5スレ>>394


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 ハナダシティ。二つの山に挟まれた位置にあるその町は周囲の自然を活かした景観で有名である。
 中でもハナダの岬はデートスポットとして絶大な人気を誇っており、
 ハナダからはもちろん他の都市からも訪れるカップルが後を絶たない。
 自然との融和を果たしたからこそのこの結果なのだが、何事も万能というわけではない。
 自然との融和を果たしたからこその不便さというものもまた、確かに存在するのである。

―――

「ふぅ、ようやく見えてきたな……」
 眼下に広がる景色にホッと息をつく。
 ハナダシティ、周囲の自然を活かした景観で有名なその都市は、
 噂に違わぬ姿を俺に見せ付けていた。
「あれがハナダシティですか」
「きれいなとこー」
 すぐ傍にいるミルトとファルも眼下に広がる景色に感嘆の声を漏らしている。
「ここまで観光に来る人の気持ちがわかるような気がしますね」
「いろんな意味で、な」
 ミルトの言葉に答えながら俺は背後を振り仰ぐ。俺の視線を追ったミルトは小さく苦笑すると、
「……確かに、ここを抜けるのは少々骨でしたね」
 視線の先にはつい先ほど通り過ぎてきた場所―オツキミ山がそびえ立っていた。
「ピッピにプリン……。何とかデータは集まったけど、珍しい種類だけあって苦労したなぁ」
「洞窟内をずっとうろうろしてましたからね。もう足がクタクタですよ」
「さっさと町について休みたいところだな」
「それにしてもー、何で洞窟なんてとおらなきゃなんないのー?」
 俺の頭に張り付いているファルが情けない声を上げる。
 確かこいつは戦闘時以外は俺の頭の上にいたはずだが……
「データ集めのためだ、しょうがないだろ?
 まあ、他の道もそれほど整備されてるわけじゃないけどな」
「なんでー?」
「環境保全のためさ」
 オツキミ山。ハナダの景観を支える重要な山であるそこは、希少なもえもんがいることでも有名だ。
 山の生態系の保護、そして景観の保全のためにハナダ、ニビの両都市はかなり気をつかっている。
 森の手入れ、生物の個体数の調査、等々。
 その保全活動の一環として道路の敷設にも制限があるわけなのだが、これが少々問題だった。
 道路を作れば環境への影響は避けられない、しかし作らなければ交通の便が悪すぎる。
 この二つの問題の間でさんざん悩んだ挙句、
 環境を重視して小規模の道路を作るという案に落ち着いた。
 ニビ―ハナダ間の運送にコストがかかるものの、現状ではどうにか上手くいっている。
「……というわけだ、わかったか?」
「くー、すぴー」
「っておい、寝るなよ……」
 しかも人の頭の上で。
「疲れてるんですよ、きっと」
「しょうがないなぁ、まったく……」

 それからさらに歩き、無事にハナダに着いた俺達はセンターへと直行した。
 その日はこれ以上ないほどぐっすり眠れたことは言うまでもない。

―――

 翌朝。
 『今度は強盗事件』『またR団か』 新聞の見出しにはそんな文字が躍っていた。
 記事を読む限り最近ハナダではロケット団のものと思われる事件が相次いでおり、
 その被害は道路建設の反対勢力に集中しているとのことだった。
「道路建設……?」
「ああ、それですか。北のほうに新しい道路ができるらしいですよ」
 後ろから新聞を覗き込んできたミルトが俺のつぶやきに答えてくれる。
「北のほうってことはニビとハナダをつなぐのか?」
「はい。今回はかなり大規模な道路を作るらしくって、地元の人の反発もかなり強いらしいです」
「そこでこの事件か。こりゃ十中八九道路建設関連だろうな」
 おそらく反対勢力への圧力だろう。なんでロケット団が出てくるのかは知らないが。
 新聞によれば警察もその線で捜査を進めているが、まだこれといった成果は上がっていないらしい。
「さて、そろそろ行くか。ほらファル、いい加減に起きろ」
「うにゅ~、眠い~」
 新聞を畳み、まだ眠っているファルをたたき起こす。
 今日のデータ収集場所は町の北、25番道路。ある意味今ハナダで一番ホットな場所だ。
「何も起こらないといいけど……」
 一日の無事を願いつつ、俺はカバンへと手を伸ばした。


