛期の百分の一に満たなくても痛いのは痛い。
 食事までの休憩がてらソファーにでも腰掛けようとすると、相変わらず先ほどの2人が、むーっとしていた。

「どうしたんだ2人とも」
「おとーさん……」
「ん?」

 こちらの存在に気付いた2人だが、依然としてその表情は険しい、というより若干暗い。

「……ボク、ブイレンジャー嫌い」
「わたしもきらい」

 むすぅっと口をとんがらせる。シアは姉の様子を見てそれを真似る。
 どうして? とシアを抱きかかえながら訊ねる。

「……」
「何が嫌いなのかお父さんにいってみな」
「……」

 だんまりである。こうなるとこの子は暫く何も言い出さない。
 あー、今日は徹夜……じゃなくて寝れないかも?
 シアの頭を撫でながら今日はこれからどうしようかなと思慮に耽る。
 モミジたちの様子を見て……あぁ、たまにはあいつらのところに顔出すのも悪くないかなぁ。
 そう思いながら、今はここにいない6人を思い浮かべる。
 何やら1人はウィンクしているし、もう1人は胸を執拗に強調してこちらを見ている。
 2人周りには、その状況を楽しんでいる別の2人がいるし、更に後方にはおろおろする子と諦め顔をした子の姿がある。
 今の状況であんなところに出向いたら何されるか分かったもんじゃない、そんな悪寒が背筋を走った。
 ぱたぱたと手を使ってその面影を振り払う。とりあえず後者は止めておくことにした。
 あとは明日を休みにしてしまえば夜からゆっくりと眠れるな、と付け加える。

「シアでもいいんだぞ、何が嫌いなんだ?」
「……」

 名前を呼ばれてシアがこちらを見上げる。が、この子も口を開こうとしない。
 意外と家の子たちは強情のようです。これはきっと母親に似たんだろう。間違いない。
 何やら背中に視線が突き刺さったような感じがしたが、気付かないフリをする。

「……もん」
「ん?」
「もうブイレンジャー見ないからいいもん!!」

 ぴょんとソファーから飛び降りて、ラキはリビングから飛び出して行ってしまう。
 俺の上にいたシアまで、抱きかかえる腕を解いて姉の後を追っていった。
 うーん、これでは理由が分からない。あと、相談してくれないのはお父さんとても悲しいぞ……。
 そんな俺たちを余所に、他の娘たちと、いつの間にかやってきたカリンの6人はアニメに夢中だった。
 このいや~なもやもや感を晴らすためだけに、バスタオルにパンツだけとかいう極めて危ない格好のカリンに、元格闘王
 直伝のかかと落としをお見舞いしておいた。効果抜群により3200くらいの経験値をゲット。もちろん掛け捨て。
 言っとくがさっきの風呂場での仕返しではない。きっと多分。

 そのアニメも程なく終了し、これもまた何年やっているかわからない音楽番組に切り替わる。
 そうなると早いもので、年長組はいそいそと母やアオバのところに向かい、朝食の準備を手伝いはじめた。
 ラキとシアも空腹には勝てなかったのか、モミジやスミレに促されて他の年少組と一緒におとなしく椅子に座っている。
 全員が椅子に座ったのを見計らって、俺がいただきますの合図をすると、全員が手を合わせて復唱する。
 カチャカチャとお皿と何かが当たる音、わぁわぁと先ほどの番組の話をする子供の声。で、時々ライラが叱る声。
 しばし沈黙するが、またわいわいと賑わう食卓。そして、バックミュージックにはテレビから流れるクラシックの曲。
 これを聞くとやはり落ち着く。我が家に帰ってきたんだなぁという安心感に満たされるからだ。
 ちなみに、ワタル曰く俺のこの環境は勝ち組らしい。あいつの言ってることはイマイチよくわからん。
 余韻に浸りつつそれぞれの顔を順に眺めていくと、やはりラキはムスッとしたまま黙々とトーストにかぶりついていた。
 俺は同じように用意されたトーストを口に運びながら、先ほどのことをどうしたものかと考える。
 考えたところで何も浮かばなかったりするけど……。
 まずは『ブイレンジャー』がどんなものなのかが分からなければどうにもならない。

