5スレ>>348

 これから頑張ろうな。
 ケイスケ様は優しそうに言って下さいましたです。
 改まって言われると恥ずかしいですが、精一杯応えられるよう頑張るです。
 えへへ。
 ケイスケ様が荷物のチェックとかをしてる間、わたしは邪魔にならないように傍に座っていましたです。
 ケイスケ様がたまにこちらを見て、微笑んでくれると、嬉しいです。
 パルフェ、頑張るです。
 胸の中が温かくなった気がするです。
 ケイスケ様。
 よろしくです…。


 **第02話**


「愛を知っているかしら」
 尋ねる声は私がよく知る声だ。
「その愛は守れるかしら」
 尋ねる声に少しの哀しみが込められている事は私にはよく分かる。
「私は守るよ。その愛は確かだと思っているから」
 不安が入り混じりながらも、その意志だけはしっかりと伝わってきた。
「ねぇ、あなたはどう?」
 私はその問いに返す答えは、確かに持っていた。
 ゆっくりと、振り絞る力の中で口を開く…。
「…私は…」


 ****


 ジリリリリ――…!!
 唐突になるベルが、朝である事を告げる。
 強制的に俺は、ラーメンライスをたらふく食える悦びを享受していた夢から現実へと戻される。
 全く遺憾である。
「……ラーメン…ライス…」
 何処へゆくという。俺のラーメンライスよ…。
 嗚呼…香ばしい香りと共に去りゆくお前…。
 残された俺に、何が出来るというのだろうか…。
 両手で顔を覆って、絶望に打ちひしがれた。

「マスター、良いから目覚ましを止めて下さい!」

 ビクゥッ!
 体が驚きで縮こまる。
 母親でも無い声が、近くから掛けられた為だ。誰の声だ。
「寝ぼけてるんですか、マスター!」
 目覚ましのベルをとりあえず止める。静まり返る部屋。…うん、布団の肌触りが気持ちがいい…。
 そして俺は再び深いまどろみの中へと――…
「マスター!」
 ビクゥッ!
 本日二回目である。
 一体誰の声なんだ。聞き覚えがあるといえば、ある。
 その声の主を探すべく少し体を捻り、辺りをボヤけた視界の中で見回してみる。
 視界の中。部屋のオブジェでは見慣れぬ存在が佇んでいる。
 誰だろうか。お前は一体、…
「…んぁ…?」
 間抜けな声を出しながら、目を凝らしてその存在の正体を究明する事に専念する。
「マスター…?」
 俺の視線が鋭く、ピンポイントで向けられている存在が、どぎまぎしている様子が見える。
 ふむ、…。
 …――。
「可愛いな」
 その存在の第一印象をまず口にしてみる。
 整った目鼻口。
 キョトンとした表情と、俺の視線に戸惑う表情とが共存し、可愛らしい女の子の顔になっている。
 ん…?
 女の子の、…顔?
 何で俺の部屋に、女の…子?

 ――…!!

「うわあああああああ」
「…っ!?」
 俺は驚きのあまり、ベッドからズリ落ちる。ベッドを挟んで向こう側の"女の子"が話しかけてくる。
「大丈夫ですか――?」
 事態を飲み込むまで、ここから少し時間を置く事になる。
 相変わらず、朝には弱い。