「うわぁ……」
「これは……」
「すごーい」
 目の前の光景に感嘆の声を漏らす。
 立ち込める熱気。
 『道路建設反対』『美しい自然を守れ』 などと書かれた旗や横断幕。
 その光景を形成しているハチマキ姿の人たちときたら、いったい何人いるのやら。
「すごい数ですね」
「集会か、デモ行進の準備ってところだろうな。いったいどこまで並んでるんだ?」
「んっとねー。すごく遠くまでー」
 頭の上からファルが報告してくる。
「遠くってどのくらいだ?」
「この道にそってずっとー。草むらのあたりまでー」
「ということは草むらのもえもんはかなり警戒しているでしょうね」
「ああ。最悪、その辺の草むらにはいないかもしれないな。
 そのときはもう少し遠出をするから、覚悟しておいてくれ」
「はーい」
「わかりました」

 そのわずか1時間後。
「なんだよ、これ……」
 草むらに見切りをつけて足を伸ばした森の中は、異様だった。
 しんと静まり返った森、遠くから感じる警戒の視線。
 歓迎されてない雰囲気ではあるが、これだけならば異様というほどの状況ではなかった。
「戦いの跡……でしょうか」
 ――木々や地面に残る、生々しい傷跡たちを見つけるまでは。
 野生のもえもん同士の喧嘩は別に珍しいことでもない。縄張り争いなどはしょっちゅうだ。
 しかしこの場所には喧嘩の跡としては決定的におかしい点がある。
「おんなじような傷ばっかりだよー」
 そう、もえもんの残した傷跡が1種類
 ――正確には、同じもえもんが残したと思われる傷跡しかないのだ。
 ということは、ここで戦ったもえもんのうち1体――おそらく勝ったほう――
 は痕跡を残すことなく戦いを終わらせたということになる。
「かなり強いもえもんがいるみたいだな。森の生き物が警戒してるのもそのせいか?」
「野生のもえもんでしょうか?」
「わからない。いずれにせよ注意しておいたほうが―」
「ご主人様ー!」
 その一言で思考に向けていた意識が一気に呼び戻された。
「早く来てー! こっちー!」
 必死に手招きするファルのもとへと駆けつける。
「どうした!」
「この子!」
 そういってファルが指差す先には、
「う、う…………」
 傷だらけで倒れているポッポの姿があった。

―――

 コンコン
 目の前の扉を軽くノックするが、中からは何の反応も返ってこない。
「ま、当然か」
 扉を開けると、まず目に入ってくるのはベッド。
 パーティションのカーテンは開けられており、視界をさえぎるものは何もない。
 ベッドの上にはもえもんが1人。
「あなたは、誰ですか?」
 そのもえもん――ポッポは、特におびえた様子もなく俺に話しかけてきた。
「思ったより元気そうだな。俺が怖くないのか?」
「現在の状況を考えれば、あなたが私に危害を加える可能性は低いと判断できますから。
 それより私の質問に答えてください」
「俺の名前はトウマ。真に当たると書いて当真だ。トレーナーだと認識してくれていい」
 思ったより冷静な彼女に軽く驚きながらも、とりあえず自己紹介をする。
「私はどうしてここにいるのですか?」
「森の中で倒れてる君を見つけて、ここまで運んできた」
「ならば、私はあなたに捕まったということですね」
「いや、俺にその意思はない。怪我さえ治ればまた野生にかえしてあげるよ」
「そうですか。感謝します」
 そう言うと彼女は少しだけ肩の力を抜いた。
 なんだかんだいっても、やはり警戒していたらしい。
「さて、今度は俺が質問してもいいかな?」
「どうぞ」
「俺達が君を見つけたとき、あの場所で何があったんだ?」
 彼女の表情が変わる。
 聡明そうな顔に浮かんできたのは、怒りと悔しさを混ぜたような表情。
 そして彼女はその表情と同じような声で語り始めた。
「突然、襲われたんです。もちろん抵抗はしましたけど、まったく歯が立ちませんでした」
「相手は?」
「黒ずくめの人間と、コラッタでした」
 黒ずくめの人間……おそらくロケット団だろう。
「他にもこういったことは起きていたのか?」
「いくつかそういう話を聞いたことがあります。
 そのため警戒してはいたのですが、それでも先手を許してしまいました。
 ……我ながら、情けないです」
「そっか……災難だったな」
「…………」
「……それじゃ俺はそろそろ行くよ。話しを聞かせてくれて、ありがとう」
「いえ……」
 彼女との会話を打ち切り、俺は病室を後にする。
 最後に見た彼女の表情はまだ先ほどのままで、月並みなことしかいえない自分が情けなくなった。

