1スレ>>692


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―――ズキッ

頭が痛む。俺は…………
意識ははっきりしてるのに目が開かない。薄い瞼がひどく重い。


―――タ

耳もだいぶ遠くなってるな、その声は……誰だ?
声の主すら思い出せない。何もない暗闇に俺だけが在る。


マス―――

あぁ、少しだが聞こえるようになってきた。
意識の復帰と共に血が身体を巡るのが分かる。


「マスターッ!」

「あぁ…………ウインディか」

「ウインディか。じゃないですよ!大丈夫ですか!?」


ずいぶん心配をかけたみたいだ。
とりあえず状況の整理を………

「ウインディ、悪いんだが今起きたことを正確に伝えてくれ」

「え、マスター?なにをいって」

「今起きたことを。正確に。伝えてくれ」

「あ、はい。足元からイワークに襲われたんです。
追い払ったあと、地盤が緩かったせいかそのまま足場が崩れて――」

「なっ……。他の連中は!?大丈夫なのか!」

「みんなはマスターがすぐにボールに戻してくれたので……」

「ウインディは?ボールから出てるってことは」

「マスターが庇ってくれたんじゃないですか。だからかすり傷ですんでます。
あとサンドパンさんも助けようとしたんですが頭に岩が落ちてきて」

「さ、サンドパン……は?」

「大丈夫ですよ。もともと地中を縄張りにしてたから慣れてる。と言ってました。
事実無傷でしたよ。僕も穴蔵で生活したらマスターを助けれるぐらい……」

「そのサンドパンがいないみたいなんだが」

「今出口を探しにいくって穴をほって」

「そう……か、ありがとな。ウインディも戻ってくれ」

「え、僕はマスターのおそばに」

「気持ちだけ受け取っとくよ。状況の整理がしたいから一人にさせてくれ」


返答を待たずボールに戻す。
普段は従順なんだがどうもこういうときに意地をはるな……誰に似たのやら。


「…………情けない」

状況の整理なんてするまでもない。ウインディを戻すための言い訳だ。
助けようとしてちゃんと助けれなかった自分が惨めだったから。
そんな俺を慕うあいつの目がほんの少し今の俺には痛かったから。
こういうときは一人のほうが些か楽だ。

「さて……どうやって脱出するか」


言いかけたところで足元が揺れた。反射的に身構える。

  ヒョコッ
出てきたのは黄土色の棘の塊

「と、棘?」

  くるり

「悪い、聞かなかったことにしてくれサンドパン」

よもや自分の仲間を「棘」とは。

「……マスター。これ」

「ん、草?」

「腕の傷に当てるといい……、ヒトに効くかはわからないけど。
頭部の打撲のほうは…………これ」


差し出されたのは濡れたタオル。
鞄の中の一枚を持ってったらしい。が……

「お前水なんかかぶったら」

「大丈夫、冷たいうちに」

「っと」


頭にヒンヤリとした感覚が降りてくる。
っと、腕の傷?

「おあ」


こりゃけっこうザックリいってるな。
先に水で洗うか…………サンドパンに感謝しないとな、
っと、片手だと思うようにいかん――

「…………」

パッとサンドパンがタオルを奪うと、傷口に水を絞った。
同時に顔に苦痛が浮かぶ。

「むちゃするな。片手でやれるから俺に」

「マスターは怪我してる、休んでていいから」

―――――

―――


とりあえず応急処置は完了。
少し休んだら脱出に向かうとサンドパンに伝えると

「じゃあ待ってて、出口に近い道を探して―」

「お前も休憩」

「私は平気だか―」

無理矢理こっちに引き寄せる、普段なら軽く踏みとどまるだろう。
だがやはり今日は簡単にこっちに倒れこんだ。

「マスター!私は平気だから出口を」

「無茶させるわけにはいかないんだよ。
俺のために苦手な水脈まで探してくれたんだろ?
一緒に休もう、な?

「…………」

何も言わなかったが身体を預けてくれた。
だいぶ疲弊してるな。俺のためにしてくれたんだから何も云えないけど。

「ありがとな」

「当然のことを……しただけだから」

「感謝の気持ちを伝えるのも当然のことだろ?」

「…………」



久々にサンドパンと会話した気がする。
こいつは本当にしゃべらない。有言実行どころか無言実行だ。
期待に応えてくれる分こちらも何も言えない。
頼りにしてるぶんそれが億劫だったときもあったな……

災い転じて福となす。って感じかね。
軽い遭難のせいで街につくのは深夜になりそうだがサンドパンと久々に話せたんだ。
これぐらい軽いもんだよな。


「……サンドパン?」


っふ、グッスリ寝てやがる。いつも顔に出そうとしないな。
俺に心配かけないように毅然として俺についてきてくれるパーティの縁の下。
だからって家主がチェックを怠っちゃだめだよな。それが崩れたらあとは一瞬だ。
起きるまでまってよう。それまで待ってたとこいつが知ったら怒るかな。

なら俺も寝ちまえばいい。そうすればこいつは自分を責めないだろう。
おやすみ。お前は今いい夢みてるのか?
俺はいい夢が見れそうだよ。
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