 ****


「なぁ、レクラット」
「なんでしょうか」
 朝。とんでもなく間抜けな俺の奇声から始まり、今に至る。
 今は歯を磨いている最中だ。
 俺とレクラットが並んで歯を磨く光景は、昨日の出会ったばかりの冷たさからは予想も付かないものだ。
 少しは距離が縮まったんだろう。凄く嬉しいことだ。
 そこでふと疑問に思った事をレクラットにぶつけてみる事にしてみた。
「何で俺と距離を置こうとしてるんだ…?」
 シャカシャカと歯を磨く音が止まる。
 レクラットの方を見ると、ブラシを持つ手が止まっていた。
「……」
「……」
 目を閉じて、ゆっくりとまた歯を磨きだすレクラット。
 その中で時折手を止めながら、話し出してくれた。
「そうですね……昨日までは……」
「昨日…まで?」
 コップに水を注いでやり、背が小さいレクラットにコップを手渡してやる。
 俺も自分のコップに水を注ぐ。
 口をゆすぎ、ブラシも洗う。
「ええ。マスターは、初対面の相手にすぐに心を開けるんですか?」
「開けはしないだろう、な」
 俺達は洗面所から出て、母さんに朝の挨拶をした。
「おはよう、母さん」
「おはようございます」
「あら、おはよう。レクラットちゃん、相変わらず可愛いわね」
 うふふと笑う母さん。
 女の子も欲しかった、と漏らしていた事もあったしな。きっとレクラットが娘の様で可愛くて仕方無いんじゃないだろうか。
「いいえ…。そんな事は…」
 少し顔を赤らめながらレクラットはそう言って、朝食の手伝いをしようとする。
「ああ、良いわよ、やらなくて。今日、行くんでしょ?」
「え?あ、はい」
「なら、マスターの傍で旅の準備でも手伝ってあげて」
 にっこりと笑い、まな板の上でトマトがスライスされていた。
「分かりました」
 そして俺とレクラットは二階の部屋へとゆく。

「……」
「……」
「だから、態度が素っ気無かった、と…?」
「まぁ、大まかそういったところですね」
 話を続きを開始する。俺はリュックを取り出し、荷物のチェックをする事にした。
「今は、どうなんだ?」
「悪い人には見えませんね。至極一般的な方だと」
 そう言ってレクラットは手伝おうとしてきたが、俺は手で制して会話だけに集中させる。
「まぁ、一緒に旅に出る事になったが、本当に良いのか?」
「…。今更ですね…」
 俺は一度立ち上がって、タンスからハンカチを取り出す。
 元の位置へと戻り、胡坐座りをし、リュックの中身を覗き込む。
「まぁ、そうだな」
 自分でも可笑しくなって、笑った。
「昨日今日のマスターを見て、私も決心がつきましたよ」
 入れた筈の図鑑がリュックに無い事に気付いて、辺りをきょろきょろを見回す。
「気持ちとしては行きたくは無かった。博士に任された仕事として、戦闘などの道具扱いで頑張るつもりでした」
 昨夜机の上で機能確認の為に取り出して置きっぱなしにしていた事を思い出す。
「…そんな事、しないよ」
「ええ、なので、決心がついた、と」
「どのみち付いていくつもりだったんだろ?何を決心したんだ」
 机の上にある図鑑を取りに立ち上がる。

「貴方を本当のマスターとして、私は付き従います」

 見上げるレクラットと、目を合わせる俺。
 図鑑を取る事を刹那忘却。
 彼女が真剣な眼差しで宣言してきた。
 どう返すか、頭の中で言葉をこねくり回す。
 そうこうしてると、レクラットが先に言葉を紡ぎ出す。
「…昨晩、マスターのお母様と少し話をしました」
「…話、…?」
「ええ」
 俺は昨晩、荷物整理をする為に自室に居たが、そういえばレクラットはリビングに居た気がする。
「何の話をしたんだ…?」
「内緒、…です」
「えー」
 残念そうな声を出しながら、改めて机の上の図鑑を手に取った。
「ですが、貴方は私と赤の他人ではない」
「どういう意味?」
「詳しい事は言えません。ただ、私は貴方をマスターとして付き従う覚悟を決める事が出来ました」
「母さんのお陰、か…」
「それもありますが、ラーメンライスなる食べ物を教えて頂いた時から、悪い人ではなさそうでしたしね」
 あの時の熱い感情は、思い出せば自分でも驚く程だ。
「あーちょっと恥ずかしいな…」
「まぁ、以上の理由から、私も歩み寄る努力をしようと思った次第です」
 ここまで会話が弾んだのは初めてだ。
 昨日はどうなる事かと思ったけど、単に警戒されてただけだったのか。
 互いの距離が縮まる事も出来たし、母さんには感謝しないとな。
「こんな風に会話出来るようになったし、俺はとっても嬉しいよ」
 微笑みながら、リュックに図鑑を入れた。