―――

「あっ、出てきたー」
「……どうでした?」
「とりあえずは元気そうだったよ。状況の理解も早い。冷静すぎて、俺が驚いたくらいだ」
 病室の外で待っていたミルトとファルに、彼女の様子を話す。
 ものすごく心配そうな顔をしていた2人は俺の話を聞くと、そろって胸をなでおろした。
「……もう一つのほうは?」
「そっちも聞き出せた。どうやら人間の、しかもロケット団の仕業らしい」
「……考えうる限りで最悪の状況ですね。これからどうするつもりですか?」
「とりあえずは警察に連絡だ。あっちも忙しそうだからどこまで対応してくれるかはわからないがな」
「私たちはー?」
「それなんだけどさ、俺達でもう一度あの森へいかないか?」
「えっ」
「それは……」
 俺の提案に2人が戸惑いの声を上げる。
 あの森にはロケット団がうろうろしている可能性がある以上、その反応は当然だ。
 誰だってわざわざ危険地帯に入ろうとは思わないだろう。
 でも……
「2人の言いたいこともわかる。俺だって2人を危険に晒したくはない。
 でも、俺はあの子と関わってしまった。あの子の現状を知ってしまった。
 こんなこと言うのはわがままだってわかってるけど、
 俺はあの子が置かれている状況をほうっておきたくないんだ。だから頼む、協力してくれないか?」
 そこまで一気に言うと、2人の顔をじっと見る。
 2人はお互いの顔を見ると一度うなずきあい、
「いいよー。私もあの子のことはほうっておけないしー」
「わかりました、協力します。マスターのそういった行動は今に始まったことではありませんしね」
 俺の提案を快諾してくれた。