「ブイレンジャー? この子たちみたいにじっくり見てないから知らないわよ。
 だいたい、14人もいるんだから、こっちは天気予報以外にテレビを見る暇もないの」

 と、ライラには相手にもされなかった。

「おとーさんも、ぶいれんじゃーみたいの?」

 隣に座っているミミィが、口の周りにジャムをべったりとつけながら聞いてくる。
 見るの? 見るの? と他にも5つの視線がこちらを見ている。が、ラキだけは違う方向に向けられていた。
 ご飯を食べたらね、と言うと予想通りというか子供たちも一緒に見るということになった。

「……ごちそうさま」
「あら、もういいの?」
「……もういい」

 そう言うと、ラキはもそもそと椅子から上手い具合に下へと滑り落ち、自分の食器を流しに置いてそのまま部屋の外に出
 て行ってしまう。
 そんな姉妹の様子を不思議に思いながらも、変わらずに食事を続ける他の娘たち。
 続いてスミレが食事を終えたのだが、席を離れる際にこちらの方を見てきた。
 多分だが言いたいことは分かる。なので、何も言わずにただ頷いておいた。
 食べ始めこそは全員一緒なのだが、終わりは人それぞれで、終わった者から順番に自分で使った食器を流しへと運ぶ。
 俺は両隣のおちびたちが食べ終わるのを待ちながら、アオバが入れてくれたコーヒーを啜る。
 小さいながらも、食パン一枚をペロッと平らげる娘たちを見て微笑ましく思う。
 このまま元気にすくすく育ってくれ。もちろんお父さんのことが大好きなまま。
 ごちそーさまーという2人の合図を受けて、俺は席を立つ。
 3人分の食器を水につけていると、フレアにクイクイと服の裾を引っ張られた。
 そんなに急かさなくても、誰も逃げたりしないんだけどな。
 俺が台所からテレビの前へ移動すると、残りの4人も「わー」とか言いながら駆け寄ってくる。
 シアはこちらをじぃ~と見ていたが、やがてモミジと一緒にリビングを出て行ってしまった。
 案外、一緒になって見てくれるかと思っていたのだが、そう簡単にはいかなかったらしい。

「ブイレンジャー、ブイレンジャーっと……」

 リモコンを操作しながら、録画されたものを確認する。
 なんともまあ、律儀に録画までしてあることから、よっぽどこの子達のお気に入りなんだろう。
 さて、今日の分までで全5話。とりあえず最初から見てみるのも悪くないか。
 そう思って、日付の一番古いものを選択して再生ボタンを押す。
 すると、つい先刻にも見たタイトルが表示され、歌が流れ始める。
 長女のフレアをはじめ、一緒に見るといった子供たちはその歌に合わせて「ちょあー」とかいいながら踊る。
 何かが大きく間違っているのだが、かわいいから許す。
 カリンまでちびたちと同じように踊っているが、それは見なかったことにしよう。
 オープニングが終了してCMに入ると、俺の周囲に各々が座りだす。
 いつも並んで見ているのだろうか、先ほどと同じ形で座ろうとしたため、端っこのフィアナだけ少し位置がずれている。
 こっちおいでとフィアナを呼び、胡坐をかいた上に座らせると、にぃっと笑顔を見せてくれた。
 とまあ、こんな感じで上映会は始まったわけだが、いざ見始めてみると、対象が子供向けだからであろうか、どうしても
 至るところがチープである。そう感じるようになったのは俺が大人になった証拠なのかもしれない。

『ゆけ、ハガネールン。こんな町破壊し尽してしまえ!!』

 フハハハハ、と笑う悪の女幹部。どうしてこの手のキャラってこんなド派手且つえちぃ格好なんだろうか。
 冬場とか寒そうだよなぁ……仮にも子供向け番組なんだけど、実はおっきいお兄さんも視野に入れてる?
 ……って、あれ? 何かこの子、見たことあるようなないような。
 いやいや、そんなことはない。そんなことがあるはずがない。と、とにかく落ち着いてゆっくり分析しよう。
 まず、このキャラを演じてるのはどう見てもフーディンだ。
 どんなに着飾っても骨格というか何というか、あの独特な髪の形が「わたしフーディンです」って主張してる。
 そんでもって俺の旧パートナーズの1人にソックリデス。化粧してるけど目の輪郭とか口元とか。
 あ、でもこいつら意外とそっくりさん多いし、他人の空似とも――