 ****


 時は少し戻り、昨日の話になる。
 ラーメンライスの昼食を取り、自室に戻ったマスターを横目に私はリビングに佇んでいた。
「レクラットちゃん、アキラについていかなくていいの?」
 マスターの名前はアキラと言うらしい。
 そういえば自己紹介を私自身が遮った覚えがある。
「いえ、私も食器の後片付けをしますので」
 マスター、と呼んではいるが、まだ信頼するに及ばない。
「別に良いのに」
「いえ、します」


 じゃぶじゃぶと食器を洗うマスターのお母様。
 水を出しっぱなしにしない辺りに、主婦の知恵がある。
「レクラットちゃん」
 洗いながら私の名前を呼んできた。
「…はい?」
「アキラの事、まだ信じてはいないでしょ」
「……」
 見透かされている。
 頑なに食器の後片付けを手伝おうとした事などからも察しがついたのだろう。
 私は無言で肯定する事にした。
「その気持ちは分かるわ」
 私は無言を通して次の言葉を待つ。
「あの子は父さんに似て、真っ直ぐで、悪い人じゃないわ」
 そう、ですか。
 その言葉すら紡げずに、私は洗われゆく食器を眺め続けていた。


 ****


 そして時は再度戻って、現在。
「よし、レクラット」
 昨日よりもマスターらしくなったマスターが私の名を呼ぶ。
「…行こうか」
 そう、旅に出るのは今日だった。
 パルフェを連れた彼は昨日の内に旅に出たらしい。
「ええ。マスター」
 このマイペースを保つ所も、本当に彼らしい。
 …本当に。


 ****


「よし、レクラット」
 緊張の一瞬だ。俺はそのケジメをつけるべく、彼女に声を掛ける。
「…行こうか」
 俺は彼女の言葉を待った。返答が俺の背中を押してくれる。そう信じて。
「ええ。マスター」
 しっかりとした言葉。良い返事だ。
 俺の背中は、かくして力強く押されたのだ。

「本当に、いくのね」
「うん、母さん。大丈夫だって」
「そうじゃないわ。貴方レクラットちゃんを悲しませないか心配で」
「ど、どういう意味だよ」
「トレーナーとしての力量があまりに貧弱で、レクラットちゃんを食べさせてゆけるか、とか色々ともう…」
 はあ、溜息をつく母さんに、俺はちょっと涙目になりながらも言い返した。
「だ、大丈夫だよ!レクラットと俺が組めばそこらのトレーナーくらい…」
「倒せる保証が?」
「ありませんが、頑張ります…」
 勢いの言葉も、母さんに掛かれば勢いそのものを消される。
 とにかく大丈夫なんだと自分に言い聞かせながら、俺は母さんに告げる。
「兎に角。――…いってきます…っ」
「……」
 間を少し置いてから、
「いってらっしゃい。アキラ」
 玄関のドアを、ゆっくりと開けた。
 ――良い天気だ。


                        ――第02話 終わり


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【あとがき】

 執筆が遅い&話が進んでない。
 無駄に改行もするし、文章も変な箇所が多過ぎるし、自分でもどうしようもないですぜヒャホーイ!
 構想は大体の部分しか練ってませんので、これから先の展開も自分自身掴めません><

 今回は伏線めいたものもありますし、ちょっとはストーリーが動き出せれば、みたいな。
 原作準拠型のストーリー+俺設定、という中でこの進み具合は異常ですか?異常ですね。
 何としても完結させたいところです、が…w

 本当に今回も読んで頂き有難う御座いましたっ!
 次回も読んで頂けたら幸いです!

                     作者:てんくるり

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最終更新:2008年04月11日 21:42
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