 ちなみにこのときの俺の話し声は相当大きかったらしく、
 すっ飛んできたジョーイさんにこっぴどく叱られる羽目になった。

―――

「思ったよりありますね」
「ああ。どうやらかなり暴れてるらしいな」
 ポッポから話を聞いた翌日。再び訪れた森にはたくさんの戦いの跡があった。
 その数、すでに10。森に入ってからの時間を考えれば多すぎるほどだ。
「でもー、悪者のほうはぜんぜん見当たらないねー」
「広い森だからな。簡単に見つかるとは思ってないさ」
「でも、痕跡すらほとんどないというのは厄介ですね」
「その辺りは流石というしかないな。もっと人手が欲しいところだけど……」
「警察の人も忙しそうだったよねー」
 ぼやきながらも慎重に足を進める。
 一連の事件で警察も手一杯らしく、山狩りはとてもやってもらえそうになかった。
 いまやハナダのあちこちでロケット団の目撃証言が出ている以上仕方のないことではあるが、
 警察に動いてもらえるような痕跡を探すのに人手がいるというのも皮肉な話だ。
「マスター、あっちにまた……」
「わかった。ファルは周辺の警戒を頼む」
「はーい」
 ファルが少し高度を上げたのを確認し、視線を落とす。
 ざっと見た限り、今までの戦場跡と大差ない。
 一種類のもえもんによるものと思われる傷が多数。
 しかし今までの戦場跡とは違い、その傷はまだ新しかった。
「傷が新しいな。まだ近くにいるかもしれない。ファル、十分注意――」
 してくれ、と続けることはできなかった。代わりに俺の口から出てきたのは、
「――よけろっ!」
「え? きゃっ」
 俺の言葉と同時、木の上――ファルの死角にいた影がファルへと襲い掛かった。
 樹上の襲撃者の存在にまったく気付いていなかったファルは直撃をうけ、地面へと叩きつけられる。
「っ! このぉっ!」
 ミルトがすばやく間合いをつめ、着地直後の影に向かって蹴りを放つ。
 相手は着地直後で体制が崩れている。――よし、当たる。
「え!?」
 しかし影は崩れたままの体制から大きくバックステップ。
 ミルトの蹴りをかわすと今度こそ体制を整えた。
「ファルっ!」
 相手が引いたのを見て、俺はファルの元へと駆け寄る。
「きゅ~~~」
 見たところ脳震盪を起こしているようだ。
 命に関わる傷ではなさそうだが、戦闘に参加するのは無理だろう。
 ファルをボールへと戻し、相手をにらみつける。
 長い尻尾とヒゲ、そして特徴的な前歯――ラッタだ。
「ポッポの情報と違いますね。進化したのでしょうか」
「わからない。でも奴がそうなら、近くにロケット団がいるはずだ」
「なんだ、もうばれてるのか」
「っ!」
 背後から響いた声に反射的に横に飛ぶ。
 一瞬前まで俺のいた場所を何かがよぎり、地面を少しへこませて止まった。
「おや、かわされたか」
 振り向いた先には警棒を手にした黒ずくめの男が立っていた。
 胸に記されているRの文字――間違いない、ロケット団だ。
 先ほどの台詞からしてこいつがこの森で暴れている犯人で間違いないだろう。
「なにやら森をうろちょろしている奴がいると思ったら、こんなガキとはねぇ。
 だが俺達の存在を知られちまった以上、ただでは帰せねぇなぁ」
 その台詞と態度には余裕が満ちている。状況が自分にとって有利であると確信しているのだろう。
 確かに現状は奴に有利に見える。
 俺は丸腰。挟撃されている現在、ミルトは俺を守るために行動を制限される。
 ロケット団員が攻撃してくることを考えれば実質1対2、もしくはそれより悪い状況だろう。
 最低でも挟撃という状況だけは何とかしないと……
「ミルト、ラッタのほうは任せる。油断するなよ」
「……はい。マスターこそお気をつけて」
 流石はミルト、一言で俺の意図を察してくれる。
 肩越しにうなずき合うと、俺達は同時に駆け出した。
 挟撃から、1対1へと持ち込むために。

―――

 シュッ シュッ
 迫ってくる警棒を紙一重で避ける。
 どうやら中心に鉄かなにかを入れて強化しているようで、一撃が妙に重い。
 俺が回避するたびに周囲で枝が折れ、地面がへこんでいく。
 そんなもので殴られればたまったものではない。
 ブンッ
 何度目かの大振り。タイミングを合わせて後ろに大きく飛び退き、距離をとる。
「勢い込んで向かってきた割には逃げ回るだけか? がっかりだぜ」
(……言ってろ)
 余裕しゃくしゃくで声をかけてくるロケット団員にむかって内心で言い返す。
 1対1に持ち込んだことで、ミルトの不利はなくなった。
 あいつなら必ずラッタを倒してこっちに来てくれる。
 俺はその間逃げ続けていればいいのだが、
「やっぱ女の子に頼りきりってのもよくないよなぁ……」
 つぶやき、構えをとる。
 俺の様子の変化を感じたのか、ロケット団員が楽しげに警棒を構えなおす。
「お? 少しは楽しませてくれるのかい?」
 言葉と共に詰められる間合い、始まる連撃。
 相変わらず一撃一撃が重いが攻撃自体は大振りだ。
 俺を「狩る」ことを楽しんでいるのだろうが……今はそれが命取りだ。
「これでどうかなっ!」
 言葉と共に放たれる上段からの大振り。今までなら回避していた一撃だが、今回は違う。
 一歩踏み込み、振り下ろされてくる腕をつかむ。
 二歩目で体を相手の懐へ。つかんだ腕を巻き込むようにしながら体を半回転させていく。
「せいっ!」
 三歩目を踏むと同時につかんだ腕を思い切り引っ張り、
 背中に乗った重さを跳ね飛ばすように膝のばねを開放する。
 