「やっぱり兄ちゃん気付いたんだね~。相変わらずそういうのには抜け目無いなぁ」

 朝ごはんを食べたばかりだというのに、既にアイスを咥えながら呑気に言うカリン。
 お前さっきまで踊ってなかったか? と思ったが口にはしなかった。
 その代わりに何がと訊ねる。

「うん、その人キサラお姉ちゃんだよ」

 と、さらりと事も無げに爆弾発言をしてくれた。
 できればそうであってほしくなかったんだが。
 あの6人の中では【真面目】で【誠実】な部類に入るのが、なんでまた悪の女幹部役……。
 若干どじっ子だったから、何かの間違いでこうなったんだろうか。いつものことだけど不憫な子や。
 少し涙ぐみつつも、眠くなりだした頭をカフェインで無理やり保ちながら事の顛末を見守る。
 それにしてもこいつ、よくこんな格好してテレビに出られるよなぁ……って本人に言ったら泣きそうだな。

『そこまでだ、フディオーネ』

 フーディン率いるメタル軍団(なんで鋼タイプなんだろう)の前に飛び出したイーブイちゃん5人。
 全員女の子……あれ?

『いくよみんな!! 秘石変身』
『エボリューション!!』

 彼女たちの声が一斉に発せられる。すると、画面が5分割され、それぞれに各個人の変身シーンが映される。
 周囲からは「おぉ~」と声が上がる。まあ確かにそういう反応しちゃうよこれ。
 お年頃の女の子5人がそれぞれ一瞬にして私服?から、体のラインがくっきりと分かるくらいのぴちぴちレオタード姿に
 なり、その上に徐々に戦闘スーツが現れるんだから。
 ……これ絶対おっきいおにいちゃん向けだろが!! こんなん夜中やれ!!
 内心はそう思いながらも目が離せなかったりする。ああ素晴らしきかな男のサガ……あ、このイエローの子かわいい。

『弾ける灼熱の魂。ブイレッド・ブースター!!』
『荒ぶる波の彷徨。ブイブルー・シャワーズ!!』
『渦巻く雷の旋律。ブイイエロー・サンダース!!』
『優しき緑の微笑み。ブイグリーン・リーフィア!!』
『輝く神秘の誘惑。ブイピンク・エーフィ!!』

『萌獣戦隊 ブイレンジャー!!』

 どっかーん!! とお約束の爆発、そしていつの間にか場面は、山を切り崩した工事現場ようなところに移る。
 お前らさっきまで町に居なかったか? よくあることだけどさ。
 戦闘シーンに入ると、もはや周囲のちびっ子たちは画面に釘付けである。
 本能的に持っている血が騒ぐのだろうか。いけ、いけ、とか小声で言ってるし。
 そんなこんなで、かつてポケモンと呼ばれていたころのコイルのような顔をした戦闘員が次々に倒されていく。
 頭がコイルで体は黒タイツって……なんつう発想だ。ギャグ以外の何者にも見えないぞこれ。

『必殺・ヴィクトリーマグナム!!』

 最後に残ったハガネールンは5人で抱えるほどの大きな銃で倒される。
 まあ、そうなると次の展開は読めるのだが、期待を裏切ることなく巨大化する鋼っこ。

『降臨、三獣神!!』

 ブイレンジャーたちが右手を空に翳すと、暗雲が立ち込め、その中から赤い獣が……って唯一神じゃないか!!
 うわー、そうきたかぁ。まさかエンテイ、スイクン、ライコウの形をしたロボットとは。
 で、乗るのは同じタイプの3人。って、おーい、2人置いてけぼりだぞー?
 と思いながら見ていると、あっという間に倒される巨大ハガネール。まあ固体値に差があるよね、うん。

『おのれブイレンジャー、覚えていろ』

 悔しそうにマントを翻して逃げていくフーディンとその部下。こうして町の平和は守られました。
 といった感じで話は終わり。続いてエンディングの曲が流れだす。
 うはっ、あのフーディンまで踊ってる……リザードンたちが見たら笑い転げるだろうなぁ。
 なんて考えていると、あっという間に次回予告も終了したので、続いて第2話を流し始める。
 オープニングでは、再び我が家の萌えっ娘たちによるダンスが開始された。


……………

………




「んん~……原因はこれ……だよなぁ、多分」

 5話全てを見終わり、レコーダーの電源をオフにする。
 もはや眠気もどこへやらな、一種のハイテンション状態になりつつある頭が1つの答えを導き出す。
 要するにいないわけだ。ブラッキーとグレイシアが。
 長女フレアのブースター、 次女アクアのシャワーズ、三女ライナのサンダース、五女ミミィのエーフィ。
 そして七女フィアナのリーフィア。
 ここまで見えてくれば、どんな人でもわかるだろう。そうすれば、あとは何とかできそうな気がする。

「ぶいれんじゃあつおいね、おとぉさん」

 目を爛々と輝かせる幼い娘を優しく愛でながら、そうだな、と答える。
 フィアナを抱えながら立ち上がると、それが終了の合図になったのか、他の子達は一斉にリビングの外へ行こうとする。
 それを目にしたフィアナは自分もと言いたげに足をばたつかせた。
 もう少し娘とのスキンシップをしたかったのだが、仕方が無いので下ろしてあげると、てってってって、という擬音が似
 合いそうな感じでお姉ちゃんの後を追いかけていく。
 妹の存在に気付いたアクアに手を引かれ、嬉しそうに俺の前から去っていく娘を見て、少ししんみりする。
 みんな、なるべく長い間お父さんのそばに居てください。でないと、お父さん悲しくて死んじゃうよ?
 遥か未来には訪れるであろう子供たちの晴れ姿を想像しながら、独りほろりと涙を拭った。


       *     *     *     *     *            


「2人ともちょっといいかな?」

 子供部屋のドアを軽くノックして、積み木遊びをしている2人の気をこちらに向ける。
 なぁに? といった面持ちで、両手を上にあげながらとてとてと寄ってくるシア。
 しゃがんで両手を前に差し出すと、すっぽりとその中に入ってくる。つまり先ほどの仕草はだっこの催促なのだ。
 ここだけの話、この子が一番のお父さんっこだったり。
 ラキはこちらを向いてこそいるが、動こうとはしないので、仕方なしに俺のほうから近づく。

「なに?」
「ん、お前たちにちょっと話したいことがあってな」

 そういってラキの横に腰を下ろす。抱いていたシアはそのまま胡坐をかいた足の上に座らせる。

「いいか2人とも。これからお父さんが話すことは誰にも言っちゃダメだぞ?」
「?」

 何のことかは分からないながらも、お互いに顔を見合わせてから、うんと頷く娘たち。

「いいかい、聞いて驚けよ。お前たちが嫌いだっていったブイレンジャーだけどな。
 ……実は、まだ出てきてないんだけどな、あと2人の戦士がいるんだぞ」

 突拍子もないことを言われ、えっ、といった感じに目がくりっと見開くラキとシア。
 立て続けに俺は頭の中に浮かぶ言葉を連ねて2人に披露する。

「ブラッキーとグレイシアがいないだろ? あいつらはもうちょっとしたら出てくるんだ」
「?」
「……う、うそだ!! だって、この前お友達の家で見た『よいこのともだち』に、そんなの書いてなかったもん」

 これにはさすがに驚きを隠せないらしい。
 ラキは俺の言葉を否定するように、自分の情報源の話をしてくるが、もちろんそんなものに載っているはずがない。
 そりゃそうだ、俺が今考え付いただけなんだし。

「そ、それっていつなの?」
「んー、もうちょっと……としかお父さんも言えないなぁ。いるよってことだけしか教えてもらってないし」
「え、それって誰に教えてもらったの?」
「博士だよ博士。……あー、ナナド博士だっけ? ほら、ブイベースにいるあの人」