 直後、大きな振動が森に響いた。

―――

「これでよしっと……」
 投げ飛ばしたロケット団員の様子を確認する。
 思いっきり叩きつけてしまったが落下点はやわらかい土だ、死にはしないだろう。
 背中を強打して苦悶の表情を浮かべるロケット団を横目に
 ミルトの方を窺うと、ちょうどあちらも決着がついたようだ。
 俺の姿を認めると安堵したような表情を浮かべ、
「マスター、危ない!」
 ――直後、その表情が凍りついた。
「ぐっ!」
 俺がその意味を理解するより早く、わき腹に激痛が走る。
 首だけで振り返ると先ほど投げ飛ばしたロケット団員が這い蹲りながらもボールを構えていた。
 そしてその傍に舞い戻る影が1つ。コラッタだ。
「くそ、まだいたのか……」
 自分の迂闊さを呪う。ポッポから聞いていた情報と食い違っている時点で
 2体目の存在を考慮しておくべきだった。それでなくても手持ちが1体とは限らないというのに。
 コラッタが再度接近してくる。
 回避や防御をする余裕はなく、ミルトも遠すぎて間に合わない。
 狙い澄ました攻撃が俺の首に届く直前、
「ぎゃっ!」
 吹き飛んだのはコラッタのほうだった。
「ご無事ですか?」
「え……?」
 俺の前に舞い降りる影。それはまさしく昨日助けたポッポだった。
 彼女は俺のほうを一度見ると、コラッタのほうへと突撃していく。
 そして始まる激しい攻防。
 本来の実力ならばコラッタのほうに分があっただろう。
 しかし先ほどの一撃がいいところに入っていたのかコラッタの動きは精彩を欠いており、
 ポッポの動きを捉えきれていない。
 すぐに駆けつけたミルトが手を出すまでもなく、勝敗は決していた。

―――

「いてて……」
「マスター、大丈夫ですか?」
 現場を警察に任せた帰り道。相変わらず痛むわき腹に思わず表情がゆがむ。
 骨折はしていないようだが、一応きちんと診てもらうべきかもしれない。
「もえもんの一撃を受けてその程度なのですから、むしろ僥倖というべきでしょう」
「そうかもしれないな」
「それにしてもー、何であなたはあの場所にいたのー?」
 まだ万全ではないのか、ファルが少しふらふらと飛びながら尋ねる。
「声が聞こえたからです」
「声って俺たちの?」
「あれだけ大きな声で会話していたのです。
 私に聞こえていたとしてもなんら不自然ではないでしょう?」
「それで着いてきてくださったのですか?」
「私を助けてくださったのはあなた方ですからね。
 恩人を危険に晒したとあっては寝覚めが悪いことこの上ありません」
 そういうポッポの表情はどことなく恥ずかしそうだった。
「それで、君はこれからどうする? 森に帰るのか?」
「はじめはそのつもりだったのですが、いささか事情が変わってきました」
「事情?」
「はい。端的に言えばあなた方に興味が沸きました。よろしければご一緒したいのですが」
「そっか。……どうする?」
「私は彼女を連れて行くほうに賛成です」
「私もー」
 意見を求めた先、あまりにも予想通りな反応に頬が緩む。
「もちろん俺も賛成だ。命の恩人だしな」
「感謝します」
「よし、決定。これからよろしくな」

 こうして、ハナダシティ到着早々に巻き込まれたこの事件は新たな仲間の参加と共に幕を下ろした。
 
 後日知ったことだが今回の事件で逮捕されたロケット団員を取り調べた結果、一連の事件への関与
 およびその裏にあった市議会議員との取引についての情報が得られたとのことだった。
 なんでも道路を作るにあたって邪魔になった反対派と野生のもえもんを排除するという依頼だった
 らしく、そのことで今議会はもめにもめている。
 道路建設は一時凍結。当分の間再開はされないだろう。
 次にハナダに行くときもまた、きれいな景色と厳しい道のりが楽しめそうだ。
ツールボックス

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