 うんうん、と頷くラキ。と、姉の真似をしてシアも頷く。やっぱり何だかんだ言っててもちゃんと見てるんだよな。
 もう少し信憑性を上げるのに話を追加しておこう。

「それでな、2人の色も教えてもらったんだぞ?」
「ほ、ほんと!?」
「ああ、まずブラッキーな。こいつはやっぱり黒だ。何者にも屈しない純粋無垢な黒だぞ。
 んで、グレイシアはシルバー……銀色って言えば分かるか?」

 と、これは話が行き過ぎたのか関心しているのか、ほぇぇっと唸る娘たち。
 その後もラキからいくつか質問されたが、それっぽい回答をしておく。
 そのたびに、「はぁ」とか「ほぁ」とかいいながら興奮していく過程が伺える。
 シアはまだ小さいってのもあり、途中からよくわかっていないけど、姉が驚くのでその真似をしているように見えた。
 最後の締めに、お姉ちゃんたちにも絶対に内緒だからな、と人差し指を口元に当てながら再度念を押すと、2人は満面の
 笑みで答えてくれた。どうやら信じてくれたらしい、よかったよかった。

「――まあ、よくあんなホラが吹けるわよねぇ」

 わーい、と上機嫌でドアから出て行く娘たちと入れ変わるようにして、呆れ顔で部屋に入ってくるライラ。
 その手には、きちんと折り畳まれた洗濯物を山のようにして持っていた。
 手伝うよと手を差し出すと、半分ほど渡される。
 シャツやら靴下やらパンツやらが、それぞれの子供ごとにきちんと分けられていた。

「出ないとも限らないだろ? ほら、後から追加メンバーが出てくるなんて良くあることなんだしさ」
「……出てくればいいけどねぇ」

 あまり興味無さそうに答える。
 そうしながら、お互いに慣れた手つきでパパッと箪笥の中に洗濯物を収納していく。

「ま、その辺りのことは何とかなると思うよ」
「???」

 俺の言ったことが全く分かりません、といった顔をするライラ。
 最後の靴下をしまい終わって、ライラの方を向きつつ彼女の長いブロンドの髪を指で梳く。
 一瞬、何事かといった表情でこちらを見たライラだったが、俺の手櫛を受け入れる。
 暫くそのままで沈黙が続いたのだが、そっとライラの手が俺の手に重ねられたので髪から離す。
 もういいわ、といつものように俺に微笑みかけ――

「ねえ、アキラ。1つだけ聞きたいことがあるんだけど、いいかしら?」

 とろんとした目で下から覗かれ、思わずドキッとしてしまう。
 重ねられた手を引かれ体のバランスを崩してしまい、これまた思わずだが、ライラを抱き寄せる形をとってしまう。
 わずかばかりの距離で感じられる吐息。やわらかく、そしてあまい香りが鼻腔をくすぐる。
 夫婦生活を始めてもう8年になるが、それでもこの状況はドキドキさせられる。子供たちには見せられない大人の世界。
 いいのかな? と自問自答しながらライラの頬に触れると、彼女はそっと目を閉じた。
 俺も意を決して顔を近づける。徐々に近づく唇と唇。
 あと数センチ――
 ――数ミリ――

「今朝は随分とお楽しみのようだったそうだけど、それについて何か言うことはある?」

 触れると思われた直前にがしっと顔を押さえ付けられたので目を開くと、そこにはニコッと笑うライラの顔。
 ただし、その表情からは先ほどの甘い雰囲気など全く感じられない。
 あえて言うなら、こめかみ辺りに「#」っていうようなマークが浮かんでそうな感じ……。

「え、えっと……何のことでしょうか」

 ゆっくりと後方へ離れようとする俺の手を思い切り掴んで離そうとしない。
 ほんの少しずつだが、その手にこめられた力が強くなっている気がする。
 頭上にポンポンポンポンッと怒りマークが増えていくのが手に取るようにわかった。

「逃げようとしてもだめよ~。だいたいの話はあの子達から き ち ん と、聞いてますからねぇ~」

 ピリピリとした感覚から徐々にビリビリに変わり、バチバチと何かが弾ける音が部屋に響く。
 や、やばい。これはマジで怒ってる。

「あ、あの、あのな……えーっと、その…………ごめんなさい」
「ふふっ、……ほんとうにはんせいしてるぅ?」
「し、してます、してます。もう致しません。今後一切、あのようなことは致しませんので、どうか……」

 ちらっとライラの方をみると、とんでもなく優しい笑顔を見せてくれる。
 あ、これは許してくれ――

「残念。アウト」

 こちらが反論する間もなく、無慈悲にも繋がれた手から激しい電流が流し込まれる。
 耳元で激しくダンスする電気の音を聞きながら、俺の意識はどこか彼方へと飛ばされる。
 
 
 そして、こちら側に戻ってきてからは、カリンと2人してライラからのお叱りを受けるのでした。
 そんな姿を物陰から物珍しそうに見物する子供たち。そういえばここは子供部屋だった。
 ああ、お願いだからこんなお父さんを見ないでください。頼むから向こうで遊んできて……。
 
 余談ではあるが、この日のモミジたち4人の健康診断はお流れになったのでした。


       *     *     *     *     *            


 あれから数日たった日のこと、あちらの様子を確認することも含めて、マサラタウンにある別邸に電話をかけてみると、
 都合よくフーディンが電話に出てくれた。
 最近のみんなの様子や、出来事等々といった他愛もない話をした後、一呼吸置いてブイレンジャーの話を切り出す。

『な、なんでそれを!?』

 かなり驚いた様子。
 そりゃあ、そういうのに興味を持つお年頃の子供がいるのだから、見られてない可能性の方が低いと思うんだけど。
 簡潔にこれまでの放送分の感想と、エンディングのダンスについての意見を伝えたのだが、

『お、お願いマスター。ごしょ、後生ですからこれ以上見ないでぇ~』

 と、受話器越しに泣きつかれてしまう。
 まぁ、その気持ちも分からなくもない。身内にばれるほど恥ずかしいことは無いよな、やっぱり。
 聞くところによると、とある雑誌を立ち読みしていたときに、子供向け番組の役者を募集しているという記事を見つけ、
 前々からそういったものに興味があったので、試しにと応募したらしい。
 書類選考はあっさりと通過。面接、台本を渡されての演技、それらを何とかこなしてついには最終審査で合格。
 このころには、一応ながらもどういう番組かは知らされていて、更にはレギュラーだということも伝えられており、一体
 どんな役が回ってくるのかと胸を高鳴らせて待っていたらしい。
 まあ、結果的には現在の【悪の女幹部フディオーネ様】なんだが、まさかよりにもよってそんな役がくるとは夢にも思っ
 ていなかったそうな。

『あのあとよくよく考えてみれば、演技審査のときの台詞は何だか悪役っぽかったかもしれません……』

 当時を思い出したのか、ますますぐずりだすフーディン。
 どうやらオーディションを受けている段階で何をやらされるか、全く分かっていなかったようだ。
 そんなフーディンの後方からは他のバカ娘たちの笑い声が聞こえてくる。主に3名。
 今の話、ひょっとしたら後ろのやつらから在らぬ事を吹き込まれたんじゃないのか?
 例えば「5人の戦士をサポートする美人オペレータ」とか言われて。
 ……って、どうやら正解らしい。相変わらず苦労というか不幸街道を迷走してるんだなぁ。
 親心ならぬ主人心でホロリと涙しながらも、あの後の家族会議の中で決定された、とあることを伝えねばらならない。
 追い討ちをかけるようで可哀想ではあるが、これもまた俺の平和な生活のためには致し方ないこと。
 そう自分に言い聞かせ、電話の向こう側であぅあぅ言ってる相手に端的に告げる。

「すまんな。毎週 "録画" して "家族全員" で見ることになったんだわ」
『……え? い、いまなんて』
「だから。毎週、録画して、家族全員で、みることになったから」
『!!!?!?』

 受話器を携えたまま単色化して、がらがらと崩れ落ちるフーディンの姿がはっきりと目に浮かんでしまう。
 今後の仕事に差し支えが無ければいいけどなぁ、と他人事のように思いながらそっと電話を切った。





 あ、ブイレンジャーのサインちょうだいって言うのを忘れた。
 今度フーディンにくっついて、撮影場にでも足を運んでみよう。

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※:ハサムンジャー 4スレ目>>122 萌えたい、チョー氏の話より 名称のみ拝借
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